講演情報
[28-P-L001-05]超強化型老健における集団リハの継続的な介入と効果
大阪府 ○松尾 康宏, 牟田 博行, 石川 光穂 (竜間之郷)
【はじめに】
当施設は在宅復帰と在宅生活支援の双方において高い機能を有する「超強化型」老健であり、医療・看護・介護ケアの体制を整え、短期集中・認知症短期集中リハビリテーションを含め個別リハビリテーション(以下、個別リハ)を重視した体制をとっている。高齢者のリハビリにおいては身体機能の維持・改善のみならず「他者とのコミュニケーション」や「社会的参加」も重要と考えているが、個別リハではこれらが不十分と思われ、生活意欲や役割への介入も不足が感じられる。またリハビリ専門職は、病院を含む関連施設からの定期的な異動があり、担当者の交代頻度が高く、リハプログラムも個人の裁量にゆだねられ、継続性が損なわれやすいという課題も抱えていた。以上を踏まえ、個別リハを補う取り組みとして作業療法士・言語聴覚士が主体となりコミュニケーションや参加等を目的に集団リハビリテーション(以下、集団リハ)を実施した。また、スタッフの異動が多い職場環境下で継続的に集団リハを続けていく工夫を行った。本稿ではその双方の効果を報告する。
【目的】
個別リハにおいては他者との交流やコミュニケーション等の関わりが不足するという側面も考えられる。そのため認知症利用者によっては孤独感が増す可能性も考えられた。今回、これらの弱点に対応するため、利用者の心身機能に応じ集団リハを実施した。また、スタッフ異動が多い職場環境下で継続的に集団リハを続けていく工夫を行った。
【対象】
対象者は、身体的・精神的機能が安定し集団リハへの同意が得られた利用者としている。参加人数はスタッフの配慮が行き届くように約4~5名の少数で形成し、基準は、他者交流・社会参加・離床の機会を促したい利用者としている。身体的な痛みや疲労による運動機能の低下、不安・うつ症状、認知機能の低下で集団リハビリについていけない利用者は対象とはしていない。なお本発表に関連し開示すべきCOI関係にある企業などはない。
【方法】
集団リハの体制・頻度・プログラムとして:作業療法士・言語聴覚士が担当し、実施は週に1回、1回を40分程度のプログラムを行った。内容は利用者の心身機能や目標に応じ、制作活動やコミュニケーションの活性化を軸とし回想法の要素も含めながら実施した。具体例は、自己紹介から始まり、身体を使うゲーム(風船バレー・輪投げ・パターゴルフ)、手芸活動(編み物・塗り絵・季節の飾りつけ製作)、なぞなぞ、季節に応じた歌の合唱等の活動を行った。運営上の主な工夫として:1.マニュアルの作成、集団リハビリ1回(40分)の目的、活動内容、進行、スタッフの役割、リスク管理などを記録し、担当の変更があってもプログラムの質が保たれるようにした。2.引継ぎマニュアルの運用、担当交代時に、グループ特性や各利用者の参加状況・目標・注意事項等を紙面にて申し送り、情報の抜けを防止。新任スタッフが速やかに実施できる仕組みを作った。3.カンファレンスでの共有、多職種の集団リハを観察により、普段は見せない一面(発言・交流・コミュニケーション等)をカンファレンス等で共有し、個別リハビリやケアプランに反映する。4.新任担当者へのOJT、前担当者と既存のスタッフが一定の期間、同じくして集団リハビリを実施し、スムーズな引継ぎとプログラムの継続性を図るとした。効果測定方法定量的評価:出席率、Vitality Index(活動意欲等の指標)、ADL(ICFステージングFIM等)の経時的変化。定性的評価:スタッフによる観察記録(発言・表情・交流等の変化)、利用者や多職種(看護・介護スタッフ)によるフィードバック。
【結果】
利用者への効果:参加状況:当初は消極的だった利用者が他利用者に誘われて参加する等、参加意欲・自発性がみられた。心理・社会面:「毎週楽しみにしている」「今日は何時からあるの」といった前向きな声が多数聞かれた。終了後も利用者間の会話・交流がみられ、生活の質向上に繋がった。心身機能面:ADLスコアに大きな変化はなかったが、顕著な低下もなく、機能維持に寄与したと考えられた。特に言語聴覚士のアプローチおいて、発話の機会や明瞭性の向上も確認された。 継続性について:これまで担当の異動が原因となるプログラムの中止もなく集団リハは継続している。引継ぎ方法の工夫やOJT体制により新任者もスムーズに介入できている。多職種の連携:個別リハだけでは見えなかった利用者の思わぬ心理面(コミュニケーション、他者への配慮等)を知ることができた。その情報を多職種間で共有することにより、ケアや個別プログラムの質的向上にもつながった。
【考察】
本取り組みは、超強化型老健に求められる個別リハを行いつつも、社会的参加・コミュニケーション・生活意欲を高める手段として、集団リハが有効であることを示唆している。山口は、リハは人が人に関わる中で行われ、技法そのものの効果より、むしろ関わり方の効果の方が大きいと指摘し「双方向のコミュニケーション」・「他者の役に立つ機会をもつこと」を推奨している。集団リハ場面では、参加者がお互いを意識し、援助的な行動や声かけが行われ、これらの要素が示されている。またスタッフの異動という組織上避けられない課題には、マニュアル化や情報共有の体制を整えた事で、プログラムの継続が可能となった。集団リハの実施により利用者の理解が深まる事や、多職種連携・リハビリ体制の向上にも寄与すると考えられる。今回の引継ぎ方法やOJTを整えることは、他のリハビリ介入のモデルにもなり得ると思われる。今後の課題としては、それぞれの目標に対するより細かな対応やグループ構成の多様化、および心身機能評価の精度向上が挙げられる。
