講演情報

[28-P-AH02-02]センサーマット使用基準チェックリスト作成の試み

山形県 稲毛 恵子, 早坂 知子, 縄 美貴子 (介護老人保健施設ラ・フォーレ天童)
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目的:身体拘束をおこなう事例は年に1,2人程度と少なくなっているが、センサーマットは多く使用している。センサーマットは物理的に拘束するものではないが、心理的負担を与えているとの報告もある。また、従来センサーマットの使用は経験的におこなわれており、使用基準があればセンサーマット使用の評価に有用と推察される。今回、センサーマットについての職員の意識調査およびセンサーマット使用基準チェックリストの作成を目的とした。
倫理的配慮:対象者から、調査への協力は任意であり、無記名として個人の特定は行わないこと、調査に協力しないことにより不利益を被ることはないこと、得られたデータは研究目的のみに使用することなどについて同意を得た。利益相反なし。
方法
検討1センサーマットに対する職員の意識調査 対象および方法:当施設職員67人を対象にY字ベルト、センサーマットなど拘束手段の7項目にどのような弊害が考えられるかについて無記名、自由記述方式によるアンケート調査をおこなった。結果はテキストマイニング(KHCoder)による共起ネットワーク解析を用いた。
センサーマットについての結果:共起ネットワーク解析結果をに示す。共起ネットワーク解析ではどのような語がデータの中に多く布置され、グループを形成しているのか、グループ内の語を見るとデータの中にどのような話題があったのかなどを捉えることができる。語の出現数の多少は円の面積の大小で描出され、繋がりの程度は語同士の距離と線の太さで示される。センサーマットの回答は17人、24文、語数60個であった。センサーマットの回答者数が67人中17人と少なく、センサーマットは弊害についての意識が低いと推察された。しかし、回答にはストレス、精神的苦痛、行動制限、監視、意欲低下など、心理的負担を与えている文字が多かった。センサーマットは身体的弊害が少なく職員の意識も低いが、大きい心理的負担があり、使用基準の明確化が必要との結論を得た。
検討2センサーマット使用の後方視的検討 対象および方法:当施設入所者のうち、自立度の高い者および寝たきりの者を除いた46人について、センサーマット使用ありの22人(平均年齢89.4±6.8,平均介護度2.1±0.8、平均HDS-R得点16.5±7.3)と使用なしの24人(平均年齢91.4±6,平均介護度2.9±1.2、平均HDS-R得点5.6±5.3)の2群に分け、さらに過去1年間の転倒・転落の有無を調査した。両群のHDS-R得点に有意差(P<0.01)があった。転倒・転落の報告はヒヤリハット報告および聞き取り調査に基づいたが、対象者の観察期間が1年未満の場合もあり、転倒・転落がなかったことは確実性が低い。
次に既報の入院患者を対象として作成されたセンサーマットについてのチェックリストや転倒防止チェックリストを参考に18項目のチェックリストを作成した。チェックは「あり」「なし」の2件法とし、担当介護士が過去3か月間の状態を記入した。統計的解析は判別分析、二項ロジスティツク回帰分析などを用いた。
結果:チェックリストの解析結果から転倒・転落の有無を判別するのに役立つ8項目の質問項目が抽出できた。8項目のチェックリスト(2件法、クロンバックのα=0.74)(1)車椅子、杖、歩行器を正しく使える、できる・できない(2)衣服の着脱に介助が必要、必要でない・必要(3)居場所確認が必要、必要でない・必要(4)頻尿や尿・便失禁がある、ない・ある(5)BPSDがある、ない・ある(6)昼夜逆転している、ない・ある(7)眠剤または抗精神病薬を服用している、服用していない・服用している(8)下肢筋力の低下がある、ない・ある。8項目チェックリストによる転倒・転落の有無のカットオフ点をROC曲線で求めたところ転倒・転落ありは4点以上、なしは3点以下であった。以下、8項目をセンサーマット使用基準チェックリスト(以下、SMCLと略)とした。
検討3SMCLの前方視的検討 対象および方法:入所者のうち、センサーマット使用中でSMCL4点以上の25人につき、1か月に1回、SMCLを担当介護士が記入し、前方視的に3か月間に3点以下に低下した場合はセンサーマットの使用を中止することした。3か月間に転倒・転落があったのは10人であった。1人が2か月目に3点となりセンサーマットを撤去したが、その後、転倒・転落はない。なお、センサーマットを使用していない1人に転倒・転落があったのでSMCLをチェックしたところ2点であった。
考案及び結語 センサーマットは転倒・転落の予防対策、居場所の確認などを目的に使用しているが、職員の意識調査からは拘束としての意識は低い。しかし、心理的負担を与えているとの認識はあった。従来、センサーマット使用の判断は経験的になされてきた。今回、使用基準を検討しセンサーマット使用基準チェックリストを作成することとし、項目からなるSMCLを作成した。3か月間でSMCL得点が3点以下になりセンサーマットを撤去したのは1人あったが、その後転倒・転落はない。今後ともSMCLを継続して使用し、センサーマット使用基準を明確化する予定である。