講演情報

[28-P-A001-04]家族のニーズを把握し、多職種協働での取り組み

福岡県 福田 素之 (介護老人保健施設 博慈苑)
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「家族のニーズを把握し、多職種協働での取り組み」
抄録本文【はじめに】
介護老人保健施設は、介護保険法では「施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする」と明記されている。施設サービス計画立案までのプロセスとして、「利用者・家族のニーズを把握する」が第1段階だが、認知症専門棟の入所者は本人の意向を聴取できないケースも少なくない。結果、本人のニーズの把握が難しく、スタッフ本位のケア・リハビリになる傾向に危機感を抱き、今回の取り組みに至った。その中で見えた本症例の変化と、今後の課題について報告する。
【症例】
〔A氏〕82歳/男性/要介護3/病名:認知症、アルコール依存症/既往歴:外傷性クモ膜下出血、統合失調症/障害自立度B2/認知症生活自立度:3A/B.I:15点/HDS-R:検査協力得られず測定不可
【経過】
第1期:入所~心身機能低下に至った期間
・X年Y月:当苑入所。車椅子自走可能。移乗は見守り~軽介助レベル。注意・判断力低下により一人で移乗し転倒することが度々みられる。声掛けに立腹して機能訓練にも消極的反応を示す事が多い。
・X年Y+6月頃~:体調不良等で臥床時間が増加し身体機能低下。さらに転倒リスクが上昇。転倒防止目的で入浴時及び食事時のみ離床となり、臥床時間が増加。
第2期:多職種とのやりとりからニーズ把握の必要性を改めて感じ、ニーズの把握に努めた期間
・X+1年Y+3月:車椅子座位保持能力低下。リクライニング車椅子への変更を看護師からOTに打診。
→OTより、原則標準型車椅子対応で、入浴等の離床時間が長い場合は臨機応変にリクライニング車椅子使用と伝達。
→看護師より、「臨機応変」とすると判断基準が曖昧となり、「常時」リクライニング車椅子使用になると指摘。
→「リハビリ職員からの視点」「療養棟職員からの視点」の相違あり。
→再度、本氏の現状を踏まえた上で、家族の意向の再聴取とニーズの把握が必要と考える。
→ケアマネ・看護師・OT同席のもと、家族と面談実施。ニーズとして以下の3点を把握。
 a) リクライニング車椅子でも良いので、できるだけベッドから離れて生活してほしい。
 b) 食事はできるだけ自分で食べてほしい。食事の時くらいは標準型車椅子に座って自分で食べてほしい。
 c) 車椅子に座る時だけでもしっかりと立って移るなど、身体機能をできるだけ維持してほしい。
第3期:多職種でケア方法を検討・実施した期間
・X+1年Y+4月~:上記の家族のニーズをもとに、本氏の耐久性を考慮した活動プランを検討。午前中はリクライニング車椅子に離床して過ごし、食事は自力摂取。午後は夕食まで臥床して過ごし、夕食時は標準型車椅子での食事摂取とした。
・X+1年Y+5月~:活動プランの定着が図られ、本氏の座位耐久性も徐々に向上傾向を認めたため、昼食時のみ椅子に座り変えて摂取することとなった。
【取り組み後の変化点】
・精神状態が穏やかに経過している事が多く、発語量が増加。自身の要求を訴えられる頻度も増加傾向。
・リハビリ時の起立訓練への拒否は減少。身体機能訓練が可能となった。
・日によって斑はあるものの、移乗の際の協力動作がみられる頻度が増加。
・夕食時は標準型車椅子に離床して食事自力摂取し、滑落なく経過している。
【今後の課題】
 今回、家族のニーズを把握し、多職種協働で活動プランを実施したことで上記の変化を認め、ADLの維持につながる結果となった。今回は利用者本人の直接的な意向の聞き取りが困難であった為、家族の意向をもとにニーズを把握したが、「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」の意思決定支援の基本原則には、「本人への支援は、本人の意思の尊重、つまり自己決定の尊重に基づき行う。」「意思決定支援者は、認知症の人の身振り手振り、表情の変化も意思表示として読み取る努力を最大限に行うことが求められる」とされている。入所者に関わる全ての職種が意思決定支援者という自覚を持ち、本人の意向を汲み取ることができるよう関わること、各々の職種の視点で本人の意思の尊重が図られるよう、利用者本人にとってどのような支援が必要か等のカンファレンスを重ね、当苑の理念にもある「利用者本位のサービスを提供し、自立を支援する」ことを達成できるよう、取り組みの際の役割分担の明確化、仕組み・流れを標準化する必要があると考える。