講演情報
[22-O-L004-04]訪問リハビリテーションが社会参加に寄与した一症例~就労継続支援B型利用に至る生活再構築の過程~
*石本 昭仁、秀嶋 敏和 (長崎県 医療法人 和光会 介護老人保健施設 恵仁荘)
【はじめに】
訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)は身体機能の改善のみに留まらず,本人の価値観や喪失体験に寄り添い,活動を参加へ繋げる役割を担う.しかし,就労喪失後の心理的支援や社会参加への橋渡しに関する報告は少ない.今回,脳梗塞を機に失業した本症例に対する支援経過を報告する.
【症例紹介】
60歳代男性.妻と2人暮らし.病前は内装業を個人経営.右MCA領域の梗塞を発症後,5ヵ月の入院加療を経て自宅退院.要介護2.訪問リハを週2回,半日デイサービス週3回開始となった.
【初期評価】
br/s(左):Ⅲ-Ⅲ-Ⅳ.Barthel Index:100/100. Frenchay ActivitiesIndex(以下,FAI):5/45. Life Space Assessment(以下,LSA):31/120.主観的生活満足度(NRS):2/10.ADLに支障をきたす高次脳機能障害はみられなかったが,回復期病院にて注意障害により運転を控えるよう説明されていた.
【経過】
第一期「生活安定期」(開始~6ヵ月)
屋外歩行能力向上と自主練習確立を目的に介入開始.身体機能は緩徐に改善するも,生活範囲は限定的で,趣味活動や家事参加への意欲は低下していた.障害者手帳取得を契機に,就労支援や社会参加の情報提供を開始.初期は就労継続支援B型(以下,B型)の見学には「片手では何もできない!」「転んだら迷惑をかける!」と消極的であったため,受容的な態度で支援した.
第二期「運転再開支援期」(6~18ヵ月)
本人の強い希望により,車の運転再開を目標に高次脳機能課題やパソコンにて危険予測トレーニング等を実施.最終的に医師より運転再開は困難と判断され,免許取消となったことで抑うつ的発言や活動性低下が顕著となった.代替手段としてバスの利用を練習し,「できることを探す」視点への転換を支援した.
第三期「B型への橋渡し期」(18~26ヵ月)
1人でバスに乗ってパチンコに行くようになり「パチンコ代を少し稼いでみようかな」等,就労に対して意欲的な発言が聞かれた.社会参加を目標に,ケアマネジャーと連携してB型の見学を実施.複数の施設見学後,B型を週3回半日から開始.開始時にはB型を訪問し,管理者に本人の能力や性格,病前の仕事など伝え,連携を図った.
第四期「就労定着期」(26~32ヵ月)
機器の解体作業に自分の工具を持参したり,解体方法について提案するなど主体的に参加する姿がみられた.B型利用開始2ヵ月後には腰痛が見られ,管理者と対策について相談した.B型を休む事もなく,安定した利用ができるようになったため開始6ヵ月後に訪問リハは終了した.
【結果】
訪問リハ終了時,要支援2.FAIは5点から13点,LSAは31点から72点,NRSは2から6へ改善した.また,訪問リハを終了して約3年後,週5回の1日利用に増え,解体した部品から雑貨を作り,商品化に向けて主体的に活動する姿や笑顔が見られた.
【考察・まとめ】
社会参加がQOLに影響することは先行研究でも示されており¹⁾,本症例でもB型を通した社会参加拡大に伴い,FAIおよびLSAの向上と主観的満足度の向上が認められた.仕事が生きがいだった方が,疾病により突然失業する事の喪失感は計り知れない.「できないこと」への固執から「できること」への視点転換には時間を要する場合がある.疾病により役割を喪失した症例に対し,訪問リハが長期的に寄り添いながら意思決定を支援し,障害福祉サービスへと繋ぐ橋渡しの役割を担うことの重要性が示唆された.
【倫理的配慮】
発表に関し,個人情報の扱いについて十分説明し,本人の同意を得た.
