講演情報
[28-P-AH02-03]AI見守りカメラ導入による有効性と今後の課題
福岡県 ○若林 恭平, 濱地 将大 (誠和会介護老人保健施設ひいらぎ)
背景
当施設は認知症専門棟19床、一般棟35床、合計54床の介護老人保健施設である。入所者の70%以上が転倒・転落アセスメントで危険度3であり、転倒・転落、夜間の徘徊、離設への迅速な対応が求められるが、人材不足により十分な見守りが難しい状況にある。ナースコール連動型のセンサーを設置しているがセンサーの感知が多く負担となっていた。こうした課題に対応するため、見守りカメラの導入が決まり、動体検知、AI画像解析機能を備えた見守りカメラを11台導入した。導入から1年たった今、その効果と課題を検証した。
目的
本研究目的は、見守りカメラ11台の導入によって利用者の安全確保、職員の負担軽減、及び業務効率化にどの程度寄与するのか評価する事である。また、運用上の問題点についても明らかにする。
方法
2024年3月から見守りカメラ11台(動体検知、AI画像解析、クラウド録画機能搭載)を導入し、カメラの設置可能場所は25床とした。カメラはリアルタイム映像確認、異常行動の自動検知、スマートフォンへの通知機能を備え、スタッフステーションのモニターで一元管理を可能とした。
評価方法
導入効果を以下の指標で評価した。(1)転倒・転落の事例件数(2)職員の労働負担(アンケート調査により、主観的負担感、機器の使いやすさ等)。
結果
(1)転倒・転落の事例件数
図は見守りセンサー導入前後で転倒・転落件数を比較したグラフである。青いグラフは導入前(R5年3月~R6年2月)の転倒件数であり、12月、1月は当施設で新型コロナウィルスのクラスターがあり、転倒件数が増加した。茶色グラフは導入後(R6年3月~R7年2月)であり4月に多いのはインフルエンザの流行が原因だった。導入前後で件数に有意差は見られなかった。
導入前後の1年間の件数比較を行ったが、クラスターの状況やその時の入所者層(転倒リスクの高い方の有無)も異なる為、有効性の検証には至らなかった。一方で、クラウド録画機能は転倒状況の確認ができ、再発防止のための具体的な対策立案に活用出来た。同一利用者の居室内転倒は再発していない。又、高齢者にとって感染症発生時の隔離は認知機能低下のきっかけとなり、職員側は対応に難渋する。導入以前はセンサー感知するたびに、訪室して対応しなければならなかったが、設置後はモニターで居室内の状況が確認できるため、不必要な訪室を減らせることが出来た。これは、職員の感染リスク軽減につながり有効であった。
(2)職員の労働負担
当施設では、介護、看護職員26名の内、外国人職員が10名在籍している。導入時に操作方法の説明会を行ったが外国人職員全員が操作できるまで繰り返し指導が必要であった。3か月後に使いやすさの確認、意見等のアンケート調査を行った。
意見内容は、「介助途中でもスマートフォンの確認をしなくてはならない」「使い方がまだ分からない」「スマートフォンとPHSの2台を持たないといけないから持ち歩くのが大変」といった意見が多く聞かれた。
意見を参考に指導を続け、1年後に同じアンケートを実施した(回収率100%)。「だいぶ慣れてきて使いやすくなった」「センサー感知でその都度居室まで行かなくてはならなかったがスマホで見守れるため負担の軽減につながった」「使い方が分かって便利に感じるようになった」「時々誤作動がある為、その度にスマートフォンを持って確認を行わないといけない」等の意見があった。最も多かった意見は「訪室頻度の減少」であった。ある1日の調査結果では利用者1名のセンサー感知11回の内、モニター確認のみで訪室不要であった回数が9回。つまり、訪室回数が81%削減した結果が出た。就寝中の訪室が減ったことは入所者の睡眠の質向上にもつながる。
職員の意見を聞きながら、感知項目やアラートの通知音を1回から複数回鳴るなどの変更を行い、実務に即した見守りセンサーを設定する事が出来た。
考察
当施設では、転倒・転落事例の削減を期待し導入に踏み込んだが、件数削減の結果には至らなかった。
しかし、これまで居室内での転倒に関して憶測でしか対策立案できなかったことが、録画機能の活用で居室内の行動が分析できるようになり、再発防止に有効だったと考える。今後は入所7日以内に行動データを分析する事で個別ケアの強化を図り、転倒対策が立てられるようにすることが求められる。
また、アンケート調査で全職員が負担軽減に繋がったと回答している。携帯しているスマートフォンで利用者の状況がリアルタイムに確認でき、不必要な訪室が減ることには身体的負担の軽減になった。特に、感染隔離中の非接触での見守りは有効であった。更に、センサー対応に追われることが少なくなると、精神的負担も軽減し、ケアの質の向上にも繋がると考える。
結論
見守りセンサー導入により利用者、職員の双方にとって安全で働きやすい環境が整備できた。しかし、機器を運用する中で課題も浮き彫りになった。利用者が入眠している中でもアラートの警告音が鳴る事や、生体センサーが利用者の不在時に反応する事がある。端末を確認する作業が増え、職員の負担になってしまっている。その為、見守りセンサーに蓄積されたデータを元に情報を分析し設定の最適化に取り組む必要がある。
見守りセンサーを導入して終わりではなく、多職種と連携し機器を有効活用できるように働きかけ、職員の教育を実施していく必要がある。今後も職員の負担軽減、人材不足対策としてICT、DXの推進を行い、施設が利用者にとって安心して生活ができ、職員にとって働きがいのある職場となる様に取り組みたい。
