講演情報
[22-P-R001-02]外部委託によるデイサービス機能訓練の導入過程と成果
*遠藤 加奈、西牧 侑矢 (福島県 社団医療法人呉羽会介護老人保健施設ガーデニア)
【はじめに・目的】
厚生労働省の患者調査によれば、病院における平均在院日数は年々短縮傾向にあり、地域包括ケアシステムの推進に伴いこの傾向は今後も続くと考えられる。これにより、急性期治療を終えた後も継続したリハビリテーションを必要とする利用者が、退院後早期から通所介護等の生活期の場でサービスを利用するケースが増えており、通所介護事業所が担うべき役割やニーズは変化してきている。しかし、多くの通所介護事業所には理学療法士・作業療法士(以下PT・OT)等のリハビリテーション専門職が配置されておらず、利用者一人ひとりの身体機能や動作能力に応じた質の高い機能訓練を提供することには限界がある。専門職が不在のまま、こうした利用者層の変化への対応は職員に委ねられているのが実情である。今回、通所介護事業所からの依頼を受け、医療依存度の高い利用者への助言や生活全般を見渡した継続的なアプローチを行うため、当法人のPT・OTが定期的に訪問支援する業務委託契約を締結した。支援にあたっては、専門職が不在でも生活の質改善を目的とした機能訓練が提供できる体制の構築を主目標とし、個別機能訓練加算の算定が可能となる体制の構築を付帯目標として取り組みを進めたため、その経過と今後の課題を報告する。
【方法】
2024年10月から2026年6月までの期間、当施設のPT・OTが月2回程度の頻度で対象の通所介護事業所を訪問した。その際、通所介護事業所の機能訓練指導員が、PT・OTの指示を受けながら生活の質改善を目的とした機能訓練が毎日提供できるよう、体制構築と職員指導を行った。併せて、個別機能訓練加算の算定時に求められる、個別機能訓練計画書や実施記録の作成、進捗状況の評価といった業務が可能となるシステムを、通所介護事業所と共同しながら作成した。また、加算算定が可能となる体制が整った段階で、PT・OTの介入に対するアンケート(5件法+自由記載)を実施し、満足度の確認を行った。
【結果】
利用者の状態を把握するため、全利用者の身体機能や動作能力をPT・OTが評価した。評価結果をもとに、課題解決に必要となる機能訓練をPT・OTが選定し、利用日ごとに上肢・体幹筋トレ、下肢筋トレ、下肢巧緻運動、バランス練習、個別リハビリの5グループに分類した。個別リハビリ以外は、動作能力等に応じて5名程度の小集団を作成した。実施にあたっては、グループごとに実施マニュアルを作成、機能訓練指導員はマニュアルに従い機能訓練を提供できるようにした。また、実施方法マニュアルは、グループごとに2種類のメニューを作成し、状況に応じて機能訓練指導員が選択できるようにした。機能訓練指導員の教育にあたっては、まずPT・OTの機能訓練を見学し、次に模倣、最終的に単独で実施できるよう段階を踏んで指導した。
個別機能訓練加算の算定に向けては、実施記録をパソコンで入力するシステムを作成、2025年11月より運用を開始した。個別機能訓練計画書の作成と進捗状況の評価は、PT・OTが3ヵ月に1回の評価時に行い、相談員と共有することとした。2026年6月より事業所は個別機能訓練加算の算定を開始した。
また、加算算定が可能となる体制が整った段階で、利用者と職員に対して満足度アンケートを実施した。対象者は利用者(n=30名)と職員(n=6名)で、「リハビリを取り組むようになって良かったですか?」という質問に対して「大変良い」「良い」と回答した利用者は87%、職員は100%、「リハビリの効果を感じていますか?」という質問に対して「とても感じている」「感じている」「やや感じている」と回答した利用者は74%、職員は100%であった。
【考察】
動作能力別のグループ分けにより集団機能訓練の難易度を調整したことで、専門職が常駐しない環境でも、利用者の状態に応じた機能訓練の提供が可能となった。職員からADL介助や機能訓練に関する声掛けが自発的に生まれた点に加え、満足度アンケートの「リハビリを取り組むようになって良かったですか?」と「リハビリの効果を感じていますか?」という項目では多くの利用者・職員から肯定的な評価が得られた点は、この体制が職員・利用者双方に受け入れられていることを表している。しかしその一方で、今回のアンケートで出た意見として、「専門職に相談できる機会が欲しい」「リハビリを始めてから良くなっているか、専門職に直接話を聞きたい」という声も聞かれた。これは、ある程度体制構築ができてからは、事業所職員が選定した、状態が変化した利用者を中心に評価を実施していたのもあり、関わり方が偏っていたことや、利用者1人1人に対して直接的にフィードバックを行えていないため、利用者自身が実感を持ちにくく、利用者のアンケート結果では74%と少し低い値になったのではないかと考えられる。また、加算算定に向けては業務量の増加や記録システムの変更が課題であったが、外部からの支援だけでは解消できず、事業所内部での業務分担の見直しが必要となった。
今後は、算定開始後も職員が中心となって計画書の見直しや記録を継続できているかを確認しながら、必要に応じて当施設PT・OTが介入する頻度を調整し、加算算定の継続と質の維持を図っていく。加えて、本取り組みの主目標である生活の質改善をより客観的に検証するため、また利用者自身が効果を実感しやすくなるよう、今後は標準化されたQOL評価指標であるSF‐12を定期的に測定していくことが課題となる。
