講演情報
[22-O-J002-03]多職種連携による経口維持支援の介入実態咽喉マイクによる嚥下機能評価
*苅部 康子 (神奈川県 社会福祉法人親善福祉協会 介護老人保健施設 リハパーク舞岡)
【目的】 平成27年度介護報酬改定¹⁾では、「自らの口で食べる」ことの尊厳を支える観点から、ミールラウンドやカンファレンスの推進、ならびに咀嚼・嚥下機能に配慮した多職種による食支援が制度化された。しかし、実際の現場では観察のみで嚥下状態を正確に把握することは難しく、適切な食形態の判定に迷う場面も多い。最も信頼性が高いVF(嚥下造影検査)は、設備や人員の制約から介護施設では日常的に活用できず、実用的な嚥下機能評価法の確立が課題である。そこで本研究は、非侵襲的かつ簡便に嚥下音を確認できる咽喉マイク(南豆無線電機ENG 12jK)を用いた頸部聴診法に着目し、介護老人保健施設における摂食嚥下機能の評価とその実態を明らかにすることを目的とした。【対象および方法】 2023年9月~2024年2月に当施設入所者を対象とした単群・単施設の前向き介入研究を実施した。山下ら²⁾の先行研究に基づき、咽喉マイクで唾液嚥下および食物嚥下時の嚥下音を収集し、異音の有無で2群に分類した。身体的・認知的・栄養的指標との関連を分析し、異音を呈した対象者への多職種介入の実態も抽出した。評価項目は年齢、性別、原因疾患、身長、体重、BMI、嚥下音、RSST、OD、FIM、HDS R、食形態、MNA SFとし、医師・歯科医師・歯科衛生士・看護師・薬剤師・リハ職・介護士・管理栄養士が連携して評価した。統計解析はFIM利得およびMNA SF変化量にt検定、群間比較にMann–Whitney U検定を用い、有意水準5%未満とした。【結果】 最終解析対象は30名(異音あり群10名、異音なし群20名)であった。異音あり群は平均年齢81.4歳、要介護度3.4、BMI19.1kg/m²、FIM49、HDS R14.1、MNA SF6.8であった。一方、異音なし群は平均年齢88.8歳、要介護度2.8、BMI21.4kg/m²、FIM83.1、HDS R20.7、MNA SF9.3であり、BMI・FIM・HDS Rの3項目で有意差(有意水準5%未満)が認められた。 多職種介入は、食形態調整4件、とろみ調整4件、義歯作製3件、食事環境整備3件、呼吸トレーニング2件、ポジショニング2件、配膳方法の工夫2件、食事介助方法の見直し1件であった。とろみ調整は「水分摂取を確保しつつ安全に嚥下させる」点で嚥下音による異音検出が有用であり、観察では判断しきれない機能的評価の意義を示した。義歯作製が挙がったことは、咽喉マイクが咀嚼音も捉えることから、咀嚼・口腔機能評価の契機となったことを示唆する。食事環境整備や配膳方法の工夫では、食具の形状や一口量、提供タイミングなど環境要因が嚥下機能に影響していた。呼吸トレーニングやポジショニングは、嚥下における呼吸・姿勢の重要性を再確認させるものであった。介護士による食事介助方法の見直しは、声かけや一口量、見守り姿勢など介護の質が嚥下機能に影響することを示した。これらの介入が多職種の専門性を活かした総合的支援へと展開できた点は、ミールラウンドの質的向上にも寄与するものであった。【考察】 本研究により、咽喉マイクを用いた頸部聴診法が老健における嚥下機能スクリーニングとして有用であることが示唆された。異音あり群でBMI・FIM・HDS Rが有意に低かったことは、栄養状態・ADL・認知機能の低下が嚥下障害の指標となり得ることを示し、サルコペニアや廃用性症候群との関連を指摘する若林ら³⁾の報告とも整合した。また、咽喉マイクを取り入れたミールラウンドは、観察では捉えにくい嚥下・呼吸・咀嚼機能の評価に寄与し、誤嚥性肺炎予防やQOL向上に向けた意思決定の質を高める可能性がある。一方、嚥下音評価には主観性が伴い、判定者間の再現性や単施設研究である点に限界がある。今後は嚥下音の定量化、評価基準の標準化、他施設での再現性検証が求められる。【結語】 咽喉マイクを用いた頸部聴診法は、老健において非侵襲的かつ簡便に嚥下機能を捉える手段として有用である。ミールラウンドと組み合わせることで異常嚥下音の早期発見と多職種介入の質向上に寄与し、誤嚥性肺炎予防と生活の質の向上に貢献する可能性が示された。今後は施設間比較研究や評価基準の客観化を通じ、本手法の普及と標準化が期待される。【参考文献】1) 厚生労働省 老人保健健康増進等事業報告書(平成25年度). 介護保険施設における摂食・嚥下機能が低下した高齢者の栄養支援に関する研究報告.
