講演情報

[22-O-L008-04]トイレ動作に着目した集団体操が利用者に与えた影響~効果的な自立支援を目指して~

*窪井 亮紀 (静岡県 介護老人保健施設ケア・センターひまわり)
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【はじめに】
 近年2040年問題として、高齢者人口の増加と生産年齢人口の減少が進行し、医療・介護分野における人材不足が課題になることが予想されている。そのような状況において、限られた人的資源で効率的かつ効果的なリハビリテーションを提供することが求められている。
 当施設は加算型介護老人保健施設を運営しており、短期集中リハビリテーション実施加算を算定している。しかし、算定終了後の利用者は週1回の個別リハビリテーションと集団体操が主な介入機会となるため、獲得した能力を生活場面へ十分に結び付けることが困難な場合がある。  
 トイレ動作は利用者の尊厳保持や自立支援に直結する重要な日常生活動作(以下ADL)の一つである。そこで今回、従来実施していた固定的な集団体操を見直し、トイレ動作を構成する動作要素に着目した内容を導入した。集団体操へ生活動作に関連した運動課題を取り入れることで、トイレ動作への影響について検討したため報告する。
【方法】
 週1回の集団体操を実施。体操内容はトイレ動作を立ち上がり、立位保持、下衣動作、着座の動作要素に分解し、それらを反映した運動課題および動作指導を取り入れた。
 (期間)2026年3月1日~2026年5月31日(13週間)
 (対象)短期集中リハビリテーション実施加算算定後の利用者52名(男性15名-女性37名)
 (評価)介入前後におけるFunctional Independence Measure(以下FIM)のトイレ動作項目を用いて実施。また、現場職員39名を対象に無記名式としてアンケート調査を実施。内容は1)利用者のトイレ動作の変化、2)介助量の変化、3)利用者の行動意識の変化、4)介助者側の介助意識の変化、5)取り組みの継続の必要性について、5段階で評価した。
【結果】   
 対象者は52名(男性15名、女性37名)、年齢は65~100歳(中央値91歳)、Revised Hasegawa’s Dementia Scale(以下HDS-R)は5~30点(中央値17点)であった。FIMの内訳は実施前が3点7名、4点5名、5点7名、6点25名、7点8名であった。実施後は3点5名、4点5名、5点7名、6点27名、7点8名となり、そのうち改善した利用者の内訳は、1名が1点から5点、2名が3点から5点、4名が5点から6点、1名が6点から7点であった。
 職員アンケートは39名に配布し、36名より有効回答を得た。利用者のトイレ動作の変化については「やや変化あり」「変化あり」群が18名(50.0%)、介助量の変化については17名(47.2%)、利用者の意識や行動変化については16名(44.4%)であった。一方で介助者自身の介助意識については8名(22.2%)に留まり、「変化なし」が24名(66.6%)であった。また、本取り組みの継続については35名(97.2%)が肯定的な回答を示した。
【考察】
 本取り組みにより、FIMにおいて顕著な改善は認められなかったものの、44名のFIMは維持され、FIM3点の利用者が減少、FIM6点の利用者が増加したことから、一部の利用者においてトイレ動作の自立度向上につながった可能性が示唆された。改善が限定的だった要因として、対象者の年齢中央値が91歳、HDS-R中央値が17点であった。超高齢で認知機能低下を認める利用者が多く、疾患・年齢・認知機能も様々な利用者に同一の体操を行ったことが考えられる。また、介入頻度が週1回であったことも、短期間で新たな能力獲得や介助量の大幅な変化に至らなかったと考えられる。
 職員アンケートでは利用者のトイレ動作や介助量に変化を感じた職員が半数を占めた。これは、トイレ動作を構成する立ち上がり、立位保持、体幹回旋などの要素を集団体操へ取り入れたことで能力そのものの向上というよりも、日常生活場面における残存能力の発揮に繋がった可能性が考えられた。また、アンケートの自由記載欄には「自立度が上がった。」「離床時間が増えた。」「特定の利用者様の立ち上がりがスムーズになった。」などの意見も上がり、トイレ動作だけではなく利用者の一部にトイレ以外のADL拡大にもつながることが示唆された。さらに、本取り組みの継続について97.2%の職員が肯定的な回答を示した。職員からの肯定的な意見は、2040年に向けて介護人材不足の進行が予測される中、限られた人員で複数利用者へ同時介入できる集団体操は効率的な自立支援の一手段として活用できる可能性が示唆される結果となった。
 一方で、介助者側の意識変化については、66.6%のスタッフが変化を感じていないとの結果であった。今後はリハビリ科として、他職種との意見交換や利用者の情報共有をより一層進める必要性がある。また、本取り組みはADL評価を用いた効果判定のみを行ったが、ADL評価以外の客観的評価指標を導入することで本取り組みの有効性を多角的に検討していく必要があると考える。
【まとめ】
 トイレ動作を要素分解した集団体操は、利用者の日常生活場面における残存能力の発揮を促進する可能性が示唆された。また、限られた人的資源の中で複数利用者への介入可能な手段として、効率的な自立支援に付与する可能性がある。今後は介入頻度や介入期間を含めた介入方法の見直しに加え、より客観的な評価指標を用いた多角的な検証を行うことで、本取り組みの有効性をさらに明確にしていく必要性が示唆された。