講演情報

[22-P-A001-03]食事介助への職員の意識変化を目指して不適切介護を減らす取り組み

*若林 明子、近澤 美生、濱崎 香織、平久江 郁美 (東京都 介護老人保健施設ソピア御殿山)
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【はじめに】高齢者の誤嚥による死亡は依然として高水準で推移しており、介護施設における食事介助の質向上は喫緊の課題である。消費者庁の報告では、令和5年に7,779人の高齢者が不慮の窒息で死亡し、そのうち4,215人が食物の誤嚥によるものであった。また、令和6年には高齢者の死因第5位として誤嚥性肺炎が報告されている。食事介助は利用者の尊厳と安全に直結する重要なケアであるが、職員の理解や技術の差により不適切介助が生じる可能性がある。当施設では定員100名のうち約10%が食事介助を必要としており、過去2年間で窒息事例が2件発生している。この状況を踏まえ、職員の意識変化を促し、不適切介助の軽減を図ることを目的として研修を実施し、その効果を検証した。
【方法】食事介助に携わる可能性のある看護師、介護士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の計46名である。研修前に食事介助に関する10項目の自己評価(5段階)と困りごとに関するアンケートを実施した。その後、座学と実践演習を組み合わせた研修を行い、研修後に42名へ同様のアンケートを再実施した。研修前後の比較には対応のないt検定を用い、分散の等質性はF検定により確認した。有意水準はP<0.05とした。統計解析にはMicrosoft Excelを使用した。10項目の自己評価の統計的分析結果と自由記述を合わせ、職員の意識や技術の変化を評価した。
【結果】「姿勢保持」「同じ目線での介助」「麻痺側への理解」の3項目で統計的有意差が認められた。他の7項目では有意差はみられなかったものの、自由記述では「自助食器の正しい使い方が理解できた」「置き方を意識するようになった」など、介助方法に関する気づきが多く得られた。特に「同じ目線での介助」に関しては、実践演習で2人1組となり、互いに食事介助を受ける体験を行ったことが大きく影響したと考えられる。高い位置からの介助に対して恐怖感や食べにくさを感じたとの意見が多く、利用者の立場を体験することで、介助時の姿勢や配慮の重要性をより深く理解できたことが示唆された。
【考察】自助食器の使用に関する項目では、研修前から多くの職員が「正しく使用できている」と自己評価していたため、数値上の変化としては表れにくかったと考えられる。しかし自由記述では理解の深まりが確認され、研修によって認識の質が変化した可能性がある。また、困りごととして挙げられた「人員配置減少による複数介助の困難さ」は研修前後で改善がみられず、ケア体制の整備が今後の課題であることが示された。
【結語】本研究の結果から、座学と実践演習を組み合わせた研修は、職員の理解と意識向上に有効であり、不適切介護の予防に寄与する可能性が示唆された。特に、介助される側の体験を取り入れた実践演習は、職員の気づきを促し、介助技術の質向上に繋がると考えられる。今後は、定期的な研修の継続とともに、人員配置を含むケア体制の改善を図ることで、より安全で質の高い食事介助の提供が期待される。