講演情報

[28-P-L001-01]変形性膝関節症に脛骨内顆脆弱性骨折を発症した症例

愛媛県 松澤 啓二1, 近藤 正太2 (1.介護老人保健施設合歓の木, 2.三津整形外科)
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はじめに変形性膝関節症は加齢に伴う関節構成体の退行変性を基礎として軟骨破壊と骨軟骨の増殖性変化を来し二次性滑膜炎、関節周囲組織の過剰ストレスなどによる荷重時痛や運動時痛を病態とする疾患である.一方で脆弱性骨折は骨密度の低下により軽微な外傷が誘因となり生じる骨折で、原因として骨粗鬆症、糖尿病、長期透析、関節リウマチなど骨密度を低下させる基礎疾患が背景にあることが多い.今回、変形性膝関節症を基礎疾患とする症例に対しリハビリテーションの経過中に特に誘因なく膝関節周囲の腫脹を伴わない疼痛を訴え、歩行器歩行も継続的に可能であったが、持続する疼痛および疼痛部位に違和感を感じ医師に報告の下、整形外科への受診を促した結果、脛骨内側脆弱性骨折であると診断された症例を経験したので、入所からのリハビリテーションと診断、その後の経過を含め臨床症状を病態学的に捉える重要性を考察を加えて報告する.症例紹介 70歳代女性.左変形性膝関節症、てんかん、パーキンソン病現病歴;コロナ感染後の廃用症候群により歩行機能低下を来し、入所時側方介助による歩行器歩行30m程度で、歩行時における膝関節痛は左内側部に軽微にあった。既往歴;第3腰椎圧迫骨折、脳梗塞、認知症(HDS-R28点)機能的評価;下肢筋力MMT4、膝関節可動域normal、下肢アライメントO脚の程度はK-L分類グレード2。疼痛部位は歩行開始時内側部に軽度、歩行継続時は消失、運動時。ADLは自立している。入所後のリハビリテーションと症状の経過;4週目くらいから連続した歩行距離が100m以上となり体力面の問題点がクリアされたので療養棟内は歩行器で自立となり、自主訓練として散歩するように指導した。8週目では階段が近位監視レベルで行えるようになり、在宅復帰の準備が始まった。この時点では膝関節の疼痛の訴えは特になかったが、10週目位に歩行時左膝関節の強度の疼痛を訴えるようになった。この時炎症所見はこの疼痛のみであった.このころより臥位での膝関節屈曲他動運動時においても疼痛を訴えるようになり、寝返り時にも同様の疼痛が出現した。歩行時には動作初期に軽度の疼痛が見られるが歩行器歩行中は疼痛消失していた。そのため出現する疼痛は変形性膝関節症によるものと推論し(荷重時に運動時痛はなく他動運動時に限定されていたため筋トラブルは否定し)、また膝関節周囲のトリガーポイントを探したが特定には至らなかった。その後、生活状態の低下は認めなかったが膝の疼痛が継続するため11週目に原因が不明のまま受診となった。ここまでの訓練はO脚変形が軽微だった為、大腿四頭筋と股関節外内旋筋群の筋力強化を中心に行っていた。膝関節の伸展制限は無く歩行状態も歩行器使用により安定していた。診断後のリハビリテーションの内容と経過;受診時のレントゲン撮影では異常所見なくMRI検査を実施した結果、左脛骨内顆脆弱性骨折の診断となった。直ちに膝関節内側部の荷重軽減とアライメント改善を目的にインソールを作成し、受傷1週後の完成までの間は車椅子対応となった。骨折後も臥位での運動療法は継続し、同時にインソール装着し平行棒内歩行訓練を再開した。3週目には疼痛の訴えもなくなりADLもほとんど影響なく経過し、4週目から歩行器を使用し療養棟内の移動はフリーとなった。最終的に16週の入所期間となり、ADLは自立。杖歩行での退所となった。考察;脆弱性骨折は不顕性骨折とも言われており糖尿病や関節リウマチなどの疾患を合併する症例に多いとされるが、骨粗鬆症を基礎とする軽微な外力が誘因となる.本症例においては、特に不顕性骨折を誘発する合併症もなく、膝関節にかかる外力はリハビリテーション時の階段昇降、杖歩行訓練及び療養病棟内においての歩行器による自立歩行であった.一方で変形性膝関節症においては内側型を呈し、O脚変形を認めていた.このことは、歩行時に常に脛骨内側部に負荷がかかる状態であり、繰り返し引き起こされる軽微な外力といえるかも知れない.今回、歩行時の痛み、動作時の痛みが変形性膝関節症によるものか、あるいはそれ以外の可能性としての不顕性骨折を疑うのかどうかを判断するための膝関節周囲の疼痛、機能障害に対する病態の理解が明確であれば、早期の対応が出来た可能性がある.またリハビリテーション施行前の問診は、疼痛や症状の具体性を見出すのに重要な評価と捉えるが、老人保健施設に入所される利用者は認知症の方も多く、問診や検査手法だけでは問題を明確にすることは困難なこともある.歩行を含めた観察による動作分析は、日常の変化を捉えるための重要な指標になると考える.また、同時に利用者のわずかな変化を医師とのコミュニケーションで共有することはリスク管理を徹底する上で最も重視しなければならない要素であると思われた.