当施設は在宅復帰と在宅生活支援の双方において高い機能を有する「超強化型」老健であり、医療・看護・介護ケアの体制を整え、短期集中・認知症短期集中リハビリテーションを含め個別リハビリテーション(以下、個別リハ)を重視した体制をとっている。高齢者のリハビリにおいては身体機能の維持・改善のみならず「他者とのコミュニケーション」や「社会的参加」も重要と考えているが、個別リハではこれらが不十分と思われ、生活意欲や役割への介入も不足が感じられる。またリハビリ専門職は、病院を含む関連施設からの定期的な異動があり、担当者の交代頻度が高く、リハプログラムも個人の裁量にゆだねられ、継続性が損なわれやすいという課題も抱えていた。以上を踏まえ、個別リハを補う取り組みとして作業療法士・言語聴覚士が主体となりコミュニケーションや参加等を目的に集団リハビリテーション(以下、集団リハ)を実施した。また、スタッフの異動が多い職場環境下で継続的に集団リハを続けていく工夫を行った。本稿ではその双方の効果を報告する。
【目的】
個別リハにおいては他者との交流やコミュニケーション等の関わりが不足するという側面も考えられる。そのため認知症利用者によっては孤独感が増す可能性も考えられた。今回、これらの弱点に対応するため、利用者の心身機能に応じ集団リハを実施した。また、スタッフ異動が多い職場環境下で継続的に集団リハを続けていく工夫を行った。
【対象】
対象者は、身体的・精神的機能が安定し集団リハへの同意が得られた利用者としている。参加人数はスタッフの配慮が行き届くように約4~5名の少数で形成し、基準は、他者交流・社会参加・離床の機会を促したい利用者としている。身体的な痛みや疲労による運動機能の低下、不安・うつ症状、認知機能の低下で集団リハビリについていけない利用者は対象とはしていない。なお本発表に関連し開示すべきCOI関係にある企業などはない。
【方法】
集団リハの体制・頻度・プログラムとして:作業療法士・言語聴覚士が担当し、実施は週に1回、1回を40分程度のプログラムを行った。内容は利用者の心身機能や目標に応じ、制作活動やコミュニケーションの活性化を軸とし回想法の要素も含めながら実施した。具体例は、自己紹介から始まり、身体を使うゲーム(風船バレー・輪投げ・パターゴルフ)、手芸活動(編み物・塗り絵・季節の飾りつけ製作)、なぞなぞ、季節に応じた歌の合唱等の活動を行った。運営上の主な工夫として:1.マニュアルの作成、集団リハビリ1回(40分)の目的、活動内容、進行、スタッフの役割、リスク管理などを記録し、担当の変更があってもプログラムの質が保たれるようにした。2.引継ぎマニュアルの運用、担当交代時に、グループ特性や各利用者の参加状況・目標・注意事項等を紙面にて申し送り、情報の抜けを防止。新任スタッフが速やかに実施できる仕組みを作った。3.カンファレンスでの共有、多職種の集団リハを観察により、普段は見せない一面(発言・交流・コミュニケーション等)をカンファレンス等で共有し、個別リハビリやケアプランに反映する。4.新任担当者へのOJT、前担当者と既存のスタッフが一定の期間、同じくして集団リハビリを実施し、スムーズな引継ぎとプログラムの継続性を図るとした。効果測定方法定量的評価:出席率、Vitality Index(活動意欲等の指標)、ADL(ICFステージングFIM等)の経時的変化。定性的評価:スタッフによる観察記録(発言・表情・交流等の変化)、利用者や多職種(看護・介護スタッフ)によるフィードバック。
【結果】
利用者への効果:参加状況:当初は消極的だった利用者が他利用者に誘われて参加する等、参加意欲・自発性がみられた。心理・社会面:「毎週楽しみにしている」「今日は何時からあるの」といった前向きな声が多数聞かれた。終了後も利用者間の会話・交流がみられ、生活の質向上に繋がった。心身機能面:ADLスコアに大きな変化はなかったが、顕著な低下もなく、機能維持に寄与したと考えられた。特に言語聴覚士のアプローチおいて、発話の機会や明瞭性の向上も確認された。 継続性について:これまで担当の異動が原因となるプログラムの中止もなく集団リハは継続している。引継ぎ方法の工夫やOJT体制により新任者もスムーズに介入できている。多職種の連携:個別リハだけでは見えなかった利用者の思わぬ心理面(コミュニケーション、他者への配慮等)を知ることができた。その情報を多職種間で共有することにより、ケアや個別プログラムの質的向上にもつながった。
【考察】
本取り組みは、超強化型老健に求められる個別リハを行いつつも、社会的参加・コミュニケーション・生活意欲を高める手段として、集団リハが有効であることを示唆している。山口は、リハは人が人に関わる中で行われ、技法そのものの効果より、むしろ関わり方の効果の方が大きいと指摘し「双方向のコミュニケーション」・「他者の役に立つ機会をもつこと」を推奨している。集団リハ場面では、参加者がお互いを意識し、援助的な行動や声かけが行われ、これらの要素が示されている。またスタッフの異動という組織上避けられない課題には、マニュアル化や情報共有の体制を整えた事で、プログラムの継続が可能となった。集団リハの実施により利用者の理解が深まる事や、多職種連携・リハビリ体制の向上にも寄与すると考えられる。今回の引継ぎ方法やOJTを整えることは、他のリハビリ介入のモデルにもなり得ると思われる。今後の課題としては、それぞれの目標に対するより細かな対応やグループ構成の多様化、および心身機能評価の精度向上が挙げられる。
