講演情報
[22-P-D001-05]ポジティブケアで「できないこと」より「できること」ポジティブケアで目指す自立支援と職員のストレス軽減
*池上 輝、三代 訓子、松井 瑞穂 (福井県 介護老人保健施設アクール若狭)
(目的) 認知症専門棟において、職員は認知症の中核症状や周辺症状への対応に日々追われ、時に暴言暴力や介護抵抗を受け職員のストレス増大を招く一方、ADLが低下を誘発し、周辺症状の増悪につながり、悪循環に陥りやすい。アクール若狭4階においてもその傾向がみられ、利用者の自立支援が進まず、周辺症状の軽減も難しく、職員の負担も大きい。この状況を改善するために、近年注目されている「ポジティブケア」に取り組んだ。(方法)➀ 認知症専門棟介護職員に対してストレス反応やいろいろな介助場面・認知症の利用者に対応する際のネガティブ感情についてのアンケート調査を実施。(ポジティブケア学習前の8月とポジティブケア実施後の12月の2回)➁ 認知症専門棟介護職員全員がポジティブケアに関する学習を行う。(資料の閲覧)(9月)➂ ポジティブケアを重点的に行う利用者の選定とBPSD25Qの実施。(10月)➃ ポジティブケアの実践…「できないこと」より「できること」に着目する、肯定的な言葉かけを行う、傾聴と共感をポジティブケアの3つの柱として取り組む。選定した2名の利用者の言動をポジティブな視点でとらえた記録を毎日行う。(10月~11月)⑤ ポジティブケア実施後、選定した利用者2名のBPSD25Qの実施。(結果・分析・考察)➀ ポジティブケアを重点的に実施した2名の利用者の状態変化事例 A氏 女性 84歳 アルツハイマー型認知症 介護度3 障害高齢者自立度A1 認知症自立度3bBPSD25Q 実施前 〔重症度44点 負担度24点〕 実施後 〔重症度24点 負担度 15点〕事例 B氏 女性 93歳 アルツハイマー型認知症 介護度4 障害高齢者自立度B2 認知症自立度4BPSD25Q 実施前 〔重症度58点 負担度35点〕 実施後 〔重症度36点 負担度16点〕➁ 介護職員のストレス反応やいろいろな介助場面・認知症の利用者に対応する際のネガティブ感情の変化ストレス反応の項目ではポジティブケア実施後に疲労感やイライラに対するストレス反応は少し減っている。ケアを行う際のネガティブ感情については通常の介助の場面では強いネガティブ感情(怒りやいらいら)を持つ人は減少している。アンケートの回答結果から、暴言暴力や介護抵抗など職員の心身に危険が及びやすい言動に対してはポジティブに捉えることが難しく、ポジティブケアの効果は薄いと考えられる。 一方、記憶障害、失認、失行、見当識障害など認知症の中核症状に対しては、比較的ポジティブに捉えることができ、ポジティブケアの効果がみられた。アンケート調査を行った8月と12月では利用者の状況が異なり、常時見守りや離床センサー使用増加、介護抵抗や暴言・暴力のある利用者が増加したことで、対応する際のネガティブ感情が増加した一因となったのではないかと考えられる。(まとめ)ほとんどの職員が利用者の行動を「できない」「困った言動」「問題行動」などネガティブに捉えていたが、ポジティブケアの観点から、「こういうことができるのか」「何かしたい気持ちがあるんだな」「自分の意思が 伝えられるんだな」という風に考えることが増えた。また以前は「できないこと」に対して何をしたらよいか考えて対応していたが、今は「できること」に目を向けることで利用者のペースに合わせた介助が出来るようになってきた。一方、ポジティブケアの解釈が職員によって違ってしまい、大げさにほめたりして嫌みのように聞こえるとの意見もあり、ポジティブケアの知識の習得や実践方法に課題を残した。何でもポジティブに捉えるのは難しいことだが、利用者・スタッフともに笑顔で心穏やかにいられるように今後もポジティブケアを継続していく必要がある。
