講演情報
[22-O-D001-02]収集癖のある入所者に向き合って
*冨樫 寿美、藤井 利夫、松浦 友美 (山形県 医療法人徳洲会 介護老人保健施設あかね)
はじめに
数年前に入所された方が徐々に認知症が進行し、使用済みのトイレットペーパーや、ペーパーホルダーについているロールごとをポケットに入れ、トイレットペーパーを折りたたみ尿取りパッドのように使うことに固執するようになった。その結果、他入所者もトイレットペーパーが無いことに不安を覚え、前もって数回分を確保することが増え、フロア全体のトイレットペーパーの消費も増えていった。
そこで、収集した物をその都度回収するだけではなく、日常生活の中で本人の役割や楽しみを見出し自信をもってもらう支援をすることで、トイレットペーパーの収集を減らすことはできないかと考え、実践したことをここに報告する。
Ⅰ 研究目的
収集癖のある認知症への対応を見直し、その人らしく楽しみのある生活を送れるようサポートが出来る。
Ⅱ 研究方法
1 研究対象者
女性 89歳 要介護度1
障害高齢者ランク A2
認知症高齢者ランク Ⅲa
改定長谷川式スケール 5点 (入所時18点)
既往歴:平成30年5月アルツハイマー型認知症の診断
A D L :食事・移動:見守り 排泄:一部介助
収集物:飲水時の飲み終えたコップ、紙パック牛乳のストロー、配膳時の小皿やスプーンと食札、トイレットペーパー
2 倫理的配慮
研究趣旨・研究内容を症例以外で使用しないこと、個人名が第三者に特定されないことがない配慮をすること、参加は自由意志であり拒否における不利益はないこと、並びに本研究の目的と内容を本人・家族に説明し、口頭と書面にて同意を得た。本研究はあかね倫理委員会の承諾を得た。
3 期間
令和7年7月1日~令和7年12月27日
4 実施内容
1)収集する物の把握
2) トイレ使用時、誘導時リハビリパンツの汚染確認
3) 本人用コップに専用のフタを準備
4) テレビ体操、集団体操、洗濯物たたみ
5) 雑誌や写真集を用いた回想法
6) フロア全体のトイレットペーパーの消費量の把握
Ⅲ 結果
7月~8月
トイレ使用時は毎回トイレットペーパーを1度に3~4メートル程巻き取り、巻き取った物を広げて小分けにし、綺麗に畳み直す習慣があった。研究開始時期には、時々汚れた物を食事時に出してコップのフタ代わりにすることもあった。
収集癖対応について安心感を与える対応を職員で統一し、「収集行為を否定しない」「集めた事実や努力を認める」「収集量を共感する」「収集の目的や理由をおしえてもらう」「勝手に捨てない」「趣味や得意なことに取り組んでもらう」を意識した声かけや関わりを行った。収集する 理由を対象者の会話や行動から探るが、明確な理由はみつけられなかった。しかし、対象者専用のコップのフタを用意したことで、汚れたトイレットペーパーを出さずに自分でコップにフタをのせる習慣へ変わった。
課題として、トイレに行く回数が変わらず、トイレットペーパーの収集量も大きな変化がなかった。
9月~10月
トイレに近い席で、1時間に3~5回トイレへ行くが、行動観察したところ毎回排泄はなかった。トイレ以外にも意識が向くように席からテレビが見やすく、職員が声かけしやすい席に変更した。ホールの席を変更したことで、職員との日常会話が増えて席を立つ回数が減った。職員と一緒にテレビ体操、集団体操を毎日続けたことで日課となり、テレビをつけると自分から前に出てきて体を動かしてくれるようになった。
また、夜間も目覚めるとトイレと居室を行き来する回数が多かったため、居室をステーション近くに変更した。トイレに起きてきた時は、時間を伝えたり安心して眠るような声かけを行ったことで、朝まで良眠することが増えた。
収集量も徐々に減り、他入所者も常にトイレットペーパーがある状態に安心し、確保しておく必要がなくなったため、フロア全体のトイレットペーパーの消費量が減少していった。
