講演情報
[22-P-A001-02]「その人らしさ」のために~J-CPATを使用して~
*髙山 翔弘、千葉 脩平、秋葉 映見、大塚 雄作 (栃木県 介護老人保健施設ひまわり荘)
【はじめに】介護老人保健施設ひまわり荘は、集の舎85床、風の舎6ユニット65床で構成され、1ユニット10~11名の少人数制を採用している。風の舎3ユニットは認知症専門棟となっており、利用者が安心できる環境づくりを行っている。今回、認知症高齢者に対し、入所以前の生活や性格に着目し、「その人らしさ」を尊重した環境調整と関わりを実施した。また、認知症の包括的評価ツールであるJapanese version of Care Planning Assessment Tool(以下J-CPAT)【コミュニケーション、身体的問題、自立能力、記憶・見当識、行動、社会的交流、精神的観察、介護ニーズの8大項目により構成され、各項目の介護ニーズを0~3点(点数が低いほど軽度)で示す。】を用いて多職種間で情報共有を行い、関わり方や声掛けを統一した。その結果、Dementia Behavior Disturbance scale(以下DBD13)における認知症周辺症状に改善がみられたため報告する。
【症例紹介】対象は入所中の90代女性A様とした。(文書にてご家族に発表の趣旨を説明し同意を頂いた。)A様はアルツハイマー型認知症(11年前に診断)、腰部脊柱管狭窄症、すべり症を有し、障害自立度B1、認知自立度Ⅲb、要介護4、HDS-R9点であった。過去には帰宅困難となり警察に保護されたこともあった。X年6月に自宅で発熱し、1病日病院を受診。熱中症および急性肺炎と診断され入院となった。入院後は身体機能が低下し、自宅での介護が困難となったため120病日にひまわり荘に入所となった。ADLはBarthel Index(以下BI)45点。であった。
【方法】A様に関わる介護、リハビリスタッフがJ-CPATを用いて評価を実施、結果を検討した。さらに家族から生活歴、性格について情報収集を行い、その上で環境設定や声掛けを共有した。2ヶ月間の介入を実施し、介入前後でJ-CPATおよびDBD13を比較した。
【介入目的と内容】当初、A様は多床室に入所されたが、帰宅願望が昼夜みられ「家に帰らせて」との訴えが多かった。また、リハビリやトイレ誘導時の拒否、食堂での突発的な立ち上がりや歩行があり、転倒リスクが高かった。他利用者の車椅子を押す、おしぼりを配るなどの行動もみられ、その都度スタッフが声掛けをしていた。上記の様子を踏まえ、周辺症状の背景を深く把握するため家族から生活歴を聴取した。A様は自営業を営んでおり、これまで常に主導的役割にて仕事熱心で、人との交流を大切にしていたことが分かった。また、自宅の庭の花を近所の人に見せ、交流を楽しんでいた。これらからA様は「人との交流」や「頼られる役割」に生きがいや価値観を得る方であると考えた。さらにJ-CPATでは「行動」「社会的交流」が高値であり、周辺症状の背景には交流不足や役割喪失があると考察した。環境面では、150病日に少人数で関係性を築きやすい認知症専門棟へ転棟した。また、お話好きな他利用者様と座席を近くし、集団リハビリでペア活動や歩行リレーなど協力型の課題を取り入れ、達成感を共有できるようにした。さらに、タオル畳みや包帯巻き、レクリエーション物品作成等の軽作業を行うことで、他利用者様と仲良くなれ、施設生活の中で楽しみがあり役割を果たせるようにし、役割を持ち主体的に行動できるよう支援した。加えて、介護スタッフの声掛けも見直した。従来は指示的な声掛けが多かったが、依頼型の声掛けへ統一した。
【結果】J-CPATは【介入前(150病日)→介入後(210病日)】、コミュニケーション17%→8%、身体的問題80%→8%、自立能力63%→50%、記憶・見当識83%→58%、行動60%→3%、社会的交流73%→23%、精神的観察29%→10%、介護ニーズ100%→26%であり、DBD13は24点→9点と大きな改善を認めた。介入後の様子はA様と仲の良い利用者様との関係性が深まり、日中の会話が増加した。また、自発的に軽作業や他利用者への手伝いを行うようになり、役割意識が高まった。これに伴い、帰宅願望や突発的な立ち上がり、リハビリやトイレ誘導時の拒否が徐々に軽減した。夜間も安眠できる日が増え、リハビリやトイレ誘導もスムーズとなった。身体能力の大きな改善は無いものの(最終BI 50点)「ありがとう」「お願いします」といった前向きな発言が増え、スタッフに対し「何か手伝うことある?」と尋ねる場面もみられるようになった。
【考察】今回、A様の生活歴や価値観を踏まえ、「その人らしさ」を重視したケアを行ったことで、交流や役割を持てる環境を整えることができた。その結果、A様は他者との関係性の中で存在意義や満足感を得られ、周辺症状の軽減につながったと考えられる。特に、仲の良い利用者様との関係構築や軽作業への参加は、心理的安定に大きく寄与したと思われる。また、J-CPATを活用したことで、多職種間で対象者の状態を客観的に共有し、適切な関わり方を検討することができた。さらに、統一した声掛けやケア方法を実践することで、スタッフ間のケアの差を減らし、継続的で安定した支援につながった。
