講演情報
[22-O-L004-02]BuzzerBeatをもう一度!バスケットボールを通じてLSAが向上した症例
*瀨尾 唯 (北海道 介護老人保健施設 月形緑苑)
【はじめに】
視床出血により活動意欲の低下が見られた訪問リハビリ利用者に対し、本人にとって特別な活動であるバスケットボールを行ったことで、活動性が向上しLSAに変化が見られたため、その取り組みについて報告する。
【症例情報】
・A氏80代男性(要介護1) ・現病歴:左視床出血(X-3年)
・全体像:寡黙な方で口数は多くないが、好きなことや趣味についてはお話ししてくれる。
・幼少期から体を動かすことが好きで、60代までバスケットボールを続けていた。
・家族構成:妻と二人暮らし ・生活歴:飲食店を営んでいたが、罹患を機に閉業。
【初期評価(X-3年)】
・身体機能:br/S Ⅵ ・ADL:FIM126 ・認知機能HDS-R29点
・精神面:改訂PGCモラールスケール4点(第1因子2点、第2因子2点)
罹患後、活動に消極的になり、外出や他者交流を避けるようになった。
わずかな体調の変化に敏感で、日々妻に訴えている状況。妻もストレスを感じていた。
・活動状況:LSA 26点(4週後変化なし)毎月の受診、日課の散歩(1㎞弱)は行っているが、それ以外の外出機会はなし。外出の誘いを受けても「こんな体で何もできないから」と頑なに拒否されていた。
・IADL:生業としていた料理は「もうこんな体じゃできるわけない」と諦めていた。
・家族の希望:もっと外に出て、人に会って色々な事に参加してほしい。
【介入当初からの経過】
介入当初:「(麻痺側の)腕がムズムズして」と常に気にされ、会話に集中ができなかった。悲観的な発言が多く、生活歴の聴取に難航したため、まずはA氏の訴えや今の気持ち(思い)をたくさん聞く時間を作り、関係性の構築を図った。「今できていること」などを積極的に伝え、前向きな声掛けを意識して行った。
介入~1年:徐々に関係性を築き、自ら生活歴や思いを話してくれるようになり、表情も柔らかくなった。
【バスケを導入した理由と実施までの経緯】
・関わりのなかで、運動が好きな気持ちはずっとあるが、他者に見られることに羞恥心があることがわかり、個別の関わりでなら何か始められると考えた。
・会話のなかで、スポーツが好きでよくテレビで見ていること、またA氏がバスケをやっていた頃の話を嬉しそうにされていることから、バスケは特別なものであり、何かを変えるきっかけに繋がるのではと考えた。
・バスケの提案をしてからも、A氏のなかで「うまく出来るか」という不安や葛藤があり、A氏が決断するまでに2か月弱時間を要した。
【初回のバスケ実施時の様子と変化(X-2年)】
・実施に向けて、バスケ経験者のリハスタッフに同行を依頼し、転倒など安全面の配慮を行った。
・最初はボールを渡しても「できるかどうか」と動き出せなかったが、同行スタッフがシュートを打ち始めたのを見て、少しずつ動き出してくれた。そこから30~40分ほど休まずシュートを打ち続け、終盤にフリースローラインから数本シュートを決められた。
・その夜は「久しぶりにぐっすり眠れた」とA氏から話があった。実施から1ヶ月経過すると不調を訴える頻度は減り、A氏から会話のきっかけを作ってくれることが増え、表情もやわらいでいった。
・介入当初、拒否していた介護予防事業に妻と参加することができた。「思ったよりできた」と実感された。
【2回目実施の経緯と実施中の様子(X-1年)】
・初回以降、冬期間はバスケを行っていなかったが、介護予防事業は休まず利用されていた。
・ワールドカップやオリンピックなどバスケの話題が絶えず、リハビリ中も話題になっていた。
・夏季に入り、A氏から「またバスケをする日はないのか」と聞かれ、日程調整を行った。
・活動(外出)機会を自ら提案してくれたことに、A氏の心境の変化を感じた。