職員とのコミュニケーションが増えると笑顔も増え、穏やかに過ごせていたことから、趣味や得意なことに取り組んでもらい、生活に楽しみを持てるような関わりを増やしていくこととした。
11月~12月
家族からの情報収集や日常会話の中から、手作業や人との関りが好きだったことがわかり、洗濯物たたみを行う時間を確保し、雑誌や写真集を用いた回想法も試みた。回想法には興味を示されず続けなかったが、洗濯物たたみは最後まで集中し取り組めていた。
この時期には、日中も夜間もトイレに向かう回数が減り、過剰な量のトイレットペーパー収集がなくなった。また、自分の役割ができ、対象者の笑顔がさらに増えた。
Ⅳ 考察
トイレットペーパーを集める行動を無理にやめさせるのではなく、「安心できる関り」を大切にしたことが、良い変化につながったと考えられる。職員が行動を否定せず、気持ちを受け止める声掛けをしたことで、不安な気持ちが少しづつ落ち着いていったと思われる。
また、専用のコップのフタを用意するなど、環境を整えたことで汚れたトイレットペーパーを使用せずに済むようになり、行動が置き換えられていった。結果としてトイレットペーパーの使用量が減ったと考えられる。
席の位置を変えたり、職員との会話や体操の時間を増やしたことで、トイレ以外のことにも意識が向き、席を立つ回数も減った。夜間も安心できる声掛けや居室移動を行ったことで睡眠が安定し、日中の落ち着きにもつながった。
さらに、洗濯物たたみなど得意なことをお願いすることで、役割ができ、笑顔が増えた。
安心できる環境と、その人らしく過ごせるような関りをチームで続けていくことが重要だと考える。
Ⅴ 結論
介護する側は、認知症の方の収集癖は困った行動ととらえ、ストレスを感じている。介護する側の都合で対応することは、認知症状・BPSDの悪化を招くだけでなく、利用者の尊厳も傷つけてしまう。今回の事例から学んだことを情報共有を行い、本人が落ち着く環境を考え、協力体制を整え、ケアを実践してゆきたい。
数年前に入所された方が徐々に認知症が進行し、使用済みのトイレットペーパーや、ペーパーホルダーについているロールごとをポケットに入れ、トイレットペーパーを折りたたみ尿取りパッドのように使うことに固執するようになった。その結果、他入所者もトイレットペーパーが無いことに不安を覚え、前もって数回分を確保することが増え、フロア全体のトイレットペーパーの消費も増えていった。
そこで、収集した物をその都度回収するだけではなく、日常生活の中で本人の役割や楽しみを見出し自信をもってもらう支援をすることで、トイレットペーパーの収集を減らすことはできないかと考え、実践したことをここに報告する。
Ⅰ 研究目的
収集癖のある認知症への対応を見直し、その人らしく楽しみのある生活を送れるようサポートが出来る。
Ⅱ 研究方法
1 研究対象者
女性 89歳 要介護度1
障害高齢者ランク A2
認知症高齢者ランク Ⅲa
改定長谷川式スケール 5点 (入所時18点)
既往歴:平成30年5月アルツハイマー型認知症の診断
A D L :食事・移動:見守り 排泄:一部介助
収集物:飲水時の飲み終えたコップ、紙パック牛乳のストロー、配膳時の小皿やスプーンと食札、トイレットペーパー
2 倫理的配慮
研究趣旨・研究内容を症例以外で使用しないこと、個人名が第三者に特定されないことがない配慮をすること、参加は自由意志であり拒否における不利益はないこと、並びに本研究の目的と内容を本人・家族に説明し、口頭と書面にて同意を得た。本研究はあかね倫理委員会の承諾を得た。
3 期間
令和7年7月1日~令和7年12月27日
4 実施内容
1)収集する物の把握
2) トイレ使用時、誘導時リハビリパンツの汚染確認
3) 本人用コップに専用のフタを準備
4) テレビ体操、集団体操、洗濯物たたみ
5) 雑誌や写真集を用いた回想法
