講演情報
[22-O-L010-02]栄養状態と身体状況の関連
*芝崎 由貴1、越智 久雄1、桝田 直子1、田中 仁2 (奈良県 1. 医療法人紀川会介護老人保健施設もののみの郷、2. 株式会社ルピナス)
【はじめに】今回介護老人保健施設入所者の栄養状態と身体状況の関連を調査分析した。栄養障害の程度が日常生活活動(Activities of Daily Living:以下ADLと略す)や身体機能の重症度に関係があると仮定すると、栄養障害の有無がADLや身体機能に影響があるかを調査することで、運動のみに注目するのではなく、栄養状態にも注目する必要があることが理解できる。今回、入所者の栄養状態の評価と身体状況の関係を明らかにする目的で後ろ向き研究において調査を実施した。
【対象者】対象者は、介護老人保健施設もののみの郷に令和8年4月30日現在入所している男性23名、女性63名合計86名(平均年齢88.0±6.0歳)であった。
【方法】対象者に対して基本情報として、年齢、性別、介護度、身長、体重、握力、血清Alb値(g/dL)を調査した。栄養状態を把握するため栄養指標としてGeriatric Nutritional Risk Index(以下GNRIと略す)とBody Mass Index(以下BMIと略す)を算出した。算出したGNRIの数値は重度栄養障害(<82)、中等度栄養障害(82~<92)、軽度栄養障害(92~<98)、栄養状態良好(≧98)の4区分に分類し、以下の身体状況と比較検討した。身体状況として、握力、ADL指標としてBarthel Index(以下BIと略す)、血清Alb値からGNRIを評価、算出した。GNRIの結果から栄養状態より4群間に分類した。統計学的処理は、Kruskal-Wallis H-testを実施し、有意水準5%以下を有意差ありとした。有意差が認められた場合には、Mann-Whitney U-test with Bonferroni correctionで4群間に分類した群間を多重比較し、有意水準5%以下を有意差ありとした。
【結果】1.GNRIの重症度 重度栄養障害17名(19%)、中等度栄養障害30名(35%)、軽度栄養障害24名(28%)、栄養状態良好15名(17%)で、軽度から重度の栄養障害を有している入所者が71名(83%)存在していた。2.栄養障害の程度と身体状況の関連 握力の平均値については、重度栄養障害9.3±8.1㎏、中等度栄養障害12.4±7.0㎏、軽度栄養障害11.3±6.7㎏、栄養状態良好15.2±6.3㎏で重度栄養障害と栄養状態良好の群間に有意差を認めた。BIの平均値については、重度栄養障害45.8±20.9、中等度栄養障害63.8±19.8、軽度栄養障害62.2±20.1、栄養状態良好75.0±14.9で重度栄養障害、中等度栄養障害、軽度栄養障害と栄養状態良好の群間に有意差を認めた。BMIの平均値については、重度栄養障害17.6±1.7、中等度栄養障害19.5±2.5、軽度栄養障害21.4±4.6、栄養状態良好24.6±2.9で重度栄養障害、中等度栄養障害、軽度栄養障害と栄養状態良好の群間に有意差を認めた。血清Alb値の平均値については、重度栄養障害2.86±0.75、中等度栄養障害3.43±0.35、軽度栄養障害3.67±0.36、栄養状態良好3.88±0.33で重度栄養障害、中等度栄養障害と栄養状態良好の群間に有意差を認めた。
【考察】介護老人保健施設もののみの郷入所者の栄養障害の実態を調査した結果、軽度から重度の栄養障害を有している入所者が83%に認められた。栄養障害において死亡率が高くなるとされるGNRI<92の中等度栄養障害と重度栄養障害では、入所者の54%が該当した。先行研究で、介護老人保健施設とは病期は異なるが、回復期リハビリテーション病棟では、栄養状態を改善させ、体重やBMIを維持・改善することによって患者のADLが改善することが報告されている。BMIについては、18.5未満の「やせ」は短命という報告がある。今回の結果でも、重度栄養障害群は平均値17.6±1.7で18.5を下回っている。重度栄養障害群について早期に栄養障害を解決しなければならないことが考えられた。今回の調査でも、ADLの指標であるBIにおいて栄養状態良好群と、栄養障害各群との間に有意差を認めた。栄養障害が進行するとBIの点数も低くなる傾向が認められた。そのため、栄養状態を改善させることによりADLが改善することが示唆された。また、握力に関しても栄養状態良好群と重度栄養障害群の間に有意差が認められた。握力に関しては、握力は四肢体幹の筋力に相関が高いことが報告されている。栄養障害が進行すると握力の低下が認められるため、同時に四肢体幹の筋力低下が進行している可能性が考えられ、その影響でADLの低下を引き起こしている可能性が示唆された。以上により、栄養障害の程度とADLや身体機能の関係が明らかになり、今後、栄養状態に注目して、栄養と運動をしっかり取り入れて、四肢体幹の筋力を改善し、ADLを向上していく必要性が示唆された。栄養状態を改善させるためには、摂取エネルギー量だけを考慮するのではなく、蛋白質の摂取量にも配慮する必要がある。先行研究では、運動のみ実施する群と、運動に分岐鎖アミノ酸(br/anched Chain Amino Acids:以下BCAAと略す)含有の栄養補助食品を併用する群を骨格筋量、栄養指標、ADLに及ぼす影響について検討した研究では、運動とBCAA含有の栄養補助食品の併用が下肢周囲長とADLについて、運動のみ実施する群と比較して有意に改善しているという報告がある。BCAAとは、必須アミノ酸の中、パリン、ロイシン、イソシンの3種類のアミノ酸で、筋肉のエネルギー代謝や合成などに深く関わると考えられている。このような事から、食事摂取量や摂取カロリー量のチェックから、食事内容の見直しや、蛋白質摂取など栄養素の確認や、BCAA含有の栄養補助食品の導入の必要性などを判断していかなければならないことが、今後の課題となる。
