講演情報
[28-P-L001-03]高齢者の筋力を効率よく向上させるためにコラーゲンペプチドが高齢者の筋に及ぼす影響-第2報
東京都 ○谷岡 賢次, 関田 智子, 渋谷 直希 (介護老人保健施設花水木)
【はじめに】
老人保健施設のリハビリテーション(以下、リハビリ)において、重要なポイントが在宅復帰である。以前から利用者に対して、厚生労働省の推奨するたんぱく質を始めとした栄養摂取量1)を前提にリハビリを行ってきた。しかし、入所中の訓練だけでは在宅復帰に必要な筋力は十分に得られず、在宅復帰に支障をきたすことが度々認められた。そこで、当施設では前報2)により、コラーゲンペプチドの経口摂取による効果に着目3)及び検証を行い、一定の効果を確認してきた。本研究は、結果のブレ幅を抑えるため、サンプルサイズを拡大・収集したものに前報のデータを合わせ、再度検証することで、第36回全国介護老人保健施設大会における当施設の研究発表の精度向上を目的として再検討したものである。
【目的】
コラーゲンペプチドの経口摂取が筋力向上に及ぼす影響を検証する。
【方法】
1.対象
当施設入所者のうち、歩行器使用以上の歩行能力を有しており18cm段差昇降が可能な9名を対象とし、介入群の5名と対照群の4名に分けたものに、前報データ(介入群3名と対照群3名)を合わせ、計15名とした。
2.研究方法
1)研究デザイン
非ランダム化比較試験
2)調査期間
2025年3月24日~2025年6月15日(12週)とした。
3)統計解析
データは、年齢、Barthel Index(以下BIとする)は平均値±標準偏差、体組成・体力測定結果は中央値(25%ー75%)で表す。介入群と対照群の2群間の検定はMann-Whitney U testを用い、有意水準5%未満を有意差ありとした。また、統計解析にはFreeJSTATを使用した。
4)介入方法
介入群には3回/週の訓練後「ブイ・クレスCP10R」(以下CP10R)を摂取してもらい、対照群は訓練のみとした。
5)評価項目
トレーニングの前後に以下に示したデータ収集、体力測定を行った。
1》骨格筋量 (家庭用体組成計使用) 4)
2》握力
3》大腿周径/膝蓋骨上端より0・5・10cmの部分を計測。
4》立ち座りテスト
5》Functional reach test(以下FR)
6》Timed up & go(以下TUG)
6)訓練内容
今回は高齢者が取り組み易く多くの下肢筋を導入でき、在宅復帰を考える上で問題となりやすい段差昇降訓練を行う。回数は最大実施可能数の半分を3セット。実施中は上肢の力に頼らない、姿勢を正しく保つ(動作中の支持基底面に重心が入るよう)ことを意識させた。
本研究に関連し、開示すべき利益相反(COI)関係にある企業・団体はない。
倫理的配慮:本研究は全ての対象者及びその家族に医師の許可のもと研究内容に関する説明を行い、同意を得た。
【結果】
対象者の平均年齢は、介入群85.3±5歳、対照群は89.5±4.2歳。性別は男性3名、女性12名、計15名。Barthel Indexは介入群75±13.3点、対照群は70.8±13.9点。
1)骨格筋量
介入群は1.3(-0.83-1.83)kg、対照群は0.15(-0.35-1)kg、P=0.028。
2)握力
右の介入群は1(0.12-1.75)kg、対照群は右0(0-1)kg、P=0.067。左の介入群は1.5(0.6-3.5)kg、対照群は0(-1.5-0.87)kg、P=0.041。
3)大腿周径
右の介入群は1.08(0.75-1.41)cm、対照群は0.33(0-0.9)cm、P=0.036。左の介入群は1.16(0.87-1.75)cm、対照群は左0.33(0.16-0.56)、P=0.01。
4)立ち座りテスト
介入群は3.59(1.61-9.15)秒、対照群は0.68(0.1-4.3)秒それぞれ速くなった。P=0.03。
5)FR
介入群は3.65(1.2-6.12)cm、対照群は2(-0.5-3)cmそれぞれ数値の上昇を認めた。P=0.15。
6)TUG
介入群は1.85(0.61-3.11)秒速くなり、対照群は-2(-3.01-0.6)秒遅くなった。P=0.02。
【考察・まとめ】
