講演情報
[28-O-R007-02]緊急ショートステイ受け入れにおける不安と失敗
埼玉県 ○横山 直隆, 菅原 博征 (介護老人保健施設 鶴ヶ島ケアホーム)
【背景と目的】
近年、地域完結型の医療介護の推進から介護老人保健施設による緊急ショートステイ(以下緊急ショート)の役割が注目されている。当施設ではここ数年、通所利用者や地域からの要請で緊急ショートの依頼が増えており、十分な体制が整わないままの受け入れに現場の職員は不安や戸惑いを抱きながら対応をしている。本調査では実際に緊急ショートを受け入れた職員の声を集め、受け入れの現状と課題、今後の対応について考察する。
【方法と対象】
令和3年から令和7年6月までの緊急ショートを対象とし、職員にはグーグルフォームを活用しアンケートを実施した。アンケート対象は入所職員38名、相談員5名とし合計43名から回答を得た。
アンケートは3問
(1) 緊急ショートを受け入れる時の気持ちをお聞かせください(回答を1つ選択)
(2) 緊急ショートを受け入れる際に不安や苦労をしたことはなんですか?(複数回答可 自由記述)
(3) 受け入れた後失敗したことはありますか?(複数回答可 自由記述)
【結果】
期間中の緊急ショートの受け入れは総数32件で、そのうち18件 56%が当施設通所利用中であった。
令和3年 5件 通所利用の方4名
令和4年 4件 同上1名
令和5年 13件 同上8名
令和6年 7件 同上2名
令和7年 3件 同上3名
緊急ショートの利用理由
主介護者の入院・不在 16件 50% 、本人の体動困難 7件 22%
認知症による在宅困難 5件 16% 、虐待による一時的避難 2件 6%
冠婚葬祭による介護者不在 1件 3% 、精神不安定による家庭不和 1件 3%
(1) 緊急ショートを受け入れる時の気持ちをお聞かせください(回答を1つ選択)
・「仕事だから否応もない」(19件 37%)
・「家族のために話が来たら協力したい」(18件 35%)
・「緊急受け入れはできればしたくない」(10件 20%)
・「その他」(4件 8%)
(2) 緊急ショートを受け入れる際に不安や苦労をしたことはなんですか?(複数回答可 自由記述)
・「利用者の生活状況への不安」(34件 30%)
食事摂取状況や嚥下状態が不明で誤嚥が心配
排泄方法が分からず、トイレ誘導かオムツ対応か迷った
・「精神ストレス」(22件 19%)
突然の対応により通常業務に支障が出る
準備不足で適切なケアができない罪悪感
・「夜間対応への不安」(27件 24%)
夜勤者2名体制で対応しきれない
初対面で状態も分からない利用者を限られた情報でケアする恐怖感
・「介護現場での人手不足による不安」(24件 21%)
日中は会議やリハビリ業務と重なり人員のやりくりが困難
・「その他」(7件 6%)
自由記述なし
(3) 受け入れた後失敗したことはありますか?(複数回答可 自由記述)
・「適切な介助ができなかった」(25件 40%)
立位保持できない方を歩行誘導して転倒リスクを招いた
入浴を進めたが更衣動作が困難だった
・「適切な言葉選びができなかった」(14件 22%)
自由記述なし
・「利用者の名前を間違えた」(16件 25%)
名前の読み間違いで誤って別人のケア計画を使用
食事制限のある方に通常食を提供しかけた
・「その他」(8件 13%)
薬の種類や服用時間が書かれておらず投薬が遅れた
キーパーソンが不明で家族連絡ができなかった
【考察】