・2回目のバスケは初回よりも意欲的に取り組まれ、自らボールを持ち、同行スタッフとパス練習を行った。
・40分程、シュートを打ち続け、初回よりもさらに表情は明るいように感じた。
【再評価(X-1年)】
・身体機能、ADLは初回から維持され、自立度の高い生活を送られている。
・改訂PGCモラールスケール4点(初回と変化なし。性格的に途中で集中が切れ、返答が曖昧になった)
・精神面は介入当初に比べ、悲観的な発言は大幅に減少し、表情や会話の内容が明るくなる。
・介入当初「もうやらない」と決めていた料理を再開される。
【活動状況の評価】
・LSA:49点(初回26点)
・日課の散歩は継続、加えて毎週の介護予防事業、町主催行事の参加や隣市への外出。
・外出への抵抗感が減り、誘いを受けると拒否なく外出することが増えた。
【考察】
A氏は視床出血後に起きた心身機能の変化から「何もできなくなった」と自信の喪失が顕著に表れ、活動意欲が低下し、生活範囲も自宅のみとなっていた。また、自身の現状や今後に対し悲観的な発言を常に訴え、家族もストレスを抱えている状況であった。今回、訪問リハで関係性を築くなかで、A氏にとってバスケが特別なものであることがわかり、会話のなかでバスケの話題を取り入れることから始め、実際に2回行うことができた。
バスケを取り入れた効果として「思ったよりできた」という成功体験、「楽しかった」「ぐっすり眠れた」という充実感・達成感から内発的動機づけができた。この経験や周囲の声掛けから「外に出られるかもしれない」「できるかも」とA氏自身が感じ、自己効力感の向上につながった。
その結果、外出への抵抗感が減り、現在まで介護予防事業を含む町内行事への参加継続や隣市への外出頻度が増え、生活範囲が拡大しLSAに改善がみられたと考える。
【まとめ】
本症例を通して、訪問リハビリでA氏にとって特別な活動であるバスケを取り入れ、自己効力感・内発的動機づけを高める関わりがLSAの拡大には重要と考えられた。今後も、個人を知り、その人となりに寄り添ったリハビリを行い、生活をより良いものに変えていく取り組みを続けていきたい。
視床出血により活動意欲の低下が見られた訪問リハビリ利用者に対し、本人にとって特別な活動であるバスケットボールを行ったことで、活動性が向上しLSAに変化が見られたため、その取り組みについて報告する。
【症例情報】
・A氏80代男性(要介護1) ・現病歴:左視床出血(X-3年)
・全体像:寡黙な方で口数は多くないが、好きなことや趣味についてはお話ししてくれる。
・幼少期から体を動かすことが好きで、60代までバスケットボールを続けていた。
・家族構成:妻と二人暮らし ・生活歴:飲食店を営んでいたが、罹患を機に閉業。
【初期評価(X-3年)】
・身体機能:br/S Ⅵ ・ADL:FIM126 ・認知機能HDS-R29点
・精神面:改訂PGCモラールスケール4点(第1因子2点、第2因子2点)
罹患後、活動に消極的になり、外出や他者交流を避けるようになった。
わずかな体調の変化に敏感で、日々妻に訴えている状況。妻もストレスを感じていた。
・活動状況:LSA 26点(4週後変化なし)毎月の受診、日課の散歩(1㎞弱)は行っているが、それ以外の外出機会はなし。外出の誘いを受けても「こんな体で何もできないから」と頑なに拒否されていた。
・IADL:生業としていた料理は「もうこんな体じゃできるわけない」と諦めていた。
・家族の希望:もっと外に出て、人に会って色々な事に参加してほしい。
【介入当初からの経過】
介入当初:「(麻痺側の)腕がムズムズして」と常に気にされ、会話に集中ができなかった。悲観的な発言が多く、生活歴の聴取に難航したため、まずはA氏の訴えや今の気持ち(思い)をたくさん聞く時間を作り、関係性の構築を図った。「今できていること」などを積極的に伝え、前向きな声掛けを意識して行った。
介入~1年:徐々に関係性を築き、自ら生活歴や思いを話してくれるようになり、表情も柔らかくなった。