コラーゲンペプチドは,以前より内臓や血管、皮膚にある細胞の増殖や骨芽組織の分化促進に関与し、関節痛や変形性膝関節痛の軽減にも有効であると一般的にいわれてきた。近年の研究では、経口摂取されたコラーゲンペプチドは腸管で消化吸収され、血中に移行し標的細胞の受容体へ働きかけることが明らかになっており,骨格筋量が増加する可能性が示唆されてきている5)が、まだ報告が少ない。本研究でも、非介入群に対して介入群の各評価項目の数値が増加している項目が多いことから,コラーゲンペプチドは高齢者のタンパク同化反応を促進する可能性があると予測される。しかし、食事摂取量の多寡やCP10R摂取の有無など、本研究の介入群と対照群の間にエネルギーの他、微量元素やビタミン等の摂取量に差異が生じたため、詳細の検討が今後の課題として残存している。また,コラーゲンペプチドの1日当たりの必要量は5~10g6)とされているが、本研究で用いたCP10Rは、エネルギー80kcalに加え、10gのコラーゲンペプチドの他、2gのタンパク質を含有していることから,食事や水分摂取量の不足している利用者の負担軽減になるとも推察される。今回の研究では、リハビリとコラーゲンペプチド含有飲料の摂取を継続することで、体組成・身体機能に有意な差が認められる結果となった。利用者のQOL向上へ結び付けられるように、今回の結果を今後のリハビリに汎化させることが次の課題だと考えている。
【参考文献】
1)厚生労働省.“日本人の食事摂取基準(2025年版)”策定検討会報告書.女子栄養大学出版部.2025.
2)渋谷直希,谷岡賢次.“高齢者が効率よく筋力を向上させるには” 全国老人保健施設協会 第34回全国介護老人保健施設大会抄録.2023.
3)Pedro Augusto Querido Inacio, et al.“The Effects of Collagen Peptides as a Dietary Supplement on Muscle Damage Recovery and Fatigue Responses“. Nutrients 2024, 16(19), 3403.
4)坂元誠治ほか.“3種類の体組成測定機の互換性の検討”.2019.
5)馬場正美ほか.“コラーゲンペプチドが高齢者の骨格筋量に及ぼす影響~回復期リハビリテーション病棟患者への経口栄養補助(ONS)介入研究~”.2020.
6) 野口知里, 小林身哉, 小山洋一: 20代から50代日本人女性における食事由来コラーゲン推定摂取量の特徴. 栄養学雑誌 2012; 70: 120-128.
老人保健施設のリハビリテーション(以下、リハビリ)において、重要なポイントが在宅復帰である。以前から利用者に対して、厚生労働省の推奨するたんぱく質を始めとした栄養摂取量1)を前提にリハビリを行ってきた。しかし、入所中の訓練だけでは在宅復帰に必要な筋力は十分に得られず、在宅復帰に支障をきたすことが度々認められた。そこで、当施設では前報2)により、コラーゲンペプチドの経口摂取による効果に着目3)及び検証を行い、一定の効果を確認してきた。本研究は、結果のブレ幅を抑えるため、サンプルサイズを拡大・収集したものに前報のデータを合わせ、再度検証することで、第36回全国介護老人保健施設大会における当施設の研究発表の精度向上を目的として再検討したものである。
【目的】
コラーゲンペプチドの経口摂取が筋力向上に及ぼす影響を検証する。
【方法】
1.対象
当施設入所者のうち、歩行器使用以上の歩行能力を有しており18cm段差昇降が可能な9名を対象とし、介入群の5名と対照群の4名に分けたものに、前報データ(介入群3名と対照群3名)を合わせ、計15名とした。
2.研究方法
1)研究デザイン
非ランダム化比較試験
2)調査期間
2025年3月24日~2025年6月15日(12週)とした。
3)統計解析
データは、年齢、Barthel Index(以下BIとする)は平均値±標準偏差、体組成・体力測定結果は中央値(25%ー75%)で表す。介入群と対照群の2群間の検定はMann-Whitney U testを用い、有意水準5%未満を有意差ありとした。また、統計解析にはFreeJSTATを使用した。
4)介入方法
介入群には3回/週の訓練後「ブイ・クレスCP10R」(以下CP10R)を摂取してもらい、対照群は訓練のみとした。
5)評価項目
トレーニングの前後に以下に示したデータ収集、体力測定を行った。
1》骨格筋量 (家庭用体組成計使用) 4)
2》握力
3》大腿周径/膝蓋骨上端より0・5・10cmの部分を計測。
4》立ち座りテスト
5》Functional reach test(以下FR)
