講演情報

[22-O-L008-07]老健におけるHAL腰タイプの継続利用に関する課題集団リハビリテーション治療の活用に注目して

*松井 香1、伊勢 眞樹2 (岡山県 1. 介護老人保健施設 福寿荘、2. 医療法人誠和会 倉敷紀念病院リハビリテーション部)
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【はじめに】
当施設では,2018年よりHAL®(CYBERDYNE社製,Hybr/id Assistive Limb®)腰タイプ自立支援用(腰HAL)を導入し,リハビリテーション(リハ)治療に使用してきた.高齢者の動作支援や介護予防を目的として他施設でも導入されているが,介護老人保健施設(老健)においては導入後に利用頻度が減少していくケースがみられ,当施設も例外ではない.これまでのHAL研究では,身体機能改善や安全性,即時効果,実施可能性を検討した研究が多い一方で,なぜ継続利用されないのか,現場で定着する条件は何か等のリハ治療への応用の可能性に関する研究は少ない.岩切ら1,2)は高齢者施設における介護機器の使用状況を調査し,機器が十分に活用されていない背景として,操作の煩雑さ,使用に要する時間,セラピスト(Th)教育の不足,保管場所や管理体制などの問題を指摘している.また,先行研究では,個別リハは回数や対象が限定されやすいのに対し,集団運動(集団リハ)の導入は,複数人への同時施行による効率化や機器利用の促進をもたらすだけでなく,個別法で不足しがちな治療時間や介入機会を増加させる効果も指摘されており,施設内での継続利用を促す有効なアプローチであると述べている3).そこで今回,腰HALを活用した治療をThに定着させるための取り組みの一つとして,集団使用する機会を設け,「集団リハ」として運用を開始した.その中で見えてきた腰HALの継続利用に関する課題を検討する.
【方法】
対象は当老健に勤務しているTh10名と当老健に入所中の利用者12名(男女比4:8,平均年齢88.6歳,平均介護度3.0)で,支持物があれば起立動作と立位保持が自己にて可能な者とした.方法は利用者3名対Th3名のグループを作成し,腰HALを使用した集団リハを週1回40分の介入を4週間実施した.運動内容はneuroHAL-fitの4動作(上体起こし,リーチ動作,立ち上がり,スクワット)を個人の能力に合わせて5~20回,1~2set実施した.利用者に対する評価は,継続率と満足度をLikert Scaleにて10段階で評価し,Thに関しては集団リハ実施前後での半構造化インタビューによるアンケート調査を無記名にて実施した.実施前は,①腰HALを使用した治療経験の有無,②経験症例数,③現在実施している症例数,④継続して腰HALが出来ている理由,⑤現在治療に使用していない理由,⑥腰HALを使用した治療経験がない理由の6項目を質問した.また,実施後には①今回の治療の感想,②今後HALを活用したいか,またその理由の3項目を質問した.
【結果】
利用者の継続率は90.0%で,中断理由は体調不良1名,退所が1名だった.Likert Scaleはリハ治療毎に聴取し,1回目は8.0(6.5-10.0) [以下,中央値(四分位範囲)],2回目は7.5(5.0-10.0),3回目は5.0(5.0-8.0),4回目は5.0(5.0-7.0)であり,施行当初の方が満足度は高い傾向にあった.
Thへの実施前のアンケートにてTh10名のうち,腰HAL使用した治療の未経験者は1名だった.今までの症例経験数の平均3例に対し,現在実施している人数は平均0.12例とかなり少なかった.継続してHALが出来ている理由については,治療効果が分かりやすいが一番多く,次いで利用者の受け入れが良好,装着や操作が簡単との意見があった.一方で治療に使用していない理由としては,対象疾患がいない,装着や操作が大変という意見や,機械の扱いが苦手で自信がないとの意見もあった.実施後のアンケートでは,集団リハについては利用者の受け入れが良く,治療に自信がついた,1人では自信がないが集団であれば使いやすかったとの意見が聞かれた.また,実際に実施したことで装着や操作の大変さ,自分自身が機械の扱いが苦手だとのネガティブな意見も聞かれたが,今後も腰HALを活用した治療を展開していきたいとの意見が全Thから聞かれた.
【考察】
集団リハの継続率は90%と高く,運動の満足度を問うLikert Scaleに関しては回数を重ねるごとに満足度が満足から普通に移行する傾向にあった.これは運動を重ねることで運動習慣が身につき,習慣化されたことが要因であると考えた.先行研究4,5,6)では,高齢者に対する集団運動は,精神・認知面の改善,意欲の向上,そして社会的なつながりの広がりまで,心身と社会性の両面に包括的な好影響をもたらすとされている.今回の集団リハでも,①仲間と一緒に運動することで義務感が楽しさに変わり,互いに刺激し合うことで1人よりも運動意欲が継続しやすくなる,②同じ目的を持つことで仲間意識が芽生え,コミュニティに属する安心感や社会参加の実感を得られる,③ 励まし合いながらメニューをやり切ることで成功体験を積み重ねやすく,それが強い達成感と満足度につながったと考えた.
Thのアンケートから腰HAL使用に対するネガティブな印象も前向きに改善できた.これは,先行研究にもあるように集団リハを実施することで操作の煩雑さ,使用に要する時間,Th教育の不足,保管場所や管理体制などの問題を改善できたためと考えた.今後も継続して利用していくために,個別の介入に併せて集団リハの実施を継続していくことで利用者の満足を高めるとともに,Thの腰HALの使用を標準化していく必要がある.アンケートの結果から,症例の選定に難渋しているとの意見もあったため,標準化された患者選定プロトコルを導入することで,介入内容の均質化や質の向上を図ることが出来るとともに,施設における腰HALの継続的な運用を支える基盤になる可能性があると考えた.