講演情報

[22-O-L001-07]歩行予備能における評価指標としての有用性TUGでの検討及びTUG、WTとの比較

*笠原 健稔、川窪 修平 (長野県 介護老人保健施設大型デイケアセンター グレイスフル下諏訪)
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はじめに運動成果の可視化を目的に体力測定を開始し、10m歩行テスト(Walking Time:以下WT)、Time Up and Go Test(以下TUG)を測定した。WTにおける1)歩行予備能(通常機能と通常機能以上に発揮される最大機能との差)を算出し、評価指標としての有用性について検討した。歩行予備能の経時的な変化を確認することは歩行形態の低下、要介護状態への移行の予測となる指標であると考えた。また歩行予備能を最大速度、最大歩数と並行して観察することでより具体的な解釈が行えると考え、要介護者、要支援者に対し、有用性のある評価指標として結論付けた。本研究ではTUGにおける歩行予備能が要介護者、要支援者に対し、評価指標としての有用性を調査、分析した。またWT、TUGそれぞれの歩行予備能の調査結果を比較し、考察した。方法検査項目TUGの測定は測定回として2025年度に計4回実施した。快適速度(TUG at comfortable Speed:以下TUGcom)を1回、最大速度(TUG at maximum speed:以下TUGmax)を左右それぞれ1度行い、快適歩数(TUG at comfortable speed Steps:以下TUGcomS)、最大歩数(TUG at maximum speed Steps:以下TUGmaxS)を測定した。TUGcom、TUGmax計測前には「いつも通り、普通に歩いて下さい。」「先程より転ばないように早く歩いて下さい。」と説明し、計測した。歩行予備能に対する至適機能との差を示す指標とした(TUG Reserve:以下TUG-R)。TUG-Rは下記の式に基づいて算出した。TUG-R=(TUGcom-TUGmax)/TUGmax*100/TUGmax対象測定回参加者を対象者とし、性別、年齢、介護度、歩行形態を調査した。分析方法TUG-RとTUGcom、TUGmax、TUGcomS、TUGmaxSのPearson積率相関係数を算出し、関連性を検討した。また性別、歩行形態、介護度それぞれのTUG-Rについてt検定を用いて比較した。またWTにおける歩行予備能(WT Reserve:以下WT-R)とTUG-RにおけるPearson積率相関係数とt検定を比較した。統計処理はNumbers、Stats tester miniを用いて両側検定で危険率5%未満を有意水準とした。結果対象者は79名(男性31名、女性48名)。平均年齢は86.14歳(男性84.52歳、女性87.23歳)。平均介護度は要介護1.01。歩行形態は独歩29名、杖24名、歩行器26名。TUG-RとTUGcom、TUGmax、TUGcomS、TUGmaxSのPearson積率相関係数は歩行形態・介護度ともにTUGmax、TUGmaxSにおいて複数回、有意な相関が見られた。性別のTUG-Rにおけるt検定では1回の測定回で有意差が見られた。歩行形態のTUG-Rにおけるt検定は独歩・杖にて1回の測定回で有意差が見られた。介護度のTUG-Rにおけるt検定は要介護1・2で1回、要支援1・2で2回の測定回で有意差が見られた。WT-RとTUG-RのPearson積率相関係数においてはTUG-RのPearson積率相関係数の方が有意差を認める測定回が多かった。t検定では有意差の回数に大きな差はなかった。考察本研究ではTUGにおける予備能の評価指標としての有用性を検証することを目的とし、測定及び分析を行った。TUG-Rにおけるt検定では歩行形態及び要介護度が低いことで有意差を認めた。2)大塚らは平均的な至適歩行速度が低下することで要介護発生リスクが上昇することを報告している。TUG-Rの経時的な変化は歩行形態の低下、要介護状態への移行の予測となる指標として有用性が考えられる。TUGの測定、TUG-Rの算出を行い、経時的な変化を観察することが重要である。TUG-RとTUGcom、TUGmax、TUGcomS、TUGmaxSのPearson積率相関係数では歩行形態・介護度ともにTUGmax、TUGmaxSにおいて複数回、有意な相関が見られた。3)森らは歩幅の低下は下肢筋力、動的バランス低下の判別をするスクリーニング指標となることを示唆した。また4)横田らは動的バランス検査とTUGのPearson積率相関係数において負の相関を認めることを報告している。TUGにおける最大発揮にはTUGmax、TUGmaxSが重要であり、TUG-Rの有用性を考える上でも重要な観察するポイントと言える。WT-RとTUG-RのPearson積率相関係数においてはTUG-RのPearson積率相関係数の方が有意な相関を認める測定回が多かった。WTとTUGにおいては有意な相関関係を認める報告がある一方、曲線下面積(Area Under the Curve:AUC)においては5)TUG:0.66~0.70、6)WT:0.77~0.83とWTにおいて有意な報告も見られる。また7)山田らはTUGの測定時間が13.5秒以内であるのみ評価としての信頼があると示している。歩行予備能を評価する上では通常機能以上の最大発揮が重要であり、それぞれの検査の中で最大発揮がどのように生じるか観察する必要がある。WTは直線のみという条件に対してTUGでは複数の動作の中で如何に加速し、減速しないようゴールするかという条件の中で最大発揮することが出来る。本研究においては前述したWT、TUGの有意な相関関係、予測精度以前にTUGの検査の特性が最大発揮に大きく影響したと考える。まとめ本研究ではTUGにおける予備能の評価指標としての有用性を調査、分析し、考察した。TUG-Rの経時的な変化を観察することで歩行形態の低下、要介護状態への予測となることが考えられた。TUGにおける最大発揮にはTUGmax、TUGmaxSが重要であり、TUG-Rと同様に重要な観察するポイントであった。またTUGにおいての最大発揮は検査の特性上、生じやすくWT-Rに比べてTUG-Rの観察が重要と考えた。今後はTUGの特性そのものに最大発揮の要因があることを検証するため引き続き、調査、分析を行っていく。