アンケート1.2の結果から、受け入れる際の気持ちは「仕事だから否応もない」37%、「家族の為に協力したい」が35%で合わせると72%となり受け入れに対して前向きな意見が多かった。また、不安な面については「利用者の生活状況への不安」が34件で30%となっており「精神ストレス」は22件で19%であった。この二つ設問では「情報がない為対応がわからなかった」との記述が多くみられた。情報不足のまま受け入れが行われる事によって不安、ストレスとなっている事が推測され、また「夜間対応への不安」に対する返答が24%で、緊急時・夜間の人員不足への不安があるところに加え「介護現場での人手不足による不安」が21%となっており、普段より人員不足を感じている現場で更に緊急ショートが重なると時間や手間が多くかかるためスタッフは負担を強く感じていることも推測される。アンケート3では、実際のインシデント・アクシデントを当事者がどう感じているか、印象に残っているかを問われている。実際に、転倒リスク・服薬管理・名前間違え・食形態不備などが起きており、その原因について事前情報が不足している為と感じていることが分かった。以上により、実際に介護している現場のスタッフは受け入れに対して前向きに考えているが、事前情報がないことが不安や戸惑いの一番の原因と感じていると思われる。
【今後の取り組み】
緊急ショートでは時間に限りがあるため情報が不足することは免れない。極力緊急にならないようにすべきである。今回の調査では、「家族の入院予定だったが相談が遅れた」「体調悪化を数日前から見ていた」など予測可能なケースもあった。早期に相談があれば計画的な受け入れに切り替えられた可能性がある。今後はリスクの高い利用者を抽出しケアマネとの連携により緊急の受け入れを減らす体制整備を図っていきたい。また、制限時間内にできる限りスムースに情報が共有できるよう事前に情報の優先順位を決め、緊急時の情報の標準化をすべきと考える。近年ではAIの発達によりある程度限られた情報からもリスク分析などが可能となることも推測されるのでICTの活用も必要と考える。夜間や休日でも必要情報を確認できる体制を整備することも望ましい。職員間の連携強化と意識づけも重要である。毎日の申し送りや定期カンファレンスを活用して「地域支援」としての意味を再認識し、緊急ショートを「やりがい」に変える環境にできたらよいと考える。
【最後に】
実際に緊急ショートを利用した家族から「助かりました」「ありがたかった」と言う感謝の声が多数寄せられたことが、職員にとって大きな励みとなっており、今後も安全で安心できる緊急ショートの受け入れシステムを構築したいと改めて感じた。
近年、地域完結型の医療介護の推進から介護老人保健施設による緊急ショートステイ(以下緊急ショート)の役割が注目されている。当施設ではここ数年、通所利用者や地域からの要請で緊急ショートの依頼が増えており、十分な体制が整わないままの受け入れに現場の職員は不安や戸惑いを抱きながら対応をしている。本調査では実際に緊急ショートを受け入れた職員の声を集め、受け入れの現状と課題、今後の対応について考察する。
【方法と対象】
令和3年から令和7年6月までの緊急ショートを対象とし、職員にはグーグルフォームを活用しアンケートを実施した。アンケート対象は入所職員38名、相談員5名とし合計43名から回答を得た。
アンケートは3問
(1) 緊急ショートを受け入れる時の気持ちをお聞かせください(回答を1つ選択)
(2) 緊急ショートを受け入れる際に不安や苦労をしたことはなんですか?(複数回答可 自由記述)
(3) 受け入れた後失敗したことはありますか?(複数回答可 自由記述)
【結果】
期間中の緊急ショートの受け入れは総数32件で、そのうち18件 56%が当施設通所利用中であった。
令和3年 5件 通所利用の方4名
令和4年 4件 同上1名
令和5年 13件 同上8名
令和6年 7件 同上2名
令和7年 3件 同上3名
緊急ショートの利用理由
主介護者の入院・不在 16件 50% 、本人の体動困難 7件 22%
認知症による在宅困難 5件 16% 、虐待による一時的避難 2件 6%
冠婚葬祭による介護者不在 1件 3% 、精神不安定による家庭不和 1件 3%
(1) 緊急ショートを受け入れる時の気持ちをお聞かせください(回答を1つ選択)
・「仕事だから否応もない」(19件 37%)
・「家族のために話が来たら協力したい」(18件 35%)
・「緊急受け入れはできればしたくない」(10件 20%)
・「その他」(4件 8%)
