講演情報

[23-P-P2Q-05]声を価値に変える通所リハ実践:紹介しやすさを再設計

*江橋 浩平 (秋田県 介護老人保健施設八乙女荘)
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【はじめに】
 当施設は入所定員90名、通所リハビリテーション定員9名の介護老人保健施設である。通所リハでは稼働率低下が課題であった。通所リハは在宅生活の継続、生活機能の維持・向上、家族支援、居宅介護支援事業所との連携など、地域包括ケアシステムの中で重要な役割を担う。しかし、稼働率が低い状態は、地域に必要な通所リハ資源を十分に届けられていない状態とも捉えられる。一方、当初は具体的な対策が十分に整理されていなかったため、関係者の声を把握し、当施設通所リハの強みと課題を明確にすることから取り組みを開始した。本取り組みでは、居宅ケアマネジャーの紹介行動を阻害する「情報不足」と「手続き摩擦(利用開始までの負担)」に着目し、紹介しやすさを高める介入を設計・実践した。

【目的】
 本取り組みでは、マーケティング視点を、売上向上目的の宣伝活動ではなく、相手の立場に立ち、必要な情報や価値を届ける考え方として捉えた。通所リハの価値を必要な利用者へ届けるため、居宅ケアマネジャーへのアンケートを主軸に、利用者家族および職員の意見も補足的に確認し、居宅ケアマネジャーが説明・相談しやすい価値提供のあり方を再設計することを目的とした。

【対象・方法】
 近隣および現在利用のある居宅介護支援事業所9事業所39名の居宅ケアマネジャーを対象に、令和7年8月にアンケートを実施し、36名から回答を得た(回収率92.3%)。紹介経験は「あり」19名、「なし」17名であった。質問項目は、利用者・家族の反応、当施設の強み・課題、紹介しやすい点・しにくい点、期待する役割や連携とした。回答は「強み」「課題」「解決策」「その他」に分類し、紹介・利用判断に必要な情報を整理した。また、利用者家族11名、職員7名にもアンケートを実施し、結果を補足的に確認した。実践は同年9月から開始し、令和7年4~8月と令和7年9月~令和8年1月の対策前後5か月間の平均稼働率と平均登録人数を比較した。参考値として、令和6年度の同期間も同様に比較した。

【倫理的配慮】
 アンケート結果は個人名や事業所名が特定されない形で集計した。発表時も個人情報保護に十分配慮し、写真や事例を使用する場合は本人および関係者の同意を得ることとした。

【結果】
 居宅ケアマネジャーからは、リハビリ専門職の在籍、医師との連携、個別リハビリ、継続した担当者支援、少人数で落ち着いた環境、医学的管理とリハビリが一体で提供される点などが強みとして挙げられた。一方、居宅ケアマネジャーからみた課題として、利用開始時の手続きの多さ、診断書作成等の費用負担、送迎範囲の分かりにくさ、リハビリ内容や活動内容が外部へ伝わりにくいこと、他サービスとの差別化の不明瞭さ、空き状況の情報不足などが挙げられた。利用者家族からは、歩行の安定、会話の増加、見守り負担軽減などの意見がみられた。職員からは、個別リハや医療職連携を強みとする一方、情報発信不足、役割分担、業務の見える化を課題とする意見が挙げられた。
 これらを踏まえ、居宅介護支援事業所への営業活動を基盤に、送迎範囲の周知、見学案内資料やリハビリ・活動場面の写真付き資料の作成、相談から利用開始までの流れの整理等を行った。また、訪問が必要な利用者には自宅を訪問してサービス説明を行い、「施設に来なければ相談できない」状態から「自宅で相談できる」形へ転換し、利用開始までのハードル低減に努めた。各取り組みには担当を設け、複数名で確認しながら月1回以上のミーティングで進捗を共有した。その結果、営業時の話題提供や説明材料として資料を活用でき、相談・見学問い合わせ、利用開始につながる事例がみられた。平均稼働率は令和7年4~8月の37.4%から令和7年9月~令和8年1月の53.1%へ上昇し、平均登録人数も12.0人から14.2人へ増加した。一方、参考値として確認した令和6年度同期間では、平均稼働率は39.3%から37.6%、平均登録人数は14.6人から14.0人であり、大きな改善はみられなかった。

【考察】
 本取り組みにより、稼働率低下への対応を、単なる営業活動ではなく、居宅ケアマネジャーの声を基盤とした価値提供の再設計として整理することができた。特に、紹介しやすさを阻害する要因として情報不足と利用開始までの負担を把握し、説明・相談・利用開始までの導線を整備したことが、居宅ケアマネジャーの説明負担や紹介時の不安を軽減し、相談・提案しやすい状態につながった可能性がある。居宅ケアマネジャーは利用者・家族へサービスを提案し、意思決定を支援する存在であり、説明しやすい情報提供は意思決定支援にもつながると考えられる。また、家族・職員の回答は、「利用後の変化」や「サービス内容の見える化」の必要性を裏付ける結果であった。チラシや写真付き資料は単独の広報物ではなく、営業活動における対話のきっかけとして機能した。人対人の関係性を基盤に情報提供を行うことで、居宅ケアマネジャーが相談・提案しやすい状態につながったと考えられる。一方、利用増加に伴い業務負担増加も予測されるため、今後は業務の見える化と改善を進め、質と安全を担保した持続可能な運営体制の構築が必要である。

【まとめ】
 居宅ケアマネジャーへのアンケートを主軸に、利用者家族および職員の声も補足的に確認することで、当施設通所リハの強みと課題を把握した。居宅ケアマネジャー視点で情報提供や見学案内、送迎範囲の周知、活動内容とリハビリの見える化、訪問による相談支援を行ったことで、稼働率および登録人数に改善傾向がみられた。本取り組みは、関係者の声を価値提供へ変換した実践である。今後は質と安全を担保した持続可能な通所リハ運営を目指す。また、この考え方は入所サービスを含む老健全体のサービス改善にも応用可能である。