講演情報
[22-O-J003-07]介護系施設間の連携に向けた摂食嚥下機能評価の標準化
*柴田 智絵1、嶋吉 晃宏2、南 佳子2 (大阪府 1. 介護老人保健施設 ベルアモール、2. 特別養護老人ホーム ベルファミリア)
【はじめに】当施設では2017年より経口維持加算の算定を開始し、現在は経口維持加算(Ⅰ)(Ⅱ)を算定している。経口維持加算は、認知機能や嚥下機能が低下した高齢者に対し、誤嚥リスクを抱えながらも、多職種協働による口腔ケアや食事環境調整を行い、可能な限り「口から食べる喜び」を継続することを目的としている。そのためには、多職種連携による支援体制の充実が不可欠である。【目的】社会医療法人生長会・社会福祉法人悠人会は多数の病院および高齢者施設を有する法人であり、2026年度は「部分最適から全体最適へ」を行動指針目標に掲げている。しかし、同一法人内であっても施設ごとに書式や運用方法が異なり、十分な連携が図れているとは言い難い状況であった。当施設においても、近隣の同法人である特別養護老人ホーム(以下、特養)へ入居者が転居するケースが少なくないが、これまで嚥下状態に関する情報共有は十分ではなかった。そこで、利用者の摂食嚥下機能の維持・向上を図るために、法人内施設との連携を円滑にし、誰が評価しても同じ視点で判断できる評価表の標準化に取り組んだので報告する。【取り組み内容】誰が評価しても同じ視点で判断できる評価表を標準化するために「評価項目の統一」「判断基準の明確化」「運用ルールの統一」に取り組んだ。1.評価項目の統一
まず、同法人特養との連携強化を目的に、評価表の統一を検討した。特養では言語聴覚士、歯科衛生士が不在であり、管理栄養士と作業療法士が中心となって嚥下回診を実施している。専門職による評価の視点の違い等から、当施設で使用しているKTバランスチャートへの統一は困難と考えられた。また、当施設では経口維持加算算定者の増加に伴い、嚥下回診に要する時間が増加していること、KTチャートを確認しながら上手く支援につなげていないことが問題となっていた。そこで特養職員と協議した結果、両施設で共通して使用している介護福祉ソフト内の評価である『摂食・嚥下機能評価(22項目)』を活用する方針とした。2.判断基準の明確化
次に、『摂食・嚥下機能評価(22項目)』を参考に評価表を作成した。評価者間のばらつきを軽減するため、各項目は可能な限り具体的かつ簡潔な表現とし、欄外に注釈を付記した。例えば、評価項目の「上半身が左右や前後に傾き、座位保持が困難である」は「リクライニング車椅子使用している」とし、「車椅子でもクッションによる姿勢調整を行っている場合を含む」と注釈を加えた。また、評価項目の「固いものを避け軟らかいものばかり食べる」は「軟菜食以下を食べている」とし、食事形態が一目で分かるよう氏名欄を食札と同じ色で表示するなどの工夫を行った。3.運用ルールの統一
評価項目は職種別に担当を分け、介護士8項目、リハビリ職員1項目、歯科衛生士4項目、管理栄養士3項目、看護師2項目、言語聴覚士4項目に加え、水飲みテストを実施し点数化した。さらに、職種ごとに色分けを行い、各職種が確認すべき項目を明確化した。また、「困りごと」を記載する欄を設け、多職種で検討すべき課題を共有できるようにした。【結果】新しい評価表を用いて嚥下回診を開始した結果、事前に多職種で評価を完成させたうえで、問題のある利用者や変更が必要な利用者を中心に回診を実施できるようになった。これにより、嚥下回診に要する時間は導入前75分から導入後45分へ短縮した。また、経口維持加算算定者94名中15名(約16%)において、評価内容の情報共有が円滑に行えた。各職種からは、「評価すべき視点が明確になった」「多職種間での相談がしやすくなった」などの意見が得られた。【考察】今回、評価表を統一し、共通の視点で情報共有を行える体制を整備したことで、施設間連携の強化につながったと考える。特に、言語聴覚士不在の施設でも運用可能な評価方法としたことで、専門職配置の違いに左右されにくい連携体制を構築できた点は有用であった。また、評価項目を簡潔かつ視覚的に分かりやすく整理したことで、多職種がそれぞれの役割を理解しやすくなり、嚥下回診の効率化や課題抽出の迅速化につながったと考える。