講演情報
[22-O-L002-01]高齢化地域における通所リハビリテーションの構造改革多角的なアプローチによる一日平均利用者数75名の達成
*岩下 直人 (福岡県 医療法人ふらて会 介護老人保健施設やすらぎ)
【目的】
当施設が位置する北九州市八幡東区は高齢化率が36.5%¹⁾に達し、全国平均を大きく上回る超高齢化地域である。その為、通所リハビリテーション(以下、通所リハ)の顧客獲得競争は極めて激しい。当施設(定員80名)では令和2年10月の段階で一日平均利用者数が49.7名に留まっており、中長期的な経営安定化に向けた現場改革が急務であった。そこで「一日平均利用者数65名」という目標を掲げ、環境刷新、リハ会議での評価の可視化、多職種連携を展開した。今回、目標達成に至った令和7年4月~令和8年4月の13ヶ月間の動態分析を行い、成果と今後の課題を検証する。
【対象・方法】
「既存利用者の満足度維持・向上」と「新規利用者獲得に向けた外部連携の強化」を二大柱とした。
1.既存利用者の満足度維持・向上に向けた内部環境刷新
〇リハビリ室の変更:床材の張り替えやマシン機器の増設により「ジムのような空間」を構築し、男性顧客のニーズ獲得と幅広い年齢層が「通いたい」と思える環境へ刷新した。
〇リハビリ会議のDX化:AI歩行分析システムを用いて歩行状態を可視化し、他職種への容易な情報共有と、家族・介護支援専門員(以下、ケアマネ)への安心感の提供、利用者本人の視覚的な理解とリハビリへの動機付けを徹底した。
〇アクティビティの充実:マンネリ化を防ぐため「eスポーツ」「園芸・畑」「アミューズメント」等の取り組みを開始し、多職種による協働運営で職員のチームワーク形成を図った。
2.外部との連携強化:営業時は新しいパンフレット等を持参し、ケアマネとの対話からニーズを抽出した。受入れ体制の柔軟化や対応窓口の拡大により課題だった「利用開始までの期間短縮(迅速な受け入れ体制の確立)」に努め、要支援者に対しては具体的な利用回数の提案(週2~3回利用)などを行うことで、大幅な新規利用者の獲得へ繋げた。
3.リスクマネジメント:利用者急増に伴う事故リスクに対し、歩行評価(TUG)を定期更新して全スタッフで共有した。さらにインカムによるリアルタイムな情報共有でタイムリーな危機対応に努めた。
【結果】
1.利用者数の推移:取り組み開始時の一日平均利用者数49.7名、改革途上の(令和7年4月)60.4名に対し、令和8年4月時点には75.8名へと大幅に増加した。
2.新規受け入れ件数:令和6年4月~令和7年3月の新規受け入れ件数が54件に対し、令和7年4月~令和8年3月の1年間で112件(2.07倍)へと倍増し、令和8年4月の単月でも9件を記録した。
3.平均介護度の推移:要支援層の積極的な受け入れが進んだ結果、平均介護度は(令和7年4月)1.8から(令和8年4月)1.6へと低下した。
【考察】
本取り組みの成果は、多角的なアプローチの総和である。環境刷新が満足度を高め、AI歩行分析システムの活用により他職種間での歩行状態の可視化が容易となった。多職種協働のアクティビティ運営が職員間の連携体制を強固にし、対応窓口の拡大や受入れ体制の迅速化等の営業がケアマネからの信頼を生み、新規獲得数の倍増と利用者数の増加に繋がった。平均介護度の低下は、新規獲得に伴う「全体の利用分母の拡大」と「稼働率維持向上」が大きく上回り、総報酬の増収と経営安定化を両立した。一方、データ分析から新たな課題も浮き彫りとなった。月別・曜日別の動態分析から、水曜日と木曜日の利用者が少ないことが判明した。木曜日は入院等に起因する一時的な稼働数の低下が要因でもあるが、水曜日は私用による欠席の多さが目立つ。これら水曜日と木曜日の課題に対しては、個別アプローチや振替提案の徹底による「稼働率の平準化」が今後の鍵となる。また、利用者数増加に伴う環境的限界(椅子や机の数、リハビリ室やフロア空間の問題)に対しても、動線の見直しやプログラムの分散化、タイムスケジュールの再編成といったソフト面の二次対策を迅速に講じる必要がある。
【結論】
本取り組みは、通所リハにおいて「多角的な内部環境刷新」と「データに基づく外部連携」の融合が、大幅な利用者数増加と経営安定化をもたらす強力な戦略であることを実証した。今後は稼働の偏りや環境的限界に対し、個別アプローチによる平準化とプログラムの改革を推進する。これにより量から質への進化を遂げ、持続可能な通所リハの標準モデルとして地域包括ケアシステムへの貢献を目指す。
