講演情報

[22-O-J001-05]多職種ミールラウンドで義歯不適合を発見した1例

*池浦 一裕1、大島 祐佳里2、田中 和子1、池浦 梨帆1、兼子 桜香1、木平 百合子1 (栃木県 1. 介護老人保健施設さくら野、2. さくらのクリニック歯科・口腔外科)
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【緒言】
介護老人保健施設におけるミールラウンドは利用者の栄養状態, 摂食嚥下機能, 口腔機能, 食事の姿勢・環境を多職種で評価することで, 「安全に・おいしく・楽しく」食べることができているかを直接観察して評価する重要な活動である. 介護報酬でも経口維持加算の導入に伴い多職種連携が進んできた背景があるが, 歯科専門職の参加を必要とする加算の算定割合は依然として高くなく、在宅療養支援歯科診療所と介護保険施設等との連携における栄養サポートチーム・ミールラウンド等への歯科参加率は7.6%である(令和2年度診療報酬改定結果検証調査). ゆえに口腔機能管理のニーズに適切に歯科が介入することが課題となっている. 今回われわれは, 多職種ミールラウンドを契機に義歯不適合を早期発見し, 歯科介入ならびに食事支援につながった症例を経験したので報告する.
【取り組みと経過】
医療法人さくら会では2025年7月から施設内でのミールラウンド体制を刷新し, 月1回火曜日に医師, 看護師, 言語聴覚士, 管理栄養士, 介護士, 歯科衛生士のチームで約10名のスクリーニングを実施している. 言語聴覚士と管理栄養士による日々の回診において, とろみ剤の使用かつ生活機能低下等のために食事摂取に課題がある入所者をミールラウンドの対象としている.
【症例の概要】
症例:88歳, 女性
主訴:入れ歯はあるが緩くて使っていない
現病歴:初診(X)-3年, 脳梗塞と認知症を発症するも杖・シルバーカーで前傾姿勢を維持しながら歩行ができ, ご家族見守りながら自ら身辺のことはできていた. X年1月に肺炎で入院となり, 下肢動作も悪くX年2月に当法人施設入所となる.
初診時口腔内所見:上下無歯顎, 口腔衛生状態は良好
食形態:主食全粥, 副食キザミ・全とろみ付き
【ミールラウンド評価】
X年2月:車椅子上, 全介助で食事, とろみ付きで無歯顎でも食事摂取可能
X年3月:義歯不使用に伴う食塊形成不良, 口腔内の粘膜損傷はなく衛生状態も良好
X年4月:看護師より義歯未使用についての相談があり, 歯科衛生士と歯科医師が訪問評価へ
X年5月:上下総義歯修理により顎位が安定し, 咀嚼および嚥下状況の改善を認めた
【歯科治療経過】
入所後2ヶ月(X年4月)のミールラウンドで看護師より義歯未使用について相談があり, 歯科衛生士からの報告を受け, 再評価を実施した. るい痩に伴う上下顎堤吸収があり上下総義歯の不適合が認められた. 義歯新製も検討したが患者との相談の結果, 持参義歯の修理で対応する治療方針とした. 軟質裏層剤を用いて義歯床下粘膜との適合調整を歯科外来で3回実施し, 印象採得後は歯科技工所での義歯修理となるため約2週間の義歯預かりが必要となった. 事前に患者・家族の了承を得た上で, 医師・看護師・言語聴覚士・管理栄養士・介護職員と情報共有を経て食形態を2週間だけ副食超きざみに変更して対応した. 義歯修理完成後は食形態をきざみへ戻し, 毎食義歯を装着して食事摂取可能となり以降経過観察中である.
【考察】
義歯の新製・調整・修理は歯科診療において日常的に行われている一方, 治療後に義歯を実際使用している瞬間を診る機会はほぼない. 本症例では日常の口腔ケア時には明らかな問題は認められなかったものの, ミールラウンドによる食事場面の観察を契機として看護師から相談があり, 義歯不適合が判明し早期の歯科介入につながった. また義歯修理に伴う一時的な義歯不使用期間に対しても多職種で情報共有することで食形態を調整し安全な経口摂取を継続することができた. ミールラウンドは口腔機能上の問題を抽出する有効な機会であり, 食事場面の観察は歯科診療時には把握しにくい口腔機能上の課題を明らかにするうえで有用と考えられた. 以上より, 歯科専門職の参加は利用者の食事支援に寄与する可能性が示唆された.
【まとめ】
栄養管理の現場において食事摂取量や嚥下機能評価だけでなく, 義歯適合状態を含めた口腔機能評価は重要であり, 多職種ミールラウンドへの歯科参加は口腔機能管理と栄養管理を結びつける重要な役割を担うと考えられた.