講演情報

[22-P-A001-01]「自分らしく生きたい」~在宅復帰に向けた多職種の取り組み~

*髙沢 直樹、長谷部 鮎人 (栃木県 介護老人保健施設 グリーンホーム)
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【はじめに】
当施設は利用者様の今を大切にし、真心のこもった温かい介護サービスの提供を目指している施設である。今回ケースとなるA様は、新型コロナウイルス感染症罹患後の廃用症候群による身体機能、ADLの低下、前立腺肥大症によるバルーンカテーテル留置状態であった。身体機能の低下により医療的管理が必要となり、在宅生活の継続は困難と判断された。このため、多職種による包括的なリハビリと継続的な医療・介護支援を目的として当施設へ入所となった。入所時の希望では、A様は「自宅に帰りたい」「自由に暮らしたい」「自分らしく生きたい」と話されている。この言葉を本人の希望および生活目標として捉え、多職種で情報共有を行いながら支援方針を検討し、看護・介護・リハビリと連携し継続的な支援を実施した。その結果、バルーンカテーテルの抜去に至りこれが契機となって活動意欲の向上がみられ、ADLの改善につながった。最終的に在宅復帰を達成することができたため、その支援経過について報告する。

【事例紹介】
症例:A様、80代後半、男性、要介護4 
日常生活自立度B1、認知症高齢者の日常生活、自立Ⅰ、認知症は軽度
診断名:前立腺肥大症(バルーンカテーテル留置)
評価:(MMSE) 23点→25点、(HDS-R) 19点→21点、(BI)35点→80点
ADL(入浴、排泄、整容、更衣)および身体機能(下肢筋力)の低下
車椅子使用
在宅生活は困難と判断され当施設へ長期入所となる。

【方法・経過】
・看護職
前立腺肥大症により血尿やカテーテルトラブルを繰り返していたため、泌尿器科を受診し内服薬の調整を行った。その後は、血尿およびカテーテルトラブルは改善されたが、カテーテル挿入部の違和感を訴えたため医師に相談し、バルーンカテーテルの抜去を試みたところ自尿が見られた。その後、排尿状態は良好である。
・リハ職
身体機能面では関節拘縮は認めず、両下肢に筋力低下が見られた。このため、短期集中リハビリを実施し、バルーンカテーテル留置中は、下肢筋力強化練習・平行棒内での歩行練習・U字歩行器練習を行った。バルーンカテーテル抜去後は、リハビリ意欲も高まり、在宅復帰に向けたフリーハンドでの屋内歩行練習・持久力向上練習を行った。これに伴い、施設内移動手段は車椅子使用からシルバーカー歩行自立へ移行が見られた。
・介護職
食事はセッティングにて自立。入浴は機械浴。排泄動作は一部介助。バルーンカテーテル留置により尿意の訴えはないが、便意があり常時オムツを使用していた。今回便意に合わせて、排泄動作の練習を実施したが、バルーンカテーテル留置による動作制限により自立には至らず一部介助を継続した。バルーンカテーテル抜去後は、排泄動作の練習を実施しオムツからリハビリパンツに改善した。また、A様の自宅に帰りたい気持ちと活動意欲・身体機能の向上により、ADL:入浴(一般浴)、排泄(自立)、整容(自立)、更衣(自立)が全般的に改善された。
・居宅ケアマネ
A様の意向を家族に伝え了承を得る。家族と連携を密にとり、在宅復帰に向けた協力体制の構築、福祉用具の導入(介護ベット・手すり等)を提案・実行した。

【結果】
バルーンカテーテル抜去後は活動性の向上がみられた。また、「自宅に帰りたい」という目標が明確にあったことでリハビリへの参加意欲が高まり、下肢筋力の向上が見られ施設内移動が車椅子自走からシルバーカー歩行自立へと改善した。また、排泄動作練習を継続したことで、一部介助から自立となり入浴方法も機械浴から一般浴へと移行した。多職種で関わっていくなかで、A様は身体機能およびADL能力の向上・住宅環境・協力体制が整い、在宅生活が可能と判断された。A様が「自宅に帰りたい」と強く希望していたため、その意思を尊重し在宅復帰へとつながった。

【考察】
「自分らしく生きたい」という本人の意思を尊重し、多職種で支援を行いバルーンカテーテル抜去や活動意欲およびADLの向上が見られた。さらに、家族支援を通じて在宅生活への不安軽減と受け入れ体制の整備が図られたことで、在宅復帰が実現できたと考えられる。在宅復帰を実現するには、本人の価値観や生活目標を中心とした支援と、家族支援、多職種協力による包括的なアプローチが重要であると考える。