講演情報

[22-O-L005-03]カナダ作業遂行測定を用いた在宅支援への取り組み

*川見 結萌美、野元 麻里、米田 正樹 (兵庫県 公立八鹿病院老人保健施設)
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【はじめに】
心不全増悪、蜂窩織炎の診断で入院し、独居困難のため直接当施設入所となった90代男性を担当した。本人の強い希望により退所日が早まり介入に難渋したが、カナダ作業遂行測定(以下COPM)を用いてプログラムを再調整し、在宅支援に繋げた症例を経験したので以下に報告する。
【倫理的配慮】
本報告にあたり、個人情報およびプライバシーの保護に最大限配慮し、ご本人、ご家族に口頭にて発表の趣旨を説明し同意を得た。
【目的】
COPMを用いた作業療法実施によって在宅支援が円滑に行えるかを検証した。
【対象】
A氏:90代男性
診断名:心不全増悪、蜂窩織炎
既往歴:不整脈、圧迫骨折、腰部脊柱管狭窄症、脳静脈瘤、前立腺肥大、貧血、高血圧、頻尿
主訴:早く家に帰りたい。歩行器を使ってでも歩きたい。
介護度:要介護3
障害高齢者の日常生活自立度:B1  認知症高齢者の日常生活自立度:1
【方法】
1.対象症例に対し、COPMを用いた介入を行う
2.COPMの点数の変化を比較し検討する
【経過】
X: 退院 老健入所
X+1:入所後訪問実施
X+21:「明後日に帰る」との発言があったとの情報あり家人にリハビリ継続の必要性を説明し相談員がケアマネジャーと退所日調整実施
X+30:退所日が早まりX+32に決定となる
X+32:退所
X+38:退所後訪問実施
【結果】
脈拍は動作時に36-43回/分と徐脈になる傾向で結代もみられる状態であった。しかし最終評価では動作時52-73回/分となり、結代はみられなくなった。痛みはNRS7/10から3/10に軽減した。TUGは33秒38から31秒62に短縮し、歩行車歩行は見守りにて安全に実施でき、歩行車操作も自身で可能となった。BIでは段差昇降が実施できるようになったことで75点から80点に向上し、入浴動作を想定したまたぎ動作はふらつきなく、低い座面からの起立動作も支持物を把持しながら可能となった。COPMの結果は(1)屋内は歩行器を使用して歩くは重要度8/10で遂行度は5→8、満足度は2→8に向上した。(2)歩行後椅子に座るは重要度6/10で遂行度は2→8、満足度1→8に向上した。(3)家のお風呂に入るは重要度6/10で遂行度は1→1、満足度は1→1と変化はみられなかった。しかし、「家に帰ったらできると思う」などと前向きな発言がみられた。
【考察】
今回、入所時より帰宅願望が強く退所日が予定より早くなると予測された利用者を担当した。利用者の在宅復帰に向け、有効な在宅支援とそのための作業療法プログラムを立案するために、今回COPMを用いて作業療法を行うこととした。入所当初は膝痛や徐脈により積極的なリハビリの実施が困難であったが、徐々に状態や意欲が向上したため、COPMで聴取した希望を参考にし、段階づけて介入を行った。そのなかでも、重要度が8/10と高く、主訴でもあった「歩行」に対しての介入を優先する必要があると考え、歩行車歩行練習に追加して、伝い歩き練習や側方歩行練習を実施した。そして重要度が歩行と同じ8/10と高かった歩行後の着座についても自信をもって行えるように、椅子の肘置きを持ちゆっくりと座る練習を行った。実際に入所時と退所時のCOPMの結果を比較すると、すべての動作で改善を認め点数の向上もみられた。そして次に重要度が6/10と高かった「入浴」に対しても介入が必要だと考え、動作練習として浴槽内椅子から立つことを想定した低い座面からの起立練習や浴槽のまたぎ動作練習を実施した。動作練習を繰り返すことで徐々に慣れる様子があり、起立の安定感が増し、またぎ動作時のひっかかりも減っていったが、COPMの結果は“家で”という目標であったため、退所時の評価では遂行度1、満足度1と向上はみられなかった。しかし「心配事はない」「家に帰ったらできると思うから8かな」という前向きな発言や退所後に入浴ができたとの情報を得た。今回COPMを使用したことで、度合いが定量化され、生活する上でどの程度対象者がその動作を重要視しているのか、満足しているのかがわかりやすいこと、対象者が自分の遂行度合いを振り返りやすいこと、セラピスト側が何にアプローチすれば良いのか優先順位をつけやすいことが利点として考えられた。鈴木らは「COPMを用いた面接は大切な作業に焦点をあてた目標設定およびプログラム立案に有効であった」と述べている。このことからも限られた時間ではあったが、A氏の希望をCOPMにて聴取したことで実現に向けての介入が実施できたと考える。一方で対象者によっては現在の状態を点数化することが難しい場合があるため、しっかりと理解を得られた状態で使用する必要があると考える。また今回「歩行」という抽象的な内容であったため、今後使用するときや相手のことを知るためには、より具体的に何を目的として歩行をしたいのかというところまで聴取し介入する必要があると考える。本症例を通して、A氏にとって重要度の高い歩行と入浴動作に対してのアプローチができ、COPMの点数も向上していたことから、自信がつきQOL向上に繋がったと考える。今後の課題として、希望を聴取し目的を具体的に定め早期から介入することや訪問時に詳細な情報を得ておくこと、他職種と情報を共有しておくことが挙げられた。そのため、今回学んだことを今後十分に活かし、利用者や利用者家族と関わり、他職種とも連携していけるようにしたい。