加えて、「困りごと」欄を設けたことで、従来は表出されにくかった現場の気付きや不安を共有しやすくなり、多職種カンファレンスの質向上にも寄与したと考えられる。さらに、法人内で評価方法を統一したことは、利用者の継続的支援だけでなく、職員異動時の業務標準化や教育負担軽減にも有効であった。今後は、嚥下回診に限らず、法人内施設全体で統一した評価・支援体制を構築し、「部分最適から全体最適へ」の実現を目指していきたい。【まとめ】本取り組みにより、当施設から特養へ転居する際の情報共有が円滑となり、転居後も継続した嚥下支援が可能となった。また、評価方法の統一により、多職種連携の強化および業務標準化にもつながった。今後も法人内連携を強化し、継続的かつ質の高い嚥下支援体制の構築を目指していく。
まず、同法人特養との連携強化を目的に、評価表の統一を検討した。特養では言語聴覚士、歯科衛生士が不在であり、管理栄養士と作業療法士が中心となって嚥下回診を実施している。専門職による評価の視点の違い等から、当施設で使用しているKTバランスチャートへの統一は困難と考えられた。また、当施設では経口維持加算算定者の増加に伴い、嚥下回診に要する時間が増加していること、KTチャートを確認しながら上手く支援につなげていないことが問題となっていた。そこで特養職員と協議した結果、両施設で共通して使用している介護福祉ソフト内の評価である『摂食・嚥下機能評価(22項目)』を活用する方針とした。2.判断基準の明確化
次に、『摂食・嚥下機能評価(22項目)』を参考に評価表を作成した。評価者間のばらつきを軽減するため、各項目は可能な限り具体的かつ簡潔な表現とし、欄外に注釈を付記した。例えば、評価項目の「上半身が左右や前後に傾き、座位保持が困難である」は「リクライニング車椅子使用している」とし、「車椅子でもクッションによる姿勢調整を行っている場合を含む」と注釈を加えた。また、評価項目の「固いものを避け軟らかいものばかり食べる」は「軟菜食以下を食べている」とし、食事形態が一目で分かるよう氏名欄を食札と同じ色で表示するなどの工夫を行った。3.運用ルールの統一
評価項目は職種別に担当を分け、介護士8項目、リハビリ職員1項目、歯科衛生士4項目、管理栄養士3項目、看護師2項目、言語聴覚士4項目に加え、水飲みテストを実施し点数化した。さらに、職種ごとに色分けを行い、各職種が確認すべき項目を明確化した。また、「困りごと」を記載する欄を設け、多職種で検討すべき課題を共有できるようにした。【結果】新しい評価表を用いて嚥下回診を開始した結果、事前に多職種で評価を完成させたうえで、問題のある利用者や変更が必要な利用者を中心に回診を実施できるようになった。これにより、嚥下回診に要する時間は導入前75分から導入後45分へ短縮した。また、経口維持加算算定者94名中15名(約16%)において、評価内容の情報共有が円滑に行えた。各職種からは、「評価すべき視点が明確になった」「多職種間での相談がしやすくなった」などの意見が得られた。【考察】今回、評価表を統一し、共通の視点で情報共有を行える体制を整備したことで、施設間連携の強化につながったと考える。特に、言語聴覚士不在の施設でも運用可能な評価方法としたことで、専門職配置の違いに左右されにくい連携体制を構築できた点は有用であった。また、評価項目を簡潔かつ視覚的に分かりやすく整理したことで、多職種がそれぞれの役割を理解しやすくなり、嚥下回診の効率化や課題抽出の迅速化につながったと考える。加えて、「困りごと」欄を設けたことで、従来は表出されにくかった現場の気付きや不安を共有しやすくなり、多職種カンファレンスの質向上にも寄与したと考えられる。さらに、法人内で評価方法を統一したことは、利用者の継続的支援だけでなく、職員異動時の業務標準化や教育負担軽減にも有効であった。今後は、嚥下回診に限らず、法人内施設全体で統一した評価・支援体制を構築し、「部分最適から全体最適へ」の実現を目指していきたい。【まとめ】本取り組みにより、当施設から特養へ転居する際の情報共有が円滑となり、転居後も継続した嚥下支援が可能となった。また、評価方法の統一により、多職種連携の強化および業務標準化にもつながった。今後も法人内連携を強化し、継続的かつ質の高い嚥下支援体制の構築を目指していく。