6》Timed up & go(以下TUG)
6)訓練内容
今回は高齢者が取り組み易く多くの下肢筋を導入でき、在宅復帰を考える上で問題となりやすい段差昇降訓練を行う。回数は最大実施可能数の半分を3セット。実施中は上肢の力に頼らない、姿勢を正しく保つ(動作中の支持基底面に重心が入るよう)ことを意識させた。
本研究に関連し、開示すべき利益相反(COI)関係にある企業・団体はない。
倫理的配慮:本研究は全ての対象者及びその家族に医師の許可のもと研究内容に関する説明を行い、同意を得た。
【結果】
対象者の平均年齢は、介入群85.3±5歳、対照群は89.5±4.2歳。性別は男性3名、女性12名、計15名。Barthel Indexは介入群75±13.3点、対照群は70.8±13.9点。
1)骨格筋量
介入群は1.3(-0.83-1.83)kg、対照群は0.15(-0.35-1)kg、P=0.028。
2)握力
右の介入群は1(0.12-1.75)kg、対照群は右0(0-1)kg、P=0.067。左の介入群は1.5(0.6-3.5)kg、対照群は0(-1.5-0.87)kg、P=0.041。
3)大腿周径
右の介入群は1.08(0.75-1.41)cm、対照群は0.33(0-0.9)cm、P=0.036。左の介入群は1.16(0.87-1.75)cm、対照群は左0.33(0.16-0.56)、P=0.01。
4)立ち座りテスト
介入群は3.59(1.61-9.15)秒、対照群は0.68(0.1-4.3)秒それぞれ速くなった。P=0.03。
5)FR
介入群は3.65(1.2-6.12)cm、対照群は2(-0.5-3)cmそれぞれ数値の上昇を認めた。P=0.15。
6)TUG
介入群は1.85(0.61-3.11)秒速くなり、対照群は-2(-3.01-0.6)秒遅くなった。P=0.02。
【考察・まとめ】
コラーゲンペプチドは,以前より内臓や血管、皮膚にある細胞の増殖や骨芽組織の分化促進に関与し、関節痛や変形性膝関節痛の軽減にも有効であると一般的にいわれてきた。近年の研究では、経口摂取されたコラーゲンペプチドは腸管で消化吸収され、血中に移行し標的細胞の受容体へ働きかけることが明らかになっており,骨格筋量が増加する可能性が示唆されてきている5)が、まだ報告が少ない。本研究でも、非介入群に対して介入群の各評価項目の数値が増加している項目が多いことから,コラーゲンペプチドは高齢者のタンパク同化反応を促進する可能性があると予測される。しかし、食事摂取量の多寡やCP10R摂取の有無など、本研究の介入群と対照群の間にエネルギーの他、微量元素やビタミン等の摂取量に差異が生じたため、詳細の検討が今後の課題として残存している。また,コラーゲンペプチドの1日当たりの必要量は5~10g6)とされているが、本研究で用いたCP10Rは、エネルギー80kcalに加え、10gのコラーゲンペプチドの他、2gのタンパク質を含有していることから,食事や水分摂取量の不足している利用者の負担軽減になるとも推察される。今回の研究では、リハビリとコラーゲンペプチド含有飲料の摂取を継続することで、体組成・身体機能に有意な差が認められる結果となった。利用者のQOL向上へ結び付けられるように、今回の結果を今後のリハビリに汎化させることが次の課題だと考えている。
【参考文献】
1)厚生労働省.“日本人の食事摂取基準(2025年版)”策定検討会報告書.女子栄養大学出版部.2025.
2)渋谷直希,谷岡賢次.“高齢者が効率よく筋力を向上させるには” 全国老人保健施設協会 第34回全国介護老人保健施設大会抄録.2023.
3)Pedro Augusto Querido Inacio, et al.“The Effects of Collagen Peptides as a Dietary Supplement on Muscle Damage Recovery and Fatigue Responses“. Nutrients 2024, 16(19), 3403.
4)坂元誠治ほか.“3種類の体組成測定機の互換性の検討”.2019.
5)馬場正美ほか.“コラーゲンペプチドが高齢者の骨格筋量に及ぼす影響~回復期リハビリテーション病棟患者への経口栄養補助(ONS)介入研究~”.2020.
6) 野口知里, 小林身哉, 小山洋一: 20代から50代日本人女性における食事由来コラーゲン推定摂取量の特徴. 栄養学雑誌 2012; 70: 120-128.