【参考文献】
杉本香苗,他:総合リハ「脳卒中生活期QOL向上に向けて」2025Vol.53 155‐161
訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)は身体機能の改善のみに留まらず,本人の価値観や喪失体験に寄り添い,活動を参加へ繋げる役割を担う.しかし,就労喪失後の心理的支援や社会参加への橋渡しに関する報告は少ない.今回,脳梗塞を機に失業した本症例に対する支援経過を報告する.
【症例紹介】
60歳代男性.妻と2人暮らし.病前は内装業を個人経営.右MCA領域の梗塞を発症後,5ヵ月の入院加療を経て自宅退院.要介護2.訪問リハを週2回,半日デイサービス週3回開始となった.
【初期評価】
br/s(左):Ⅲ-Ⅲ-Ⅳ.Barthel Index:100/100. Frenchay ActivitiesIndex(以下,FAI):5/45. Life Space Assessment(以下,LSA):31/120.主観的生活満足度(NRS):2/10.ADLに支障をきたす高次脳機能障害はみられなかったが,回復期病院にて注意障害により運転を控えるよう説明されていた.
【経過】
第一期「生活安定期」(開始~6ヵ月)
屋外歩行能力向上と自主練習確立を目的に介入開始.身体機能は緩徐に改善するも,生活範囲は限定的で,趣味活動や家事参加への意欲は低下していた.障害者手帳取得を契機に,就労支援や社会参加の情報提供を開始.初期は就労継続支援B型(以下,B型)の見学には「片手では何もできない!」「転んだら迷惑をかける!」と消極的であったため,受容的な態度で支援した.
第二期「運転再開支援期」(6~18ヵ月)
本人の強い希望により,車の運転再開を目標に高次脳機能課題やパソコンにて危険予測トレーニング等を実施.最終的に医師より運転再開は困難と判断され,免許取消となったことで抑うつ的発言や活動性低下が顕著となった.代替手段としてバスの利用を練習し,「できることを探す」視点への転換を支援した.
第三期「B型への橋渡し期」(18~26ヵ月)
1人でバスに乗ってパチンコに行くようになり「パチンコ代を少し稼いでみようかな」等,就労に対して意欲的な発言が聞かれた.社会参加を目標に,ケアマネジャーと連携してB型の見学を実施.複数の施設見学後,B型を週3回半日から開始.開始時にはB型を訪問し,管理者に本人の能力や性格,病前の仕事など伝え,連携を図った.
第四期「就労定着期」(26~32ヵ月)
機器の解体作業に自分の工具を持参したり,解体方法について提案するなど主体的に参加する姿がみられた.B型利用開始2ヵ月後には腰痛が見られ,管理者と対策について相談した.B型を休む事もなく,安定した利用ができるようになったため開始6ヵ月後に訪問リハは終了した.
【結果】
訪問リハ終了時,要支援2.FAIは5点から13点,LSAは31点から72点,NRSは2から6へ改善した.また,訪問リハを終了して約3年後,週5回の1日利用に増え,解体した部品から雑貨を作り,商品化に向けて主体的に活動する姿や笑顔が見られた.
【考察・まとめ】
社会参加がQOLに影響することは先行研究でも示されており¹⁾,本症例でもB型を通した社会参加拡大に伴い,FAIおよびLSAの向上と主観的満足度の向上が認められた.仕事が生きがいだった方が,疾病により突然失業する事の喪失感は計り知れない.「できないこと」への固執から「できること」への視点転換には時間を要する場合がある.疾病により役割を喪失した症例に対し,訪問リハが長期的に寄り添いながら意思決定を支援し,障害福祉サービスへと繋ぐ橋渡しの役割を担うことの重要性が示唆された.
【倫理的配慮】
発表に関し,個人情報の扱いについて十分説明し,本人の同意を得た.
【参考文献】
杉本香苗,他:総合リハ「脳卒中生活期QOL向上に向けて」2025Vol.53 155‐161
