講演情報

[22-P-TZ-05]「また来たい!」に繋がるために体験利用の充実化を目指して

*松井 早希 (栃木県 介護老人保健施設宇都宮シルバーホーム)
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【はじめに】
当デイケアは、宇都宮市東部に位置する宇都宮シルバーホームに併設された通所リハビリテーションである。利用定員は50名で、6~7時間の1日コースに加え、リハビリテーションに特化した2~3時間の半日コース(午前・午後)を提供している。開設以来、地域の在宅高齢者の生活機能維持・向上を目的にサービス提供を行ってきたが、稼働状況は2017年をピークに緩やかな低下傾向が続いていた。さらに2019年以降の新型コロナウイルス感染症の流行により、通所サービス全体の利用控えが生じたことに加え、近隣地域における機能訓練特化型デイサービスの増加も重なり、新規利用者の獲得が難しい状況となっていた。この状況から、リハビリや機能訓練が通所サービスに対する地域高齢者のニーズとして主要なものであることは明らかであるのに、リハビリ専門職の配置が充実している「通所リハビリテーション」でなぜ利用者減少が起きているのか。こうした外部環境の変化は、従来のサービス内容では利用者ニーズに十分応えられていない可能性を示唆しており、サービス全体の見直しが求められた。特に、利用者が施設選択を行う際の重要な判断材料となる「体験利用」は、施設の雰囲気や支援内容を直接体験できる貴重な機会であるにもかかわらず、体験利用後に本利用へ移行しないケースが増加していた。この背景から、体験利用の内容を再検討し、利用者満足度の向上と新規利用者獲得につなげることが必要であると考えた。
【目的】
体験利用内容の改善を通じて、(1)利用者満足度の向上(2)体験利用から本利用への移行率の向上を図り、その効果を検証することを目的とした。
【方法】
令和7年2月時点の体験利用内容を整理し、役職者および療法士を中心に協議を行った。従来の体験利用では、個別リハビリは20分のみ、入浴支援は未実施、自由時間が多く、利用者が時間を持て余す場面が散見された。これらの課題を踏まえ、以下の3点を改善項目として設定した。
(1)入浴支援の追加
(2)リハビリ介入時間を20分→40分に延長
(3)脳トレ課題の提供
改善内容は全体カンファレンスで共有し、3月より新たな体験利用として実施した。10月に職員アンケートを行い、11月に利用者の反応および本利用移行状況を評価した。対象は同年3月以降に体験利用を希望した新規相談者およびデイケア職員(看護師・介護職・リハビリ療法士)とした。
【結果】
(1)入浴支援:入浴支援の追加により、「久しぶりに湯船に入れて気持ちよかった」「温まれて良かった」など肯定的な意見が多く、体験利用後の満足度向上に寄与した。入浴を通じて利用者の笑顔が増え、職員とのコミュニケーションも円滑になった。一方で、初回利用での入浴にはリスクが伴うとの慎重な意見もあり、バイタル確認や介助体制の強化が必要とされた。
(2)リハビリ介入時間の延長:リハビリ介入時間を40分に延長したことで、療法士からは「密に関われて良い」「実際のリハビリを体験してもらえるため利用のイメージがつきやすい」といった肯定的な意見が寄せられた。利用者からも「しっかり見てもらえた」「自分に合った運動を教えてもらえた」と満足度が高かった。介護職からは「身体状況の把握がしやすくなり、支援に入りやすくなった」との声があり、職種間連携の強化にもつながった。
(3)脳トレ課題の提供:脳トレ課題は自由時間の有効活用に寄与し、「時間を有効に使えた」「周囲との交流のきっかけになる」といった意見が多く、ほとんどの利用者が希望して取り組んでいた。課題の難易度調整や個別対応の工夫が今後の課題として挙げられた。
(4)本利用への移行率:前年度は体験利用17名中9名が本利用へ移行したのに対し、今年度(12月時点)は35名中27名が本利用へ移行し、大幅な増加がみられた。利用に至らなかったケースでは「1日滞在は疲れる」「昼寝ができる施設を希望」など体験内容以外の要因が多かった。
【考察】
体験利用の充実は、利用者の不安軽減やサービス理解の促進に寄与し、利用開始後のミスマッチ防止に有効であると考えられる。特に入浴支援の追加は、他の通所系サービスではすでに多く実施されており、利用者・家族双方の満足度向上に寄与した。入浴支援を通じて職員が利用者の身体状況をより深く理解できるようになり、介助への不安が軽減されたことは大きな成果である。
リハビリ介入時間の延長は、身体状況の把握精度を高め、職員間の情報共有を活発化させた。これにより、体験利用に対する職員の関心も高まり、施設全体のチームアプローチの強化につながったと考えられる。
脳トレ課題の導入は、利用者の活動意欲を高め、交流のきっかけを生み出すなど心理的側面にも良い影響を与えた。一方で、体験利用は未契約状態での利用であるため、入浴支援を含む介助には慎重なリスク管理が求められる。今後は体験利用前の電話連絡時にリスク説明を徹底し、主治医の指示確認や安全確認を強化する必要がある。
また、体験利用の時間配分やプログラム構成を個々の体力や希望に合わせて柔軟に調整することも重要である。さらに、体験利用を通じて得られた職員の気づきや利用者の声を次の改善へとつなげる仕組みづくりが求められる。
【まとめ】
今回の体験利用内容の見直しにより、利用者満足度の向上と本利用移行率の大幅な改善が得られた。体験利用を通じて当施設を選択する利用者が増えたことは、ケアマネジャーや地域関係機関からの信頼向上にもつながった。今後も利用者一人ひとりのニーズに応じた体験利用内容を継続し、短時間でも「ここに来て良かった」「また利用したい」と感じていただけるデイケアを目指して取り組んでいく。また、体験利用で得られた職員の気づきや利用者の声を次の改善へつなげ、地域に根差した質の高いリハビリテーションサービスの提供を継続していくことが今後の課題である。