講演情報

[22-P-D001-03]介護老人保健施設における介護負担感関連因子の検討

*森谷 拓海 (東京都 介護老人保健施設マイウェイ四谷)
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【背景】介護老人保健施設では、利用者の認知機能低下やADL低下に伴い介助量が増加し、介護職員の介護負担感も増大すると考えられている。介護負担感の増大は職員の身体的・精神的負担のみならず、ケアの質や施設運営にも影響を及ぼす重要な課題である。一方、実際の臨床現場では認知機能やADLが比較的保たれているにもかかわらず、介護負担感が高い利用者を経験することも少なくない。そのため、介護負担感を身体機能や認知機能のみで捉えるのではなく、BPSDを含む目に見えにくい要因について検討する必要がある。
【目的】介護老人保健施設入所者における認知機能およびADLと介護負担感との関連を明らかにし、介護負担感に影響を及ぼす要因について多角的に検討することを目的とした。
【方法】対象は2025年4月1日~2026年4月1日までの当施設入所者127名とした(男性41名女性86名)。調査項目は年齢、MMSE、Barthel Index、要介護度、介護負担感、BPSD関連要因の有無とした。介護負担感は各階のユニット担当介護職員を対象としたアンケートにより評価し、1(介護負担ほぼ不要)~5(介護負担大)までの5段階とした。MMSEは軽度(20点以上)、中等度(10~19点)、重度(9点以下)、BIは軽度(61~100点)、中等度(35~60点)、重度(34点以下)に分類した。統計解析は各変数を中央値(IQR)で示した。MMSE、BI、介護負担感および要介護度の関連をSpearman順位相関係数により検討した。MMSE群およびBI群間の介護負担感の比較にはKruskal-Wallis検定を実施し、Dunn-Bonferroni法による事後比較を行った。また、MMSE群とBI群を組み合わせた9マスマトリックスを作成し、介護負担感およびBPSD関連要因との関係について検討した。有意水準は5%とした。
【結果】対象者の年齢中央値は90歳(86-93)、MMSEは18点(14-24)、BIは55点(28-70)、介護負担感は3(2-4)、要介護度は3(3-4)であった。BPSD関連要因を有する利用者は34名(26.8%)であった。相関分析では、MMSEとBIに有意な正の相関を認めた(rs=0.267、p=0.002)。MMSEと介護負担感(rs=-0.339、p<0.001)、BIと介護負担感(rs=-0.420、p<0.001)には有意な負の相関を認め、要介護度と介護負担感には有意な正の相関を認めた(rs=0.494、p<0.001)。MMSE群別比較では介護負担感に有意差を認めた(p=0.002)。事後比較では軽度群は中等度群および重度群と比較して介護負担感が有意に低かった。一方、中等度群と重度群の間には有意差を認めなかった。BI群別比較でも介護負担感に有意差を認めた(p<0.001)。事後比較では軽度群は中等度群および重度群と比較して介護負担感が有意に低かったが、中等度群と重度群の間には有意差を認めなかった。9マスマトリックスによる検討では、認知機能およびADLが比較的保たれているにもかかわらず介護負担感が高いエリアを認めた。また、高負担エリアではBPSD関連要因を有する割合が高かった。認知機能やADLのみでは介護負担感を十分に説明できない症例の存在が示された。
【考察】本研究では認知機能およびADLの低下に伴い介護負担感が増大することが示された。特にBIはMMSEより強い相関を示しており、移乗、排泄、更衣などの身体介助量が介護負担感に大きく影響している可能性が考えられた。一方、事後比較ではMMSE群、BI群ともに軽度群と中等度・重度群との間に有意差を認めたが、中等度群と重度群との間には有意差を認めなかった。このことから、認知機能やADLの低下に伴い介護負担感は増加するものの、一定以上の機能低下後は段階的に増大するわけではない可能性が示された。さらに9マスマトリックスでは、認知機能やADLが比較的保たれているにもかかわらず介護負担感が高い症例を認めた。これらの症例ではBPSD関連要因を有する割合が高く、徘徊、離床頻回、介助拒否などへの対応が介護負担感に影響している可能性が考えられた。したがって、介護負担感は認知機能やADLのみでは十分に説明できず、BPSDなどの行動・心理症状を含めて評価する必要があると考えられた。
【結論】介護老人保健施設入所者において、認知機能およびADLは介護負担感と有意に関連していた。特にADL低下は介護負担感との関連が強かった。一方で、認知機能やADLが比較的保たれていても介護負担感が高い症例が存在し、BPSD関連要因の関与が示唆された。入所判定や病床配置を検討する際には、認知機能やADLのみならず、BPSDをはじめとする目に見えにくい因子についても十分に評価し、利用者特性に応じた受け入れ体制の構築に反映していくことが重要であると考えられた。