講演情報

[28-O-T002-07]センサー内蔵型ベッド導入!~新機能と見えた課題~センサー内蔵型ベッドの利点・問題点とその解決策

愛知県 小森 壮登 (日進老人保健施設)
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【はじめに】 
当施設では2024年4月に入所100床のベッドを全て、パラマウントベッド株式会社のエスパシオシリーズへと交換した。「離床CATCH」と呼ばれるセンサーを内蔵しており、利用者の荷重の移動・変化をベッド全体で検知し、利用者の様々な動作(起き上がり・端座位・離床等)を知らせてくれる。従来のマット式に比べてより正確な検知判定が可能となっているそうだ。利用者のADLに合わせて起き上がり時通知・端座位時通知等、細かな設定ができ、まさに見守り支援に特化したベッドと言える。また、内蔵型である為、準備する手間も省け、ベッドに接続された親機のボタン操作で簡単に設定・使用が可能となり、時短にもつながる。既に多くのメリットがある中で、一番の目玉はセンサーのON/OFFだけでなく、「一時停止」という新機能が搭載されていることである。この機能は、3分間センサーが停止し、3分後には自動でONに戻るという仕様になっている。これにより、センサー入れ忘れによる転落事故を防ぐことができる。このセンサー内蔵型ベッドを使用することにより「業務削減」と「事故削減」の両方を実現できると我々は大きな期待を寄せていた。
【目的】
前述した「一時停止」の機能を活用することで、センサー入れ忘れによる利用者の転倒転落事故を削減できると考えた。『居室』×『転倒・転落』は介護業界では事故発生場所第一位×事故種別第一位の組み合わせである。今回のセンサー導入はこの一番大きい事故発生源にアプローチし、施設全体の転倒転落事故削減に期待する事ができる。センサー内蔵型ベッドを使用することで転倒転落数にどれほどの影響が出るのか、導入以前(マット式を使用)の2023年度のデータと導入直後の2024年度のデータを比較・分析し、報告する。
【方法】
・比較するデータ対象については、2023年度/2024年度のアクシデント報告書の中から「居室内でセンサー使用中の転倒転落事故」を抽出。各年度で件数を集計し、増減を比較する。※もちろん、2023年度と2024年度では、入所している利用者も違えば、入所している人数も違う。対応しているスタッフも違う為、一概に比較することは難しい事は承知している。
・データを集計している過程で、スタッフへのアンケートを実施。アンケート内容は「センサー内蔵型ベッドの良い点/悪い点や使用してみた感想」等。集計データにスタッフの意見を組み込み、結果の分析や今後の課題解決に役立てた。
【結果】 
「業務削減」と「事故削減」を掲げて始まったこの検証は、思いとは裏腹に転倒数の大幅増という結果となってしまった。特に導入後半年(2024年4~9月時点)では前年度比2倍(2023年度4~9月度5件→10件)となってしまい、早急に対策を講じる必要があった。
【考察】 
転倒数の大幅増の背景には、敏感すぎるセンサーによる「通知頻発」があった。ベッド柵を外したり、ベッドにもたれかかった手を放すだけで、「離床した」と判断され、通知が発生してしまう。これを以下「無駄鳴り」と呼称する。一時停止が解除される長時間の介助や一時停止の押し忘れによる無駄鳴りも通知頻発に拍車をかける。それに伴い、スタッフの疲弊・鳴り過ぎによる通知慣れが生じてしまったことで、「通知が鳴ったが、他のセンサー対応に追われて間に合わず、転倒していた」や「色々な通知が鳴り続けて、知らない間に転倒に関わる通知が埋もれてしまった」等、導入前年度には聞かなかったような原因での転倒が繰り返されてしまった。 
スタッフアンケートでも「以前より通知が多く、負担に感じている」「人員に対してそれを上回る通知が起こるときがある」「同時に通知が起こる事が多く、対応が後手に回る」等、頻発する無駄鳴りへの意見が集中した。
【対策】
「一時停止」機能に拘らず、状況に応じてセンサーOFFも使用していく。「一時停止」は前述したとおり、3分間しかセンサーを止めれず、シーツ交換・ベッド上での着替え等の場面では途中で再度センサーがONとなっていまい、無駄鳴りにつながっていた。
大前提として「一時停止」機能を忘れず使うために、一時停止使用を促すPOPをベッド周辺に配置。使用の周知徹底を行うと共に、OFFになっている事を示す立て札【現在センサーOFF】を準備。センサーをOFFにする際はこの立て札を立てる事を義務化した。これにより、仮にセンサーを戻し忘れても他のスタッフが気づける仕様になっている。このようにベッド周辺に工夫を凝らし、無駄鳴りを抑えつつ状況ごとに対応出来るよう環境を整えた。
【まとめ】 
2023年度/2024年度のセンサー使用者の転倒転落数の比較グラフは添付資料をご覧頂きたい。結果は収束したものの、新しい技術を取り入れたベッド特有の問題点や課題に悩まされた1年間であった。悪いところばかり取り上げてしまったが、もちろんセンサー内蔵型ベッドにして設定のしやすさや利用者の状況・状態に合わせた設定ができる等、助かる面も多々あった。未だに手探りではあるが、他施設の実例や現場の声等も参考にし、このセンサー内蔵型ベッドの良さを最大限享受できるよう対策を続けていきたい。また、他施設で同じベッドを使用しているところがありましたら、どのようなことに取り組んでいるのか教えて頂けると幸いです。