講演情報
[22-O-D004-02]重度BPSDを伴う認知症高齢者の社会性回復カンフォータブルケアを統一して関わった支援の効果
*若月 幸恵、出縄 真里子 (静岡県 医療法人徳洲会介護老人保健施設あじさい)
【はじめに】
80代アルツハイマー型認知症の女性は、多様なBPSDが出現し、時に制御困難となる姿から家族に恐怖心が生じ在宅での生活が困難となった。他施設でも馴染めず最終的に当施設へ入所。入所後はカンフォータブルケアを中心に多職種と連携し利用者にとって安心できる環境作りと社会的繋がりの再構築に取り組んだ。その結果、表情が穏やかになり安心した生活が回復。家族との面会も再開できた為、本事例を通じて支援の意義を報告する。
【目的】
強い不安・攻撃性・夜間徘徊など重度のBPSDを呈したアルツハイマー型認知症に対しカンフォータブルケア・学習療法(公文)・外出支援・リハビリ・薬物調整・家族支援を組み合わせたケアを多職種で行なった結果、本人の社会性が回復し家族との関係も改善した経過を明らかにする事を目的とする。カンフォータブルケアとは、快刺激を意識し実践するケア技術である。
【症例】
要介護1、認知症自立度IIIa、アルツハイマー型認知症。20代で結婚し60代で離婚その後は独居生活。 主な介護者は長男の嫁、長男は単身赴任。2022年頃より認知症症状が進行し、嫁に対し威圧的態度をとり嫁の介入も不可能となる。在宅介護が困難な事から施設に入ったが複数の施設生活に馴染めず当施設へ入所した。主な症状として、夜間不眠・徘徊、他者の部屋への誤室、物品破損、睡眠中の他者を起こす行為、草取り・石積みなどの反復動作、入浴拒否(約1か月清拭と入浴不可能)、職員への飛び蹴り・噛みつきがみられた。家族は恐怖心から入所当初より面会拒否であった。これらの行動は本人の不安・孤独・生活歴・環境変化への適応困難が複雑に絡み合っていると考えられた。
【方法】
支援期間2025.2.28~2025.8.31
入所当初より強い不安・混乱・攻撃性がみられた為カンフォータブルケアを中心に、本人の 「安心・安全」「尊厳」「役割」「環境調整」を軸とし多職種で関わりを統一した。具体的な支援内容として、本人の不安を増強させる刺激(大声・急な介入・否定的言葉)を排除し「否定しない・急がせない・奪わない」をチームで徹底した。また目線を合わせ、理解しやすい単語や敬語で接する事で快刺激を言語化する声掛けを行い、視覚刺激だけでなく聴覚刺激によって快刺激が伝わるようにした。本人の生活歴(庭いじり、石を積む常同行動)を尊重し役割として肯定的に扱い、テーブル拭きや掃き掃除を役割として担って頂いた。夜間は見守りの強化と安心できる声掛け、環境調整を行った。またタッチング・手を繋ぐ・視線を合わせるといった動作で安心感を得た。これはユマニチュードの考え方にも共通する。多職種で毎週カンファレンスを行い「何が本人の安心に繋がるか」を中心に支援方針を共有。外出支援を行い散歩や外気浴を定期的に実施し草花に触れることで生活歴と結びついた安心を提供した。人の少ない時間帯に合わせ回転寿司に外出しスーパーでの買い物を行なった。
【倫理的配慮】
個人が特定されないよう年齢・生活歴・症状は匿名化し必要最小限の情報に留め家族に対し事例報告の趣旨を説明し同意を得た。
【結果】
支援開始から1か月間は不安定な状態が続いたが 「安心できる関わり」「役割の提供」「環境調整」が積み重なることで徐々に以下の変化がみられた。夜間徘徊が減少し睡眠が安定。他者の部屋への誤室や攻撃性が大幅に減少。1か月後、入浴拒否が改善し週2回の入浴が可能となり半年で男性職員の介入も可能になる。他者と一緒に過ごす時間が増えトラブルが減少。学習療法や散歩を通じて人と一緒に活動する姿が見られるようになった。生活リズムが整い日中の活動量が安定し、また表情・コミュニケーションの変化も見られ次第に表情が穏やかになり「来てくれたの?」と笑顔が増加し職員との会話が成立しやすくなった。「ありがとう」「きれいだね」などの言葉が自然に出るようになり行事では幼少期で習った踊りを披露し皆を楽しませる姿も見られた。
