講演情報

[28-P-A001-03]リエイブルメントに基づく自立支援の実践~要介護度、ADL・QOLの改善~

山口県 嶋田 直美 (介護老人保健施設しまた川苑)
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【はじめに】
 当苑では、国際医療福祉大学大学院で開発された「自立支援介護学」の理念に基づき、科学的介護を実践している。このアプローチは、入所者様が尊厳を持って自立した生活を送ることを最優先に考え、個々人の持つ本来の能力を最大限に引き出すことを目的とするものである。特に「リエイブルメント」の視点を通してリハビリテーションを実践し、ADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)の改善が得られた症例について報告する。
【症例紹介】
 対象者は、要介護度4、75歳女性のA様。第4・5腰椎変性すべり症術後で、令和6年2月より当通所リハビリ週2回、訪問リハビリ週1回にて利用開始。利用開始時はBarthel Index(BI)が45点であり、移乗・トイレ動作・更衣は一部介助、入浴は全介助、平地歩行・階段昇降は実施不可であり、端座位保持も不安定な状態だった。
【介入方法】
 リハビリ専門職では、利用開始時は基本的動作の獲得を目標に筋力訓練や基本動作の反復練習、端座位・立位バランス練習、自主リハビリの提案、環境調整等を実施する。ADLの改善とともに本人の希望もIADLへ拡大し、立位バランス練習での運動負荷量の増大、歩行練習や階段昇降等を進め、活動量の増大や活動範囲の拡大化を図った。介護スタッフは、科学的介護の基本ケアである水分ケア、歩行ケアを提供し、本人の能力の引き出しを積極的に図った。
【結果】 
 現在のA様は要介護度2、BIは85点に改善している。移動は車椅子駆動自立、家事動作時は固定式歩行器使用。階段昇降は手すり使用にて見守り。入浴は自宅にて見守り~一部介助にて実施。毎日ご主人との外食もされており、QOLの改善も見られる。「来年の春にクルーズ船で旅行に行くからもっとしっかりと歩けるようになりたい」という具体的な目標を掲げ、リハビリテーションや様々な活動に意欲的に取り組まれている。
【考察】 
 A様のBIが45点から85点への大きな改善、要介護度4から2への改善は、当苑が実践する科学的介護、特にリエイブルメントの視点を取り入れたアプローチの有効性を示している。
 リエイブルメントとは、「再びできるようになる」ことを意味し、「介護の前のリハビリテーション」を原則とする考え方である。高齢者が自立した在宅生活を継続するために、能力の回復・改善・維持を図ることを目指している。このサービスは、利用者自身の「自分で何かをしたい」という意思に基づいて、生活課題の解決とQOL向上を目的としたアセスメントを多職種の協力のもとで行うことが特徴である。
 当苑ではリハビリテーション会議を開催し、本人・家族を中心にリハビリ専門職、介護支援専門員、他サービス事業所担当者等の多職種協働にて、現在の状況、今後の具体的目標や環境調整等について連携を図り、遂行している。「面談中心」の支援を通じて、A様自身のセルフマネジメント力を引き出した「手を後ろに回したケア」の考え方が実践できたと考える。この面談を通じて、A様の「できること」に焦点を当て、達成感を積み重ねることで、自信と意欲が向上し、日々の活動量が増加している。これはリエイブルメントが重視するウェルビーイングの追求にも繋がると考えられる。
 科学的介護では基本的ケアである水分ケアや歩行ケアを実施することで、体調を整え、活動性の向上が得られた。また、「エイジズム(年齢に基づく偏見や差別)」を超えて、高齢者一人ひとりの個性と可能性、尊厳を最大限に尊重するものとして、A様の尊厳を尊重し、「できる」と信じて能力を最大限に引き出せたと考えられる。
 今後の課題としては、リハビリテーション終了後の生活習慣や社会参加をどのようにサポートしていくかが重要と考える。リエイブルメントの理念やエイジズムの考え方など、介護を受ける側と提供する側の双方の意識改革の促進も必要である。特に、利用者が「介護されること」に慣れてしまうのではなく、「自立を取り戻す」ことへの意欲を持続できるよう、継続的な啓発と動機付けが重要である。また、地域社会で自立した生活を継続出来るよう、地域の生活支援コーディネーターやボランティア団体、既存の地域資源との連携を強化し、趣味活動や就労的活動を含む、多様な社会参加の場の提供や環境を整備することが大切と考える。
【おわりに】 
 本症例では、リエイブルメントが要介護高齢者の自立支援に有効であり、生活機能の改善と意欲向上に大きく貢献することを示した。今後も本人の意欲を最大限に引き出し、地域連携を深めることで、より多くの高齢者が「元の生活を取り戻し、自分らしく幸せな人生を送る」支援を推進していく。