6) フロア全体のトイレットペーパーの消費量の把握
Ⅲ 結果
7月~8月
トイレ使用時は毎回トイレットペーパーを1度に3~4メートル程巻き取り、巻き取った物を広げて小分けにし、綺麗に畳み直す習慣があった。研究開始時期には、時々汚れた物を食事時に出してコップのフタ代わりにすることもあった。
収集癖対応について安心感を与える対応を職員で統一し、「収集行為を否定しない」「集めた事実や努力を認める」「収集量を共感する」「収集の目的や理由をおしえてもらう」「勝手に捨てない」「趣味や得意なことに取り組んでもらう」を意識した声かけや関わりを行った。収集する 理由を対象者の会話や行動から探るが、明確な理由はみつけられなかった。しかし、対象者専用のコップのフタを用意したことで、汚れたトイレットペーパーを出さずに自分でコップにフタをのせる習慣へ変わった。
課題として、トイレに行く回数が変わらず、トイレットペーパーの収集量も大きな変化がなかった。
9月~10月
トイレに近い席で、1時間に3~5回トイレへ行くが、行動観察したところ毎回排泄はなかった。トイレ以外にも意識が向くように席からテレビが見やすく、職員が声かけしやすい席に変更した。ホールの席を変更したことで、職員との日常会話が増えて席を立つ回数が減った。職員と一緒にテレビ体操、集団体操を毎日続けたことで日課となり、テレビをつけると自分から前に出てきて体を動かしてくれるようになった。
また、夜間も目覚めるとトイレと居室を行き来する回数が多かったため、居室をステーション近くに変更した。トイレに起きてきた時は、時間を伝えたり安心して眠るような声かけを行ったことで、朝まで良眠することが増えた。
収集量も徐々に減り、他入所者も常にトイレットペーパーがある状態に安心し、確保しておく必要がなくなったため、フロア全体のトイレットペーパーの消費量が減少していった。
職員とのコミュニケーションが増えると笑顔も増え、穏やかに過ごせていたことから、趣味や得意なことに取り組んでもらい、生活に楽しみを持てるような関わりを増やしていくこととした。
11月~12月
家族からの情報収集や日常会話の中から、手作業や人との関りが好きだったことがわかり、洗濯物たたみを行う時間を確保し、雑誌や写真集を用いた回想法も試みた。回想法には興味を示されず続けなかったが、洗濯物たたみは最後まで集中し取り組めていた。
この時期には、日中も夜間もトイレに向かう回数が減り、過剰な量のトイレットペーパー収集がなくなった。また、自分の役割ができ、対象者の笑顔がさらに増えた。
Ⅳ 考察
トイレットペーパーを集める行動を無理にやめさせるのではなく、「安心できる関り」を大切にしたことが、良い変化につながったと考えられる。職員が行動を否定せず、気持ちを受け止める声掛けをしたことで、不安な気持ちが少しづつ落ち着いていったと思われる。
また、専用のコップのフタを用意するなど、環境を整えたことで汚れたトイレットペーパーを使用せずに済むようになり、行動が置き換えられていった。結果としてトイレットペーパーの使用量が減ったと考えられる。
席の位置を変えたり、職員との会話や体操の時間を増やしたことで、トイレ以外のことにも意識が向き、席を立つ回数も減った。夜間も安心できる声掛けや居室移動を行ったことで睡眠が安定し、日中の落ち着きにもつながった。
さらに、洗濯物たたみなど得意なことをお願いすることで、役割ができ、笑顔が増えた。
安心できる環境と、その人らしく過ごせるような関りをチームで続けていくことが重要だと考える。
Ⅴ 結論
介護する側は、認知症の方の収集癖は困った行動ととらえ、ストレスを感じている。介護する側の都合で対応することは、認知症状・BPSDの悪化を招くだけでなく、利用者の尊厳も傷つけてしまう。今回の事例から学んだことを情報共有を行い、本人が落ち着く環境を考え、協力体制を整え、ケアを実践してゆきたい。