家族との関係も当初は面会拒否であったが遠くから様子を見る →声をかける →面会再開と段階的に面会を行ったことにより家族は 「家では顔色が悪く心配していたが顔色もよくビックリした」「別人のように穏やかになった」 「安心してまた面会に来れます」と涙を流して喜ぶ様子が見られた。結果として、症状の大幅な軽減 ・他者との関わりの再獲得 ・家族との関係修復 という大きな成果に繋がった。
【考察】
本症例では重度BPSDがみられ手順中心のケアでは安心感の形成が十分でなかった。しかし (1)カンフォータブルケアによる安心の提供(2)生活歴に基づく役割付与 (3)多職種連携による統一した支援 (4)学習療法・外出支援による成功体験 (5)薬物療法の最適化 (6)家族支援 が相互に作用し本人の安心が得られ社会性が回復したと考える。南氏2)は「認知症でもその時点であるがままの感性で生きていく事」を支えきる事がカンフォータブルケアと明記されている。特に行動の背景にある「不安」「居場所の喪失」を理解すること、本人の生活歴を肯定し役割として活かすことや家族の恐怖心を丁寧に解消し関係修復を支えること がBPSD軽減に大きく影響を与えた。これは認知症ケアにおいて 「行動を問題として捉えるのではなく背景を理解する」 というICFの理念とも一致した。
【結論】
行動の背景には不安・居場所の喪失・生活歴の断絶があったと考えられる。 カンフォータブルケアを中心とした多職種連携支援は重度BPSDを呈する認知症に対して有効であり、安心・安全・環境・役割・家族支援を組み合わせることで社会性の回復が可能であることが示された。
【参考文献】
1)認知症介護実践研修テキスト編集委員会認知症介護 実践研修テキスト
【引用文献】
2)南敦司 認知症介護をするすべての人のためのカンフォータブル・ケア
80代アルツハイマー型認知症の女性は、多様なBPSDが出現し、時に制御困難となる姿から家族に恐怖心が生じ在宅での生活が困難となった。他施設でも馴染めず最終的に当施設へ入所。入所後はカンフォータブルケアを中心に多職種と連携し利用者にとって安心できる環境作りと社会的繋がりの再構築に取り組んだ。その結果、表情が穏やかになり安心した生活が回復。家族との面会も再開できた為、本事例を通じて支援の意義を報告する。
【目的】
強い不安・攻撃性・夜間徘徊など重度のBPSDを呈したアルツハイマー型認知症に対しカンフォータブルケア・学習療法(公文)・外出支援・リハビリ・薬物調整・家族支援を組み合わせたケアを多職種で行なった結果、本人の社会性が回復し家族との関係も改善した経過を明らかにする事を目的とする。カンフォータブルケアとは、快刺激を意識し実践するケア技術である。
【症例】
要介護1、認知症自立度IIIa、アルツハイマー型認知症。20代で結婚し60代で離婚その後は独居生活。 主な介護者は長男の嫁、長男は単身赴任。2022年頃より認知症症状が進行し、嫁に対し威圧的態度をとり嫁の介入も不可能となる。在宅介護が困難な事から施設に入ったが複数の施設生活に馴染めず当施設へ入所した。主な症状として、夜間不眠・徘徊、他者の部屋への誤室、物品破損、睡眠中の他者を起こす行為、草取り・石積みなどの反復動作、入浴拒否(約1か月清拭と入浴不可能)、職員への飛び蹴り・噛みつきがみられた。家族は恐怖心から入所当初より面会拒否であった。これらの行動は本人の不安・孤独・生活歴・環境変化への適応困難が複雑に絡み合っていると考えられた。
【方法】
支援期間2025.2.28~2025.8.31