当施設は認知症専門棟19床、一般棟35床、合計54床の介護老人保健施設である。入所者の70%以上が転倒・転落アセスメントで危険度3であり、転倒・転落、夜間の徘徊、離設への迅速な対応が求められるが、人材不足により十分な見守りが難しい状況にある。ナースコール連動型のセンサーを設置しているがセンサーの感知が多く負担となっていた。こうした課題に対応するため、見守りカメラの導入が決まり、動体検知、AI画像解析機能を備えた見守りカメラを11台導入した。導入から1年たった今、その効果と課題を検証した。
目的
本研究目的は、見守りカメラ11台の導入によって利用者の安全確保、職員の負担軽減、及び業務効率化にどの程度寄与するのか評価する事である。また、運用上の問題点についても明らかにする。
方法
2024年3月から見守りカメラ11台(動体検知、AI画像解析、クラウド録画機能搭載)を導入し、カメラの設置可能場所は25床とした。カメラはリアルタイム映像確認、異常行動の自動検知、スマートフォンへの通知機能を備え、スタッフステーションのモニターで一元管理を可能とした。
評価方法
導入効果を以下の指標で評価した。(1)転倒・転落の事例件数(2)職員の労働負担(アンケート調査により、主観的負担感、機器の使いやすさ等)。
結果
(1)転倒・転落の事例件数
図は見守りセンサー導入前後で転倒・転落件数を比較したグラフである。青いグラフは導入前(R5年3月~R6年2月)の転倒件数であり、12月、1月は当施設で新型コロナウィルスのクラスターがあり、転倒件数が増加した。茶色グラフは導入後(R6年3月~R7年2月)であり4月に多いのはインフルエンザの流行が原因だった。導入前後で件数に有意差は見られなかった。
導入前後の1年間の件数比較を行ったが、クラスターの状況やその時の入所者層(転倒リスクの高い方の有無)も異なる為、有効性の検証には至らなかった。一方で、クラウド録画機能は転倒状況の確認ができ、再発防止のための具体的な対策立案に活用出来た。同一利用者の居室内転倒は再発していない。又、高齢者にとって感染症発生時の隔離は認知機能低下のきっかけとなり、職員側は対応に難渋する。導入以前はセンサー感知するたびに、訪室して対応しなければならなかったが、設置後はモニターで居室内の状況が確認できるため、不必要な訪室を減らせることが出来た。これは、職員の感染リスク軽減につながり有効であった。
(2)職員の労働負担
当施設では、介護、看護職員26名の内、外国人職員が10名在籍している。導入時に操作方法の説明会を行ったが外国人職員全員が操作できるまで繰り返し指導が必要であった。3か月後に使いやすさの確認、意見等のアンケート調査を行った。
意見内容は、「介助途中でもスマートフォンの確認をしなくてはならない」「使い方がまだ分からない」「スマートフォンとPHSの2台を持たないといけないから持ち歩くのが大変」といった意見が多く聞かれた。
意見を参考に指導を続け、1年後に同じアンケートを実施した(回収率100%)。「だいぶ慣れてきて使いやすくなった」「センサー感知でその都度居室まで行かなくてはならなかったがスマホで見守れるため負担の軽減につながった」「使い方が分かって便利に感じるようになった」「時々誤作動がある為、その度にスマートフォンを持って確認を行わないといけない」等の意見があった。最も多かった意見は「訪室頻度の減少」であった。ある1日の調査結果では利用者1名のセンサー感知11回の内、モニター確認のみで訪室不要であった回数が9回。つまり、訪室回数が81%削減した結果が出た。就寝中の訪室が減ったことは入所者の睡眠の質向上にもつながる。
職員の意見を聞きながら、感知項目やアラートの通知音を1回から複数回鳴るなどの変更を行い、実務に即した見守りセンサーを設定する事が出来た。
考察
当施設では、転倒・転落事例の削減を期待し導入に踏み込んだが、件数削減の結果には至らなかった。
しかし、これまで居室内での転倒に関して憶測でしか対策立案できなかったことが、録画機能の活用で居室内の行動が分析できるようになり、再発防止に有効だったと考える。今後は入所7日以内に行動データを分析する事で個別ケアの強化を図り、転倒対策が立てられるようにすることが求められる。
また、アンケート調査で全職員が負担軽減に繋がったと回答している。携帯しているスマートフォンで利用者の状況がリアルタイムに確認でき、不必要な訪室が減ることには身体的負担の軽減になった。特に、感染隔離中の非接触での見守りは有効であった。更に、センサー対応に追われることが少なくなると、精神的負担も軽減し、ケアの質の向上にも繋がると考える。
結論
見守りセンサー導入により利用者、職員の双方にとって安全で働きやすい環境が整備できた。しかし、機器を運用する中で課題も浮き彫りになった。利用者が入眠している中でもアラートの警告音が鳴る事や、生体センサーが利用者の不在時に反応する事がある。端末を確認する作業が増え、職員の負担になってしまっている。その為、見守りセンサーに蓄積されたデータを元に情報を分析し設定の最適化に取り組む必要がある。
見守りセンサーを導入して終わりではなく、多職種と連携し機器を有効活用できるように働きかけ、職員の教育を実施していく必要がある。今後も職員の負担軽減、人材不足対策としてICT、DXの推進を行い、施設が利用者にとって安心して生活ができ、職員にとって働きがいのある職場となる様に取り組みたい。

