講演情報

[23-P-CMO-02]新型コロナウイルス感染症の経験重症化要因の検討

*織田 道広1、永金 知臣1、岩川 千津恵1、山口 浩司1、川山 健1、宮本 宣義2 (岡山県 1. 恵風苑、2. 宮本整形外科病院)
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【はじめに】当施設は、岡山県岡山市にある入所180床・通所40名の老健施設である。2025年12月までに、延べ人数で、入所者123名の新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)発症者が確認されている。今回、入所者におけるCOVID-19の検討を行ったので報告する。
【目的】入所者におけるCOVID-19の経過を検討することによって、重症化する要因を明らかにすることを研究目的とする。
【対象・方法】対象は、2022年4月から2025年12月の期間において、延べ人数で、入所者123名のCOVID-19発症者とした。尚、対象者はすべて、新型コロナウイルス(以下SARS-CoV-2)のオミクロン変異株の感染である。
方法は、感染者・入院者・死亡者のそれぞれに対して、性別・年齢・要介護度・高リスク因子数・BMI・ワクチン接種回数・治療法を調査し、統計学的解析を実施した。統計解析にはEZR(ver.4.5.2フリーソフトウェア)を用い、入院率と死亡率に対して、名義尺度にはFisher正確確率検定、比例尺度にはMann-Whitney U検定を用い、一定の傾向を示した順序尺度には、Cochran-Armitage傾向検定を追加した。有意水準は5%未満とした。
【結果】COVID-19の中で入院者は34名で、入院者の中で死亡者は8名であった。尚、入院者は、感染後に食思低下などの症状が続き、その後に改善することなく肺炎・低酸素血症・腎盂腎炎などを引き起こし入院した者すべてとした。
統計学的解析の結果を以下に示す。性別では、入院率・死亡率とも男性が高かったが、有意差は認められなかった。年齢では、入院群と非入院群・死亡群と生存群で年齢による有意差は認められなかったが、死亡群の方が生存群より平均年齢は高かった。要介護度では、入院率は要介護度が高いほど上昇していた。Fisher正確確率検定では有意差は認められなかったが、Cochran-Armitage傾向検定では有意差を認めた。死亡率は、有意差は認められなかった。高リスク因子数では、入院率は、有意差は認められなかった。死亡率は高リスク因子数が3個までは多いほど上昇していたが、Fisher正確確率検定・Cochran-Armitage傾向検定ともに、有意差は認められなかった。BMIでは、入院率は普通体重群より低体重群と肥満(1度)群が高かったが、有意差は認められなかった。死亡率は普通体重群より低体重群が高く、肥満(1度)群が低かったが、有意差は認められなかった。ワクチン接種回数では、入院率は、非接種群と接種群(1~7回接種)では非接種群が高く、有意差を認めた。死亡率は、4回接種群が最も高かったが、非接種群と接種群(1~7回接種)では有意差は認められなかった。治療法では、入院率はエンシトレルビルフマル酸が最も低く、死亡率は中和抗体とエンシトレルビルフマル酸が最も低かったが、有意差は認められなかった。
【考察】本研究において、性別では、有意差は認められなかったが、入院率・死亡率とも男性が高かった。複数のメタアナリシスにより、COVID-19における男性の重症化・死亡リスクは女性より高いことが報告されている。年齢では、有意差は認められなかったが、今回の症例はすべて65歳以上の高齢であり、高齢はCOVID-19の重症化における最も重要なリスク因子とされている。要介護度では、入院率は要介護度が高いほど上昇する傾向があり、コクラン・アーミテージの傾向検定では有意差を認めた。一方、死亡率は、有意差は認められなかった。要介護度が高いということは、身体的虚弱がより進行している状態と捉えることができる。そのため、ひとたび感染症に罹患した場合には、要介護度が高いほど重症化しやすく、結果として入院に至る可能性が高くなると考えられる。また、適度な強度での運動は、免疫系を改善することは知られており、日頃からの継続的なリハビリテーションの実施が重要であると考える。高リスク因子数では、入院率は、有意差は認められなかった。一方、死亡率は高リスク因子数が3個までは多いほど上昇する傾向があるが、有意差は認められなかった。症例数が限られていることが影響している可能性はあるが、高齢に加え、複数の基礎疾患がCOVID-19の重症化リスクを高めることは報告されている。BMIでは、有意差は認められなかったが、低体重群は入院率と死亡率ともに高かった。低栄養による免疫能の低下は生体内のタンパク質の減少に大きく影響されるので、前もって身体の栄養状態を高め、常に十分な免疫力を維持しておくことが肝要であると言われている。重症化リスク因子には肥満は含まれているが、低体重も重症化リスク因子になりうる可能性が示唆された。ワクチン接種回数では、SARS-CoV-2に対するワクチン未接種は、アウトカムとしての入院や死亡などのリスクが増大すると報告されているが、今回、入院率は、非接種群と接種群(1~7回接種)では非接種群が高く、有意差を認めたが、死亡率は、4回接種群が最も高く、非接種群と接種群(1~7回接種)で有意差は認められなかった。治療法では、有意差は認められなかったが、それぞれの抗ウイルス薬の特性を踏まえた上で、早期に使用することは予後の改善に役立つと考えられる。
今回、5人以上に感染が拡大したクラスターは9回に及んだが、入所者感染率は、平均8.5%(3.3~15.2%)で、階を超えての感染拡大は1例のみであった。感染時に、各ユニットでゾーニングを行い、エレベーター1基を感染が生じた階の専用として動線の固定が可能であっことが、要因の一つと考える。
【終わりに】全世界において、2025年2月2日の時点で、SARS-CoV-2の累積感染者数は777,454,971人、累積死亡者数には7,088,612人であり、天文学的数字となっている。
今回の研究で、COVID-19による重症化を予防するためには、日頃から、利用者への継続的なリハビリテーションにより身体機能の維持・向上を図り、適切な栄養状態を維持し、免疫力を高めることの重要性が示唆された。