【バスケを導入した理由と実施までの経緯】
・関わりのなかで、運動が好きな気持ちはずっとあるが、他者に見られることに羞恥心があることがわかり、個別の関わりでなら何か始められると考えた。
・会話のなかで、スポーツが好きでよくテレビで見ていること、またA氏がバスケをやっていた頃の話を嬉しそうにされていることから、バスケは特別なものであり、何かを変えるきっかけに繋がるのではと考えた。
・バスケの提案をしてからも、A氏のなかで「うまく出来るか」という不安や葛藤があり、A氏が決断するまでに2か月弱時間を要した。
【初回のバスケ実施時の様子と変化(X-2年)】
・実施に向けて、バスケ経験者のリハスタッフに同行を依頼し、転倒など安全面の配慮を行った。
・最初はボールを渡しても「できるかどうか」と動き出せなかったが、同行スタッフがシュートを打ち始めたのを見て、少しずつ動き出してくれた。そこから30~40分ほど休まずシュートを打ち続け、終盤にフリースローラインから数本シュートを決められた。
・その夜は「久しぶりにぐっすり眠れた」とA氏から話があった。実施から1ヶ月経過すると不調を訴える頻度は減り、A氏から会話のきっかけを作ってくれることが増え、表情もやわらいでいった。
・介入当初、拒否していた介護予防事業に妻と参加することができた。「思ったよりできた」と実感された。
【2回目実施の経緯と実施中の様子(X-1年)】
・初回以降、冬期間はバスケを行っていなかったが、介護予防事業は休まず利用されていた。
・ワールドカップやオリンピックなどバスケの話題が絶えず、リハビリ中も話題になっていた。
・夏季に入り、A氏から「またバスケをする日はないのか」と聞かれ、日程調整を行った。
・活動(外出)機会を自ら提案してくれたことに、A氏の心境の変化を感じた。
・2回目のバスケは初回よりも意欲的に取り組まれ、自らボールを持ち、同行スタッフとパス練習を行った。
・40分程、シュートを打ち続け、初回よりもさらに表情は明るいように感じた。
【再評価(X-1年)】
・身体機能、ADLは初回から維持され、自立度の高い生活を送られている。
・改訂PGCモラールスケール4点(初回と変化なし。性格的に途中で集中が切れ、返答が曖昧になった)
・精神面は介入当初に比べ、悲観的な発言は大幅に減少し、表情や会話の内容が明るくなる。
・介入当初「もうやらない」と決めていた料理を再開される。
【活動状況の評価】
・LSA:49点(初回26点)
・日課の散歩は継続、加えて毎週の介護予防事業、町主催行事の参加や隣市への外出。
・外出への抵抗感が減り、誘いを受けると拒否なく外出することが増えた。
【考察】
A氏は視床出血後に起きた心身機能の変化から「何もできなくなった」と自信の喪失が顕著に表れ、活動意欲が低下し、生活範囲も自宅のみとなっていた。また、自身の現状や今後に対し悲観的な発言を常に訴え、家族もストレスを抱えている状況であった。今回、訪問リハで関係性を築くなかで、A氏にとってバスケが特別なものであることがわかり、会話のなかでバスケの話題を取り入れることから始め、実際に2回行うことができた。
バスケを取り入れた効果として「思ったよりできた」という成功体験、「楽しかった」「ぐっすり眠れた」という充実感・達成感から内発的動機づけができた。この経験や周囲の声掛けから「外に出られるかもしれない」「できるかも」とA氏自身が感じ、自己効力感の向上につながった。
その結果、外出への抵抗感が減り、現在まで介護予防事業を含む町内行事への参加継続や隣市への外出頻度が増え、生活範囲が拡大しLSAに改善がみられたと考える。
【まとめ】
本症例を通して、訪問リハビリでA氏にとって特別な活動であるバスケを取り入れ、自己効力感・内発的動機づけを高める関わりがLSAの拡大には重要と考えられた。今後も、個人を知り、その人となりに寄り添ったリハビリを行い、生活をより良いものに変えていく取り組みを続けていきたい。