【まとめ】認知症高齢者の周辺症状には必ず背景や理由が存在する。今回、J-CPATを介して多職種で話し合いを行い、対象者の生活歴や価値観に基づいた支援を実施したことは非常に有効であった。また、対象者の心に寄り添い、「その人らしさ」を尊重した関わりを継続することで、施設生活においても穏やかに過ごせる可能性が示唆された。今後も多職種連携を通じて、「その人らしさ」を意識した支援を継続していきたい。
【症例紹介】対象は入所中の90代女性A様とした。(文書にてご家族に発表の趣旨を説明し同意を頂いた。)A様はアルツハイマー型認知症(11年前に診断)、腰部脊柱管狭窄症、すべり症を有し、障害自立度B1、認知自立度Ⅲb、要介護4、HDS-R9点であった。過去には帰宅困難となり警察に保護されたこともあった。X年6月に自宅で発熱し、1病日病院を受診。熱中症および急性肺炎と診断され入院となった。入院後は身体機能が低下し、自宅での介護が困難となったため120病日にひまわり荘に入所となった。ADLはBarthel Index(以下BI)45点。であった。
【方法】A様に関わる介護、リハビリスタッフがJ-CPATを用いて評価を実施、結果を検討した。さらに家族から生活歴、性格について情報収集を行い、その上で環境設定や声掛けを共有した。2ヶ月間の介入を実施し、介入前後でJ-CPATおよびDBD13を比較した。
【介入目的と内容】当初、A様は多床室に入所されたが、帰宅願望が昼夜みられ「家に帰らせて」との訴えが多かった。また、リハビリやトイレ誘導時の拒否、食堂での突発的な立ち上がりや歩行があり、転倒リスクが高かった。他利用者の車椅子を押す、おしぼりを配るなどの行動もみられ、その都度スタッフが声掛けをしていた。上記の様子を踏まえ、周辺症状の背景を深く把握するため家族から生活歴を聴取した。A様は自営業を営んでおり、これまで常に主導的役割にて仕事熱心で、人との交流を大切にしていたことが分かった。また、自宅の庭の花を近所の人に見せ、交流を楽しんでいた。これらからA様は「人との交流」や「頼られる役割」に生きがいや価値観を得る方であると考えた。さらにJ-CPATでは「行動」「社会的交流」が高値であり、周辺症状の背景には交流不足や役割喪失があると考察した。環境面では、150病日に少人数で関係性を築きやすい認知症専門棟へ転棟した。また、お話好きな他利用者様と座席を近くし、集団リハビリでペア活動や歩行リレーなど協力型の課題を取り入れ、達成感を共有できるようにした。さらに、タオル畳みや包帯巻き、レクリエーション物品作成等の軽作業を行うことで、他利用者様と仲良くなれ、施設生活の中で楽しみがあり役割を果たせるようにし、役割を持ち主体的に行動できるよう支援した。加えて、介護スタッフの声掛けも見直した。従来は指示的な声掛けが多かったが、依頼型の声掛けへ統一した。
【結果】J-CPATは【介入前(150病日)→介入後(210病日)】、コミュニケーション17%→8%、身体的問題80%→8%、自立能力63%→50%、記憶・見当識83%→58%、行動60%→3%、社会的交流73%→23%、精神的観察29%→10%、介護ニーズ100%→26%であり、DBD13は24点→9点と大きな改善を認めた。介入後の様子はA様と仲の良い利用者様との関係性が深まり、日中の会話が増加した。また、自発的に軽作業や他利用者への手伝いを行うようになり、役割意識が高まった。これに伴い、帰宅願望や突発的な立ち上がり、リハビリやトイレ誘導時の拒否が徐々に軽減した。夜間も安眠できる日が増え、リハビリやトイレ誘導もスムーズとなった。身体能力の大きな改善は無いものの(最終BI 50点)「ありがとう」「お願いします」といった前向きな発言が増え、スタッフに対し「何か手伝うことある?」と尋ねる場面もみられるようになった。
【考察】今回、A様の生活歴や価値観を踏まえ、「その人らしさ」を重視したケアを行ったことで、交流や役割を持てる環境を整えることができた。その結果、A様は他者との関係性の中で存在意義や満足感を得られ、周辺症状の軽減につながったと考えられる。特に、仲の良い利用者様との関係構築や軽作業への参加は、心理的安定に大きく寄与したと思われる。また、J-CPATを活用したことで、多職種間で対象者の状態を客観的に共有し、適切な関わり方を検討することができた。さらに、統一した声掛けやケア方法を実践することで、スタッフ間のケアの差を減らし、継続的で安定した支援につながった。
【まとめ】認知症高齢者の周辺症状には必ず背景や理由が存在する。今回、J-CPATを介して多職種で話し合いを行い、対象者の生活歴や価値観に基づいた支援を実施したことは非常に有効であった。また、対象者の心に寄り添い、「その人らしさ」を尊重した関わりを継続することで、施設生活においても穏やかに過ごせる可能性が示唆された。今後も多職種連携を通じて、「その人らしさ」を意識した支援を継続していきたい。