入所当初より強い不安・混乱・攻撃性がみられた為カンフォータブルケアを中心に、本人の 「安心・安全」「尊厳」「役割」「環境調整」を軸とし多職種で関わりを統一した。具体的な支援内容として、本人の不安を増強させる刺激(大声・急な介入・否定的言葉)を排除し「否定しない・急がせない・奪わない」をチームで徹底した。また目線を合わせ、理解しやすい単語や敬語で接する事で快刺激を言語化する声掛けを行い、視覚刺激だけでなく聴覚刺激によって快刺激が伝わるようにした。本人の生活歴(庭いじり、石を積む常同行動)を尊重し役割として肯定的に扱い、テーブル拭きや掃き掃除を役割として担って頂いた。夜間は見守りの強化と安心できる声掛け、環境調整を行った。またタッチング・手を繋ぐ・視線を合わせるといった動作で安心感を得た。これはユマニチュードの考え方にも共通する。多職種で毎週カンファレンスを行い「何が本人の安心に繋がるか」を中心に支援方針を共有。外出支援を行い散歩や外気浴を定期的に実施し草花に触れることで生活歴と結びついた安心を提供した。人の少ない時間帯に合わせ回転寿司に外出しスーパーでの買い物を行なった。
【倫理的配慮】
個人が特定されないよう年齢・生活歴・症状は匿名化し必要最小限の情報に留め家族に対し事例報告の趣旨を説明し同意を得た。
【結果】
支援開始から1か月間は不安定な状態が続いたが 「安心できる関わり」「役割の提供」「環境調整」が積み重なることで徐々に以下の変化がみられた。夜間徘徊が減少し睡眠が安定。他者の部屋への誤室や攻撃性が大幅に減少。1か月後、入浴拒否が改善し週2回の入浴が可能となり半年で男性職員の介入も可能になる。他者と一緒に過ごす時間が増えトラブルが減少。学習療法や散歩を通じて人と一緒に活動する姿が見られるようになった。生活リズムが整い日中の活動量が安定し、また表情・コミュニケーションの変化も見られ次第に表情が穏やかになり「来てくれたの?」と笑顔が増加し職員との会話が成立しやすくなった。「ありがとう」「きれいだね」などの言葉が自然に出るようになり行事では幼少期で習った踊りを披露し皆を楽しませる姿も見られた。
家族との関係も当初は面会拒否であったが遠くから様子を見る →声をかける →面会再開と段階的に面会を行ったことにより家族は 「家では顔色が悪く心配していたが顔色もよくビックリした」「別人のように穏やかになった」 「安心してまた面会に来れます」と涙を流して喜ぶ様子が見られた。結果として、症状の大幅な軽減 ・他者との関わりの再獲得 ・家族との関係修復 という大きな成果に繋がった。
【考察】
本症例では重度BPSDがみられ手順中心のケアでは安心感の形成が十分でなかった。しかし (1)カンフォータブルケアによる安心の提供(2)生活歴に基づく役割付与 (3)多職種連携による統一した支援 (4)学習療法・外出支援による成功体験 (5)薬物療法の最適化 (6)家族支援 が相互に作用し本人の安心が得られ社会性が回復したと考える。南氏2)は「認知症でもその時点であるがままの感性で生きていく事」を支えきる事がカンフォータブルケアと明記されている。特に行動の背景にある「不安」「居場所の喪失」を理解すること、本人の生活歴を肯定し役割として活かすことや家族の恐怖心を丁寧に解消し関係修復を支えること がBPSD軽減に大きく影響を与えた。これは認知症ケアにおいて 「行動を問題として捉えるのではなく背景を理解する」 というICFの理念とも一致した。
【結論】
行動の背景には不安・居場所の喪失・生活歴の断絶があったと考えられる。 カンフォータブルケアを中心とした多職種連携支援は重度BPSDを呈する認知症に対して有効であり、安心・安全・環境・役割・家族支援を組み合わせることで社会性の回復が可能であることが示された。
【参考文献】
1)認知症介護実践研修テキスト編集委員会認知症介護 実践研修テキスト
【引用文献】
2)南敦司 認知症介護をするすべての人のためのカンフォータブル・ケア
