講演情報

[22-O-J001-04]MNA-SFを用いた栄養スクリーニング導入の試み低栄養のおそれありと判定された入所者への介入効果

*加藤 舞子、岩田 雪未、石川 恵、横田 久美子、浅島 弘志 (北海道 介護老人保健施設ケンゆのかわ)
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【背景】
 高齢者の低栄養は転倒骨折、サルコペニア・フレイル、褥瘡や感染症、入院日数の延長等に大きく影響している。超強化型老健の栄養管理を行う上で、低栄養の改善もさることながら栄養状態良好者の状態維持は最重要課題と言える。
 当施設では、血清アルブミン値による栄養評価の妥当性について再検討を行い、昨年度より栄養状態の指標としての使用を見直したことを契機に、Mini Nutritional Assessment-Short Form(以下、MNA-SF)の導入に至った。本研究は、日常の栄養管理の範囲内で実施可能であり、今後の栄養ケアの質向上にもつながる内容と考えている。
【目的】
 本研究の目的は、見逃されている低栄養リスク者に対して早期介入が有効かどうかを検証することである。
 これまでの研究で、MNA-SFは高齢者の低栄養やフレイルの早期発見に有用であることが報告されている。また、栄養補助食品などの介入によって、体重や栄養状態が改善する可能性も示されている。一方、現在当施設で行っている通常栄養スクリーニング(以下、通常スクリーニング)で低リスクと判定された入所者の中に、低栄養のおそれがある入所者が実際に潜在しているかどうかについては、十分に検討されていない。通常スクリーニングで低リスクと判定された入所者の中から、更にMNA-SFを用いて低栄養のおそれがある入所者を抽出し、栄養介入を行い経過観察することで、早期介入の有効性について検証する。なお、通常スクリーニングの評価項目はBMI、体重減少率、血清アルブミン値、食事摂取量、栄養補給法、褥瘡の有無であり、MNA-SFの評価項目は、過去3ヶ月間での食事量減少、過去3ヶ月間での体重減少、移動能力、過去3ヶ月間での急性疾患や強いストレスの有無、神経・精神的問題の有無、BMIである。
【方法】
■対象
 ・2026年4月時点の入所者153名
■栄養スクリーニング
 ・通常スクリーニング実施後、MNA-SFを施行
 ・通常スクリーニングで低リスク:73名(48%)
 ・73名のうちMNA-SFで低栄養のおそれあり:42名(58%)
■研究対象
 ・上記42名のうち40名(2名は退所)
 ・対象者の平均年齢は86.5±7.2歳、女性32名(80%)、男性8名(20%)、平均要介護度2.7±1.2
■群分け
介入群:20名
 ・管理栄養士によるアセスメントを実施
 ・食事量調整または栄養補助食品付加により1日200kcalのエネルギー付加を実施
非介入群:20名
 ・疾患状況や栄養状態等を考慮し、介入を実施せず経過観察
■介入期間
 ・2026年4月~7月(4カ月間)
■評価項目
 ・体重
 ・BMI
 ・食事摂取量
 ・MNA-SFスコア
■統計解析
 ・群間比較には対応のないt検定、群内比較には対応のあるt検定(いずれも両側検定)を用い、有意水準は5%未満とした。
【結果】
 研究開始2か月後の中間評価では、介入群において体重は45.3±4.4kgから46.2±4.6kgへ増加し(p=0.012)、BMIは19.8±1.1kg/m 2 から20.3±1.3kg/m 2 へ有意に増加した(p=0.009)。一方、食事摂取量は97.3±3.9%から98.1±2.6%(p=0.374)、MNA-SFスコアは9.8±0.8点から10.2±1.0点(p=0.110)と有意な変化は認められなかった。非介入群において体重は51.9±8.7kgから52.0±8.8kg(p=0.810)、BMIは22.6±2.8kg/m 2 から22.6±2.8kg/m 2 (p=0.940)、食事摂取量は96.6±5.8%から97.0±4.4%(p=0.777)、MNA-SFスコアは10.6±0.8点から10.6±1.6点(p=1.000)であり、いずれの評価項目にも有意な変化は認められなかった。なお、本研究は継続中であり、本報告は現時点における中間解析結果である。
【考察】
 本研究では、通常スクリーニングで低リスクと判定された入所者のうち58%がMNA-SFで低栄養のおそれありと判定され、従来のスクリーニングのみでは把握が困難な低栄養リスク者の存在が明らかとなった。このことから、MNA-SFは低栄養リスク者の抽出に有用である可能性が示唆された。
 また、研究開始時の群間比較では、介入群は非介入群と比較して体重およびBMIならびにMNA-SFスコアが有意に低値であり、より低栄養リスクの高い集団であったと考えられた。しかし、そのような対象者に対して1日200kcalのエネルギー付加を実施した結果、中間評価において体重およびBMIの有意な改善が認められている。一方、食事摂取量に有意な変化は認められなかったことから、本介入は入所者の摂取状況に大きな影響を与えることなく実施可能であったと考えられた。また、MNA-SFスコアは改善傾向を示したものの有意差には至らなかった(p=0.110)。MNA-SFは体重変化や食事摂取量に加え、活動性や健康状態等を含めた包括的な評価指標であることから、栄養状態の改善には一定の期間を要することが考えられ、継続的な支援の重要性が示された。
【結語】
 MNA-SFの導入により、通常スクリーニングでは抽出されなかった低栄養リスク者を把握することができた。また、介入群は非介入群と比較して開始時の体重およびBMIならびにMNA-SFスコアが有意に低値であったにもかかわらず、中間評価において体重およびBMIの有意な改善が認められた。MNA-SFを活用した栄養管理は低栄養リスク者の早期発見および栄養状態改善に有用である可能性が示唆された。本研究は継続中であり、今後は介入効果の更なる検証を行うとともに、より実践的な栄養ケア体制の構築を目指していきたい。