講演情報

[28-P-LGFEZ-05]季節感を意識した昔ながらの行事

京都府 澤田 めぐみ, 藤川 未来, 藤本 拓実, 倉橋 岳志 (介護老人保健施設萌木の村)
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施設入所生活は、単調になりやすく外出の機会も限られているので生活において刺激が少なく、時間や季節感覚が薄れやすくなる。当施設では日々のレクリエーションに加えて、多職種から選出された職員が行事委員会を運営し月ごとに行事を開催してきた。時にはご利用者家族も参加する大規模な行事も開催してきたが、新型コロナ感染症蔓延を機に、その活動は縮小せざるを得なかった。現在、世間的に感染症対策は緩和されているが介護施設では一定水準の感染症対策を継続しなければならない。そのため、大規模なイベントを開催する事は難しく、行事委員会では企画の提案に行き詰っていた。そこで、盛大なイベントを開催する事に囚われず、行事委員会として基本に立ち返り『行事』のあり方を見直した。
『行事』とは恒例として日を定め取り行う催しの事である。また、人々の生活リズムとなっている『年中行事』は、季節や特定の時期に行われる催しの事である。古来より伝わる伝統的な行事や地域性のある行事、個人的な恒例行事もある。四季の変化に富む日本では、正月・花見・七夕・季節や地域の祭りなどの様々な行事があり、その時々に家族や友人、地域との繋がりや季節を感じて来た。それらを改めて意識する事で、ご利用者が過ごしてきた生活において「馴染みのある・季節を感じる昔ながらの行事」をテーマとした年間行事を企画する事となった。
2024年 年間行事 1月:獅子舞 2月:節分会 3月:ひな祭り会 4月:お花見 5月:菖蒲湯 6月:お茶の日会  7月:七夕 8月:運動会 9月:秋祭り 10月:花火大会 11月:紅葉狩り 12月:餅つき・ゆず湯
1年の始まりは、厄払いや無病息災を祈願して日本各地で見られる伝統芸能の獅子舞とした。職員が段ボールで作成された獅子頭を持ち唐草模様のマントを身に纏いフロアを練り歩いた。ご利用者が笑顔で獅子頭に頭を噛まれる姿や「私も噛んで欲しい」との声が多く聞かれた。2月と3月は伝統の年中行事である節分と雛祭りをテーマに開催した。節分会では鬼に扮した職員へ豆の代わりにお手玉を投げ、普段は控え目なご利用者も白熱する姿が見られた。また、恵方巻の由来と具材について熱心に耳を傾けておられた。ひな祭り会では、その起源を説明して、ひな壇の配置を当てるゲームを行った。ご利用者が自宅で飾っていたひな人形について思い返し話される姿もあった。4月と5月は季節に沿った花をテーマに開催した。毎年恒例行事のお花見では、ご利用者の希望に沿って、施設車両でのお花見ドライブと敷地内のしだれ桜鑑賞に分けて楽しんで頂いた。過去にお花見をされた場所の話で盛り上がる中、「なかなか出歩けないので、お花見が出来て嬉しい」等の感謝の言葉をたくさん頂いた。菖蒲湯では、鑑賞する花菖蒲と湯に入れる葉菖蒲を組み合わせた。花菖蒲を飾り、湯船に葉菖蒲を浮かべ、浴室から上がる時の掛け湯は菖蒲の入浴剤を使用した。花菖蒲が開花していく様子や湯船の葉菖蒲に触れて、五感を使った内容となりたいへん喜ばれた。6月は当施設が京都府南部に位置しお茶の産地である事から、新茶を使用したお茶会を開催した。茶道経験のある職員が抹茶をたてて振る舞い、新茶を飲みながら茶摘みの経験を思い起こし話されるご利用者もおられた。7月の七夕はご利用者やご家族が願いを込めた短冊を笹に飾り、職員有志で結成したコーラス隊が初夏にちなんだ歌を披露した。サックスが得意な職員も参加し生演奏に聞き入る姿がみられた。8月と9月は幼少期や家族との思い出がたくさんあると思われる運動会と秋祭りを開催した。運動会では馴染みのある玉入れや綱引き等を行い、職員も共に参加して楽しんだ。9月は施設全体の恒例行事である秋祭りを開催した。デイルームの1区画とリハビリ室等を利用して、ボランティアによる昭和歌謡ショーと職員が設営したお化け屋敷を実施した。各フロアが交差しない動線を確保しながら、ボランティアの協力を得て昔ながらの祭りの雰囲気を楽しまれた。また、お化け屋敷ではマルチシートを張り合わせて暗幕を作り手作りのお化けや衣装で演出した。恐怖より昔のお化けや面白みや懐かしさを重視し、「子供の時以来のお化け屋敷だった」「作りがすごいな」と喜びと驚きの声を数多く頂いた。10月は施設敷地内で花火大会を開催した。入所ご利用者限定の行事ではあったが、夕方から夕食までの短時間でスケジュールを組み2日間に分けて開催した。吹き上げ花火では歓声が上がり、手持ち花火では色の変化を楽しまれた。夕日が沈む中、煙の香りに懐かしさを感じながら子供と花火をした記憶を思い起され、「この歳になって花火が出来るなんて思いもしなかった」と感激される姿が印象的であった。11月の紅葉狩りでは春のお花見と同様のグループ分けを行い開催した。ドライブでは地域で馴染みのある神社を通り季節の移り変わりを感じて頂いた。12月は冬至で恒例のゆず湯と一年の締めくくりとして餅つきを開催した。ゆず湯では湯船につかりながらゆずを揉んで香りを楽しみながら身体を温めて、ゆず湯を自宅でしていた事を懐かしんでおられた。餅つきは年末に鏡餅作りとして開催した。職員が手を添えながらたくさんのご利用に餅をついて頂く中、威勢よく餅をつく男性のご利用者もおられ大きな歓声が上がった。昔は自宅で餅つきをする家庭が多かったため、餅の水分量や硬さ等を細かく指導して下さる姿もあった。出来上がった鏡餅は各フロアに飾り、年始には手を合わせるご利用者もおられた。
このように1年を通して季節や文化、生活に関連する行事を開催する事で、閉鎖的になりがちな施設生活に変化や彩りを添えられていると実感している。今後もご利用者の生活に寄り添った馴染みのある季節感を意識した行事を開催し、ご利用者と思い出を分かち合う機会を作っていきたい。