【引用文献】1)総務省:令和2年国勢調査結果
当施設が位置する北九州市八幡東区は高齢化率が36.5%¹⁾に達し、全国平均を大きく上回る超高齢化地域である。その為、通所リハビリテーション(以下、通所リハ)の顧客獲得競争は極めて激しい。当施設(定員80名)では令和2年10月の段階で一日平均利用者数が49.7名に留まっており、中長期的な経営安定化に向けた現場改革が急務であった。そこで「一日平均利用者数65名」という目標を掲げ、環境刷新、リハ会議での評価の可視化、多職種連携を展開した。今回、目標達成に至った令和7年4月~令和8年4月の13ヶ月間の動態分析を行い、成果と今後の課題を検証する。
【対象・方法】
「既存利用者の満足度維持・向上」と「新規利用者獲得に向けた外部連携の強化」を二大柱とした。
1.既存利用者の満足度維持・向上に向けた内部環境刷新
〇リハビリ室の変更:床材の張り替えやマシン機器の増設により「ジムのような空間」を構築し、男性顧客のニーズ獲得と幅広い年齢層が「通いたい」と思える環境へ刷新した。
〇リハビリ会議のDX化:AI歩行分析システムを用いて歩行状態を可視化し、他職種への容易な情報共有と、家族・介護支援専門員(以下、ケアマネ)への安心感の提供、利用者本人の視覚的な理解とリハビリへの動機付けを徹底した。
〇アクティビティの充実:マンネリ化を防ぐため「eスポーツ」「園芸・畑」「アミューズメント」等の取り組みを開始し、多職種による協働運営で職員のチームワーク形成を図った。
2.外部との連携強化:営業時は新しいパンフレット等を持参し、ケアマネとの対話からニーズを抽出した。受入れ体制の柔軟化や対応窓口の拡大により課題だった「利用開始までの期間短縮(迅速な受け入れ体制の確立)」に努め、要支援者に対しては具体的な利用回数の提案(週2~3回利用)などを行うことで、大幅な新規利用者の獲得へ繋げた。
3.リスクマネジメント:利用者急増に伴う事故リスクに対し、歩行評価(TUG)を定期更新して全スタッフで共有した。さらにインカムによるリアルタイムな情報共有でタイムリーな危機対応に努めた。
【結果】
1.利用者数の推移:取り組み開始時の一日平均利用者数49.7名、改革途上の(令和7年4月)60.4名に対し、令和8年4月時点には75.8名へと大幅に増加した。
2.新規受け入れ件数:令和6年4月~令和7年3月の新規受け入れ件数が54件に対し、令和7年4月~令和8年3月の1年間で112件(2.07倍)へと倍増し、令和8年4月の単月でも9件を記録した。
3.平均介護度の推移:要支援層の積極的な受け入れが進んだ結果、平均介護度は(令和7年4月)1.8から(令和8年4月)1.6へと低下した。
【考察】
本取り組みの成果は、多角的なアプローチの総和である。環境刷新が満足度を高め、AI歩行分析システムの活用により他職種間での歩行状態の可視化が容易となった。多職種協働のアクティビティ運営が職員間の連携体制を強固にし、対応窓口の拡大や受入れ体制の迅速化等の営業がケアマネからの信頼を生み、新規獲得数の倍増と利用者数の増加に繋がった。平均介護度の低下は、新規獲得に伴う「全体の利用分母の拡大」と「稼働率維持向上」が大きく上回り、総報酬の増収と経営安定化を両立した。一方、データ分析から新たな課題も浮き彫りとなった。月別・曜日別の動態分析から、水曜日と木曜日の利用者が少ないことが判明した。木曜日は入院等に起因する一時的な稼働数の低下が要因でもあるが、水曜日は私用による欠席の多さが目立つ。これら水曜日と木曜日の課題に対しては、個別アプローチや振替提案の徹底による「稼働率の平準化」が今後の鍵となる。また、利用者数増加に伴う環境的限界(椅子や机の数、リハビリ室やフロア空間の問題)に対しても、動線の見直しやプログラムの分散化、タイムスケジュールの再編成といったソフト面の二次対策を迅速に講じる必要がある。
【結論】
本取り組みは、通所リハにおいて「多角的な内部環境刷新」と「データに基づく外部連携」の融合が、大幅な利用者数増加と経営安定化をもたらす強力な戦略であることを実証した。今後は稼働の偏りや環境的限界に対し、個別アプローチによる平準化とプログラムの改革を推進する。これにより量から質への進化を遂げ、持続可能な通所リハの標準モデルとして地域包括ケアシステムへの貢献を目指す。
【引用文献】1)総務省:令和2年国勢調査結果
