講演情報

[22-P-L003-01]訪問・通所リハビリの連携により生活を支援した一症例

*中野 珠里、田村 祐樹 (和歌山県 介護老人保健施設みくるま)
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【はじめに・目的】
独居生活を継続するためには,本人が望む生活や社会参加を実現できるように支援することが重要である.今回,「家でお風呂に入りたい」「一人で歩いて買い物に行きたい」という希望を持つ独居高齢者に対し,訪問リハビリと通所リハビリが連携して情報共有を行いながら支援した.その結果,自宅での入浴を獲得し,買い物などの生活をより安全にできるようになったため報告する.
【症例情報】
症例は80歳代女性,要介護2の独居で生活している.X年Y月Z日に自転車で転倒し,左恥骨骨折・仙骨骨折と診断され自宅で保存加療していたが,再受診で転位を認め,Z+22日に入院となる.入院中に呂律困難の訴えありラクナ梗塞と診断され内服治療開始.その後も運動麻痺はなく発症前後でのADLに大きな変化は認めなかったため退院となった.退院翌日から週1回の通所リハビリと週2回の訪問リハビリが開始した.
退院後より自宅内の移動は独歩や伝い歩きにて可能であり,調理や洗濯,掃除など屋内の家事動作は自立しており活動的であった.自宅環境は玄関用の据置型手すりや介護用ベッドをレンタルし,浴室には手すりが設置済みであり,退院前に住宅環境の調整を行っていた.通所リハビリ利用開始時は入浴介助加算IIによる入浴介助を利用していた.また,退院直後は自身で買い物に行けておらず,興味関心チェックシートからも「家でお風呂に入りたい」「一人で歩いて買い物にいきたい」と希望があったため,訪問リハビリと通所リハビリで目標を共有し介入を開始した.
初期評価ではManual Muscle Test上肢左右4下肢左右3~4,握力右18kg左15kg,br/unnstrome Recovery Stage上肢V手指V下肢V,Time up&go Test14.6秒(独歩),5m歩行テスト通常6.3秒最大5.3秒,5回立ち上がりテスト12.8秒,改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下,HDS-R)27点,Functional Independence Measure(以下,FIM)は119点(入浴動作4点,浴槽への移動5点)であった.入浴動作においては,移動時の転倒リスクがあるため介助を要していた.
【経過】
退院後より,自宅でシャワー浴は自立していたものの,本人や家族が浴槽の跨ぎ動作に対し不安があることから,浴槽に入ることは行えていなかった.そのため通所リハビリで入浴介助を利用していた.そこで,訪問リハビリでは浴室環境の評価や動作訓練を実施し,通所リハビリでは動作訓練に加え,下肢筋力訓練や立位バランス訓練を継続して行った.訓練を継続する中で,自宅でも自身で浴槽に入るようになったため,その都度入浴状況を確認しながら,両サービスで情報共有を行い,継続的に動作訓練を実施した.その結果,安全な入浴が可能となり,退院後10カ月後で入浴介助を終了した.より安全に自宅で入浴ができたことにより,本人からは「家のお風呂に入れるようになってうれしい」との発言が聞かれた.
一方,買い物は退院後しばらくして,介護タクシーの利用や杖歩行にて実施していたものの,自宅から800mの距離にあるスーパーまで片道約1時間を要していたことや,疲労感も強く何度か転倒もしていた.また,購入した荷物の運搬にも負担を感じていた.そこで,訪問リハビリにて実際の移動環境を評価し,移動時の安定性向上および荷物運搬の負担軽減を目的に屋外用シルバーカーの選定を行った.屋外用シルバーカー導入後は自宅周辺や買い物ルートでの歩行訓練を実施し,実用性を確認しながら使用方法の定着を図った.同時に通所リハビリでも屋外歩行訓練を実施した.その結果,移動時の安定性が向上し,荷物の運搬も容易となった.また,必要時に座面で休憩できるようになったことで移動の負担も軽減し,導入後は転倒なく買い物を継続できており,本人からは外出に対する不安の軽減を認める発言も聞かれた.
再評価では,身体機能評価やHDS-Rは維持できており,FIMは124点と改善がみられた.また,興味関心チェックシートからは「一人でお風呂に入る」「買い物」「散歩」項目が「してみたい」から「している」へ好転的な変化を認めた.
【考察】
本症例は独居であり,日常生活に必要な行為を自身で継続することが在宅生活の継続の前提となっていた.退院後より自宅でのシャワー浴は自立していたものの,浴槽へのまたぎ動作に不安があることから通所リハビリで入浴介助を実施していた.訪問リハビリによる実際の自宅環境での介入・評価や通所リハビリでの身体機能向上に向けた介入により,退院後実施できていなかった浴槽またぎ動作の安定性向上につながり自宅での入浴が可能となった.また,買い物は実施できていたものの,転倒を繰り返しており,活動を安全に継続することが課題であった.屋外用シルバーカーの導入により歩行の安定性向上だけでなく,荷物運搬や休憩場所の確保が可能となったことで,移動に対する身体的な負担や転倒への軽減につながった.その結果,安全に入浴が行えるようになっただけでなく,買い物など長年継続してきた生活をより安全に行うことが可能となったと考える.
本症例を通じて,自宅環境の評価を行う訪問リハビリと,動作訓練や身体機能への介入を行う通所リハビリが,それぞれの役割を活かしながら目標達成に向けて連携することで,本人の望む生活の継続につながったと考える.