【倫理的配慮】
本報告にあたり、対象者またはその家族に趣旨を説明し、同意を得た。
厚生労働省の患者調査によれば、病院における平均在院日数は年々短縮傾向にあり、地域包括ケアシステムの推進に伴いこの傾向は今後も続くと考えられる。これにより、急性期治療を終えた後も継続したリハビリテーションを必要とする利用者が、退院後早期から通所介護等の生活期の場でサービスを利用するケースが増えており、通所介護事業所が担うべき役割やニーズは変化してきている。しかし、多くの通所介護事業所には理学療法士・作業療法士(以下PT・OT)等のリハビリテーション専門職が配置されておらず、利用者一人ひとりの身体機能や動作能力に応じた質の高い機能訓練を提供することには限界がある。専門職が不在のまま、こうした利用者層の変化への対応は職員に委ねられているのが実情である。今回、通所介護事業所からの依頼を受け、医療依存度の高い利用者への助言や生活全般を見渡した継続的なアプローチを行うため、当法人のPT・OTが定期的に訪問支援する業務委託契約を締結した。支援にあたっては、専門職が不在でも生活の質改善を目的とした機能訓練が提供できる体制の構築を主目標とし、個別機能訓練加算の算定が可能となる体制の構築を付帯目標として取り組みを進めたため、その経過と今後の課題を報告する。
【方法】
2024年10月から2026年6月までの期間、当施設のPT・OTが月2回程度の頻度で対象の通所介護事業所を訪問した。その際、通所介護事業所の機能訓練指導員が、PT・OTの指示を受けながら生活の質改善を目的とした機能訓練が毎日提供できるよう、体制構築と職員指導を行った。併せて、個別機能訓練加算の算定時に求められる、個別機能訓練計画書や実施記録の作成、進捗状況の評価といった業務が可能となるシステムを、通所介護事業所と共同しながら作成した。また、加算算定が可能となる体制が整った段階で、PT・OTの介入に対するアンケート(5件法+自由記載)を実施し、満足度の確認を行った。
【結果】
利用者の状態を把握するため、全利用者の身体機能や動作能力をPT・OTが評価した。評価結果をもとに、課題解決に必要となる機能訓練をPT・OTが選定し、利用日ごとに上肢・体幹筋トレ、下肢筋トレ、下肢巧緻運動、バランス練習、個別リハビリの5グループに分類した。個別リハビリ以外は、動作能力等に応じて5名程度の小集団を作成した。実施にあたっては、グループごとに実施マニュアルを作成、機能訓練指導員はマニュアルに従い機能訓練を提供できるようにした。また、実施方法マニュアルは、グループごとに2種類のメニューを作成し、状況に応じて機能訓練指導員が選択できるようにした。機能訓練指導員の教育にあたっては、まずPT・OTの機能訓練を見学し、次に模倣、最終的に単独で実施できるよう段階を踏んで指導した。
個別機能訓練加算の算定に向けては、実施記録をパソコンで入力するシステムを作成、2025年11月より運用を開始した。個別機能訓練計画書の作成と進捗状況の評価は、PT・OTが3ヵ月に1回の評価時に行い、相談員と共有することとした。2026年6月より事業所は個別機能訓練加算の算定を開始した。
また、加算算定が可能となる体制が整った段階で、利用者と職員に対して満足度アンケートを実施した。対象者は利用者(n=30名)と職員(n=6名)で、「リハビリを取り組むようになって良かったですか?」という質問に対して「大変良い」「良い」と回答した利用者は87%、職員は100%、「リハビリの効果を感じていますか?」という質問に対して「とても感じている」「感じている」「やや感じている」と回答した利用者は74%、職員は100%であった。
【考察】
動作能力別のグループ分けにより集団機能訓練の難易度を調整したことで、専門職が常駐しない環境でも、利用者の状態に応じた機能訓練の提供が可能となった。職員からADL介助や機能訓練に関する声掛けが自発的に生まれた点に加え、満足度アンケートの「リハビリを取り組むようになって良かったですか?」と「リハビリの効果を感じていますか?」という項目では多くの利用者・職員から肯定的な評価が得られた点は、この体制が職員・利用者双方に受け入れられていることを表している。しかしその一方で、今回のアンケートで出た意見として、「専門職に相談できる機会が欲しい」「リハビリを始めてから良くなっているか、専門職に直接話を聞きたい」という声も聞かれた。これは、ある程度体制構築ができてからは、事業所職員が選定した、状態が変化した利用者を中心に評価を実施していたのもあり、関わり方が偏っていたことや、利用者1人1人に対して直接的にフィードバックを行えていないため、利用者自身が実感を持ちにくく、利用者のアンケート結果では74%と少し低い値になったのではないかと考えられる。また、加算算定に向けては業務量の増加や記録システムの変更が課題であったが、外部からの支援だけでは解消できず、事業所内部での業務分担の見直しが必要となった。
今後は、算定開始後も職員が中心となって計画書の見直しや記録を継続できているかを確認しながら、必要に応じて当施設PT・OTが介入する頻度を調整し、加算算定の継続と質の維持を図っていく。加えて、本取り組みの主目標である生活の質改善をより客観的に検証するため、また利用者自身が効果を実感しやすくなるよう、今後は標準化されたQOL評価指標であるSF‐12を定期的に測定していくことが課題となる。
【倫理的配慮】
本報告にあたり、対象者またはその家族に趣旨を説明し、同意を得た。