(2) 緊急ショートを受け入れる際に不安や苦労をしたことはなんですか?(複数回答可 自由記述)
・「利用者の生活状況への不安」(34件 30%)
食事摂取状況や嚥下状態が不明で誤嚥が心配
排泄方法が分からず、トイレ誘導かオムツ対応か迷った
・「精神ストレス」(22件 19%)
突然の対応により通常業務に支障が出る
準備不足で適切なケアができない罪悪感
・「夜間対応への不安」(27件 24%)
夜勤者2名体制で対応しきれない
初対面で状態も分からない利用者を限られた情報でケアする恐怖感
・「介護現場での人手不足による不安」(24件 21%)
日中は会議やリハビリ業務と重なり人員のやりくりが困難
・「その他」(7件 6%)
自由記述なし
(3) 受け入れた後失敗したことはありますか?(複数回答可 自由記述)
・「適切な介助ができなかった」(25件 40%)
立位保持できない方を歩行誘導して転倒リスクを招いた
入浴を進めたが更衣動作が困難だった
・「適切な言葉選びができなかった」(14件 22%)
自由記述なし
・「利用者の名前を間違えた」(16件 25%)
名前の読み間違いで誤って別人のケア計画を使用
食事制限のある方に通常食を提供しかけた
・「その他」(8件 13%)
薬の種類や服用時間が書かれておらず投薬が遅れた
キーパーソンが不明で家族連絡ができなかった
【考察】
アンケート1.2の結果から、受け入れる際の気持ちは「仕事だから否応もない」37%、「家族の為に協力したい」が35%で合わせると72%となり受け入れに対して前向きな意見が多かった。また、不安な面については「利用者の生活状況への不安」が34件で30%となっており「精神ストレス」は22件で19%であった。この二つ設問では「情報がない為対応がわからなかった」との記述が多くみられた。情報不足のまま受け入れが行われる事によって不安、ストレスとなっている事が推測され、また「夜間対応への不安」に対する返答が24%で、緊急時・夜間の人員不足への不安があるところに加え「介護現場での人手不足による不安」が21%となっており、普段より人員不足を感じている現場で更に緊急ショートが重なると時間や手間が多くかかるためスタッフは負担を強く感じていることも推測される。アンケート3では、実際のインシデント・アクシデントを当事者がどう感じているか、印象に残っているかを問われている。実際に、転倒リスク・服薬管理・名前間違え・食形態不備などが起きており、その原因について事前情報が不足している為と感じていることが分かった。以上により、実際に介護している現場のスタッフは受け入れに対して前向きに考えているが、事前情報がないことが不安や戸惑いの一番の原因と感じていると思われる。
【今後の取り組み】
緊急ショートでは時間に限りがあるため情報が不足することは免れない。極力緊急にならないようにすべきである。今回の調査では、「家族の入院予定だったが相談が遅れた」「体調悪化を数日前から見ていた」など予測可能なケースもあった。早期に相談があれば計画的な受け入れに切り替えられた可能性がある。今後はリスクの高い利用者を抽出しケアマネとの連携により緊急の受け入れを減らす体制整備を図っていきたい。また、制限時間内にできる限りスムースに情報が共有できるよう事前に情報の優先順位を決め、緊急時の情報の標準化をすべきと考える。近年ではAIの発達によりある程度限られた情報からもリスク分析などが可能となることも推測されるのでICTの活用も必要と考える。夜間や休日でも必要情報を確認できる体制を整備することも望ましい。職員間の連携強化と意識づけも重要である。毎日の申し送りや定期カンファレンスを活用して「地域支援」としての意味を再認識し、緊急ショートを「やりがい」に変える環境にできたらよいと考える。
【最後に】
実際に緊急ショートを利用した家族から「助かりました」「ありがたかった」と言う感謝の声が多数寄せられたことが、職員にとって大きな励みとなっており、今後も安全で安心できる緊急ショートの受け入れシステムを構築したいと改めて感じた。
