講演情報

[22-O-L003-02]サ高住から自宅復帰した症例~訪問リハの役割~

*遠藤 明子 (茨城県 介護老人保健施設くるみ館)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【はじめに】
 現在、サ高住への訪問リハ件数が増加している。実際、くるみ館訪問リハの登録人数の約2割をしめている現状。サ高住の訪問リハは、家族との関りが少なく、施設職員ともこちらから働きかけなければ連携不足となりやすい環境である。また、目標設定は、施設内(ない)でのADL能力の向上や介助量の増加予防を中心とし、施設外(がい)での生活について支援することは少ない。このようなサ高住での訪問リハの関りの中で自宅に復帰された症例を経験したので報告する。
【症例】
 症例は70歳代女性。頚椎症性脊髄症術後。回復期病棟に転院し、3か月後にサ高住に退院。ADLは歩行器を使用し入浴以外は自立。本人は自宅復帰を強く希望していた。
【経過】
 退院後の訪問リハビリ契約時に家族から「帰ってきてほしいけど今の能力では無理」との声があった。ADLほぼ自立であるご本人の能力とご家族の認識に乖離があった。入居後の週末、本人と家族で週末に自宅へ外出したと事後報告があった。本人によれば上がり框の昇降に苦労し、家族から「ますます無理」と言われたと。意欲の低下がみられた。さらに、サ高住内でコロナウイルスの流行により行動制限がかかり、居室内のみの生活となり、食欲や意欲の低下から能力低下が懸念された。
【取り組み】
この状況を打破するため、CMに訪問リハから相談。CMは担当した時点でサ高住入居が決定していたという認識。訪問リハからは、現段階で自宅で過ごす能力はあるという評価と、今後能力の低下が懸念されることを説明。自宅に本人を連れ出す家族はどのような状態ならば自宅での生活が可能なのか家族の意向を確認したいことなどを伝えた。相談の結果「自宅で」担当者会議を実施。本人同席で家屋調査も実施し、家族の不安や思いを確認することで課題を明確にした。また、本人の能力を家族に伝える機会とした。家族の不安は①玄関の昇降②自宅内での歩行器の使用③日中独居になる環境だった。家族の懸念する課題を汲み取り、一つずつクリアしたことで家族の不安も払しょくされ、サ高住入所から3か月後に自宅へ復帰となった。自宅でも訪問リハを継続し、簡単な調理や洗濯、散歩を再開するまでになった。
【考察】
 歩行器を使用していたとはいえなぜ、自宅復帰を希望し、能力もあった利用者がサ高住へ退院したのだろうか?そこにはコロナ禍の制限による連携不足があったと考える。面会制限により家族が本人とコミュニケーションが取れず、本人の能力をしっかり把握できなかったことで自宅での生活をイメージできなかったことが大きいと感じている。医療機関も家屋調査ができない環境や、カンファレンスの人数制限など情報がとりづらかったことは想像に難くない。わたしたち在宅サービスも課題を共有することが制限され、シームレスとはいいがたい状況であった。多くの論文も面会制限により「家族が本人の能力を把握出ない状況」などの情報共有不足や家屋調査が行えず住宅環境の情報不足を指摘している。一方で、高齢者住宅財団の研究によればサ高住の退去理由の多くは「死亡による退去」や「医療機関への入院」とある。自宅に復帰した今回の症例はあくまでも稀と考えられる。サ高住から自宅へ復帰するという『ポジティブな退去』を実現した今回の症例は、サ高住での訪問リハビリテーションの介入が自宅復帰に向け、視野を広げる必要があるケースがあることを示唆している。また、セラピストが老健くるみ館から自宅復帰する事例を経験していたノウハウが利用できたことも強みだったと考える。
【まとめ】
 サ高住の訪問リハは、家族と接する機会が少なく、施設職員ともこちらから働きかけなければ連携することが難しいのが現状。また、訪問リハの目標設定は、施設内で終始している。今回、本人家族の希望が強く、協力も得られたことで自宅に復帰した症例を経験した。希望があればサ高住から自宅復帰への関りもできることが分かった。その中で医療機関と在宅サービスとの連携の大切さを再認識した症例であった。退院時の連携・情報共有は課題である。昨年の介護報酬の改定ではこの課題に対し、リハ実施計画書の内容把握の義務化や退院時共同指導加算の新設がなされた。くるみ館のみならず、全体の課題となっていることは言うまでもない。自分たちで情報を取りに行き積極的に動くことを続けていきたいと思う。最後に今回の症例は、サ高住での訪問リハの役割を再考する経験にもなった。役割の大前提として本人のADL能力を高め、自立支援を行うこと、リエイブルメントを目指すことはもちろんだ。次にサ高住では予防的な関りも大切である。入院退去となるリスクを軽減し生活を継続させるための予防的な関りが重要と考える。サ高住職員との連携も行っていく。次に、本人家族が希望すれば自宅への復帰も視野に入れ関わる必要があることが今回の症例で示唆された。最後に、情報共有・連携が必要不可欠で大変重要である。訪問リハからも積極的に提案を行い、動くことが大きな流れを生むことを実感している。これからも訪問リハの役割を意識しながらサ高住の利用者に関わっていきたいと思う。