【倫理的配慮】本調査はヘルシンキ宣言に基づき医療法人紀川会研究倫理委員会の承認を得て実施した。
【対象者】対象者は、介護老人保健施設もののみの郷に令和8年4月30日現在入所している男性23名、女性63名合計86名(平均年齢88.0±6.0歳)であった。
【方法】対象者に対して基本情報として、年齢、性別、介護度、身長、体重、握力、血清Alb値(g/dL)を調査した。栄養状態を把握するため栄養指標としてGeriatric Nutritional Risk Index(以下GNRIと略す)とBody Mass Index(以下BMIと略す)を算出した。算出したGNRIの数値は重度栄養障害(<82)、中等度栄養障害(82~<92)、軽度栄養障害(92~<98)、栄養状態良好(≧98)の4区分に分類し、以下の身体状況と比較検討した。身体状況として、握力、ADL指標としてBarthel Index(以下BIと略す)、血清Alb値からGNRIを評価、算出した。GNRIの結果から栄養状態より4群間に分類した。統計学的処理は、Kruskal-Wallis H-testを実施し、有意水準5%以下を有意差ありとした。有意差が認められた場合には、Mann-Whitney U-test with Bonferroni correctionで4群間に分類した群間を多重比較し、有意水準5%以下を有意差ありとした。
【結果】1.GNRIの重症度 重度栄養障害17名(19%)、中等度栄養障害30名(35%)、軽度栄養障害24名(28%)、栄養状態良好15名(17%)で、軽度から重度の栄養障害を有している入所者が71名(83%)存在していた。2.栄養障害の程度と身体状況の関連 握力の平均値については、重度栄養障害9.3±8.1㎏、中等度栄養障害12.4±7.0㎏、軽度栄養障害11.3±6.7㎏、栄養状態良好15.2±6.3㎏で重度栄養障害と栄養状態良好の群間に有意差を認めた。BIの平均値については、重度栄養障害45.8±20.9、中等度栄養障害63.8±19.8、軽度栄養障害62.2±20.1、栄養状態良好75.0±14.9で重度栄養障害、中等度栄養障害、軽度栄養障害と栄養状態良好の群間に有意差を認めた。BMIの平均値については、重度栄養障害17.6±1.7、中等度栄養障害19.5±2.5、軽度栄養障害21.4±4.6、栄養状態良好24.6±2.9で重度栄養障害、中等度栄養障害、軽度栄養障害と栄養状態良好の群間に有意差を認めた。血清Alb値の平均値については、重度栄養障害2.86±0.75、中等度栄養障害3.43±0.35、軽度栄養障害3.67±0.36、栄養状態良好3.88±0.33で重度栄養障害、中等度栄養障害と栄養状態良好の群間に有意差を認めた。
【考察】介護老人保健施設もののみの郷入所者の栄養障害の実態を調査した結果、軽度から重度の栄養障害を有している入所者が83%に認められた。栄養障害において死亡率が高くなるとされるGNRI<92の中等度栄養障害と重度栄養障害では、入所者の54%が該当した。先行研究で、介護老人保健施設とは病期は異なるが、回復期リハビリテーション病棟では、栄養状態を改善させ、体重やBMIを維持・改善することによって患者のADLが改善することが報告されている。BMIについては、18.5未満の「やせ」は短命という報告がある。今回の結果でも、重度栄養障害群は平均値17.6±1.7で18.5を下回っている。重度栄養障害群について早期に栄養障害を解決しなければならないことが考えられた。今回の調査でも、ADLの指標であるBIにおいて栄養状態良好群と、栄養障害各群との間に有意差を認めた。栄養障害が進行するとBIの点数も低くなる傾向が認められた。そのため、栄養状態を改善させることによりADLが改善することが示唆された。また、握力に関しても栄養状態良好群と重度栄養障害群の間に有意差が認められた。握力に関しては、握力は四肢体幹の筋力に相関が高いことが報告されている。栄養障害が進行すると握力の低下が認められるため、同時に四肢体幹の筋力低下が進行している可能性が考えられ、その影響でADLの低下を引き起こしている可能性が示唆された。以上により、栄養障害の程度とADLや身体機能の関係が明らかになり、今後、栄養状態に注目して、栄養と運動をしっかり取り入れて、四肢体幹の筋力を改善し、ADLを向上していく必要性が示唆された。栄養状態を改善させるためには、摂取エネルギー量だけを考慮するのではなく、蛋白質の摂取量にも配慮する必要がある。先行研究では、運動のみ実施する群と、運動に分岐鎖アミノ酸(br/anched Chain Amino Acids:以下BCAAと略す)含有の栄養補助食品を併用する群を骨格筋量、栄養指標、ADLに及ぼす影響について検討した研究では、運動とBCAA含有の栄養補助食品の併用が下肢周囲長とADLについて、運動のみ実施する群と比較して有意に改善しているという報告がある。BCAAとは、必須アミノ酸の中、パリン、ロイシン、イソシンの3種類のアミノ酸で、筋肉のエネルギー代謝や合成などに深く関わると考えられている。このような事から、食事摂取量や摂取カロリー量のチェックから、食事内容の見直しや、蛋白質摂取など栄養素の確認や、BCAA含有の栄養補助食品の導入の必要性などを判断していかなければならないことが、今後の課題となる。
【倫理的配慮】本調査はヘルシンキ宣言に基づき医療法人紀川会研究倫理委員会の承認を得て実施した。
