講演情報
[23-P-F001-01]プロと挑む令和の米“創動”生活歴と地域文化を活かした稲作活動の実践
*松永 朋泰、須貝 真梨果 (新潟県 介護老人保健施設マチュアハウス中条)
【はじめに】
当施設は、新潟県北部の胎内市にある介護老人保健施設である。胎内市の主要産業の1つでもある農業は、稲作が主であり、当施設にも稲作経験を有する利用者が多くいる。
今回、余暇活動の充実のために、稲作のプロでもある利用者と一緒に稲作に取り組んだ。生活期リハビリとしての側面も持った活動となり、その内容について考察を加えて報告する。
【施設紹介】
当施設の入所定員は100名、通所リハビリテーション(以下、デイケア)定員は24名である。入所利用者は、平均年齢89.9歳、平均介護度3.05、平均在所日数550日(令和7年4月時点)である。高齢利用者が多く、在所日数の遷延により、日中の活動が固定化されやすい現状があった。特に車椅子や歩行器を使用して移動する利用者は、施設裏庭で行っている畑作業に参加することが難しく、屋外活動への参加機会も限られていた。
【方法】
令和7年度より、移動に制限のある利用者でも参加しやすいよう、施設中庭でバケツを使用した稲作を企画した。加えて、参加利用者は限られてしまうが、裏庭の花壇を活用した稲作も行った。田植えから脱穀・精米まで全て手作業で行い、入所及びデイケア利用者に部分的に参加してもらった。
5月には田植えを行った。バケツの田植えには、入所利用者6名、デイケア利用者3名に参加してもらい、中には車椅子で参加した方や認知症の診断を受けた方、リハビリの拒否が続いていた方などがいた。花壇の田植えでは、独歩での移動が自立しているデイケア利用者3名に協力してもらった。バケツ・花壇ともに、稲作未経験の利用者もいた。6~9月には草取り・水やりを行った。主に職員が管理を行ったが、個別リハビリやデイケアのレクリエーションの一環として水やりを行うこともあった。10月に稲刈り・脱穀を行った。花壇の稲は、水の管理不足やカメムシ被害等により収穫には至らず、バケツ稲のみの稲刈りを行った。稲の数が少なかったため、入所利用者1名に協力してもらった。稲刈り前に栄養科から収穫祭として獲れた米を使っておにぎりを利用者に振舞うのはどうかと提案を受け、11月には収穫祭を行った。
【結果】
田植えを中心にバケツを使用した稲作には、車椅子や歩行器を使用する利用者にも参加してもらうことができた。加えて、帰宅願望が強く不穏状態となり、レクリエーションやリハビリの拒否が続いていた元農家の利用者も田植えには参加してくれるという結果も得られた。ほかにも、90歳を越えて初めて体験する作業を楽しんでくれた利用者や稲作未経験者に田植えのコツを教える認知症利用者もいた。
田植え後も、車椅子を使用している利用者も含む稲作経験者の利用者には、稲の状態を定期的に見てもらい、水や肥料の管理、草取りなどについて助言をもらった。また、それ以外の利用者からも「稲の成長はどうだ?」「稲刈りが楽しみだ。」といった声が多く聞かれ、個別リハビリの際には稲の観察を目的に屋外歩行を希望する利用者もいた。
一方で、特定の職員数名のみが主に草取り・水やりを行っており、管理不足による水不足や高温などの問題により根腐れを起こした稲もあった。ほかにも花壇稲はカメムシ被害の影響もあり、収穫できない状況になった。通常業務との両立は難しく、職員全体で関わる体制作りには課題があったが、一部では週末の水やりを担ってくれた職員や栄養科のように稲作から更に発展させた企画を提案してくれる職員もいた。
手作業で十分な精米を行うことも難しく、収穫量も僅かだったため、収穫祭のおにぎりは、新米の中にぽつぽつと玄米が混ざっている程度のものになってしまったが、利用者からは、「新米はやっぱりおいしい、香りが良い。」、「ここで獲れたお米なんですか!」と好評な反応が得られた。
【考察】
今回の活動を通して、移動に制限のある利用者にも屋外活動への参加機会を提供することができ、当初の目的だった余暇活動の拡大につながった。それに加えて、リハビリ等への参加拒否が続いた利用者の参加、認知症利用者による役割発揮、生活歴を活かした助言、自発的な屋外歩行の希望など、役割の獲得や活動意欲の増進といった質的変化も認められた。
その背景には、稲作という活動が、長期間にわたり成長過程の変化を共有できること、利用者の生活歴との関連性が高く、経験を活かしやすい活動であったこと、稲の成長過程の変化は新潟県民にとって馴染み深い季節の風物詩であることといった特徴を有していることが影響したと考えている。
一方で、草取り・水やりといった管理の仕組み化、多職種との協力、利用者が役割としての活動を行う機会の不足といった課題も残った。その課題を踏まえて今年度は、曜日毎に特定の利用者に水やり当番を依頼することで利用者主体での活動にできるよう企画を進めている。また、裏庭花壇での稲作を廃止し、中庭で実施するバケツ稲作へ集約することで、利用者が自発的に水やりや稲の観察を行えるよう、環境の調整も行っている。
【まとめ】
当施設において稲作活動は、利用者の生活歴や地域文化との結びつきが強く、役割発揮や活動意欲を促しやすい取り組みだった。また、長期的な成長過程を共有することで、利用者が季節の変化や今後への期待を感じながら生活する契機にもなり得ると考える。これらのことから、今回の稲作活動は生活期リハビリテーションとしての側面も持つ余暇活動になったと言える。
当施設は、新潟県北部の胎内市にある介護老人保健施設である。胎内市の主要産業の1つでもある農業は、稲作が主であり、当施設にも稲作経験を有する利用者が多くいる。
今回、余暇活動の充実のために、稲作のプロでもある利用者と一緒に稲作に取り組んだ。生活期リハビリとしての側面も持った活動となり、その内容について考察を加えて報告する。
【施設紹介】
当施設の入所定員は100名、通所リハビリテーション(以下、デイケア)定員は24名である。入所利用者は、平均年齢89.9歳、平均介護度3.05、平均在所日数550日(令和7年4月時点)である。高齢利用者が多く、在所日数の遷延により、日中の活動が固定化されやすい現状があった。特に車椅子や歩行器を使用して移動する利用者は、施設裏庭で行っている畑作業に参加することが難しく、屋外活動への参加機会も限られていた。
【方法】
令和7年度より、移動に制限のある利用者でも参加しやすいよう、施設中庭でバケツを使用した稲作を企画した。加えて、参加利用者は限られてしまうが、裏庭の花壇を活用した稲作も行った。田植えから脱穀・精米まで全て手作業で行い、入所及びデイケア利用者に部分的に参加してもらった。
5月には田植えを行った。バケツの田植えには、入所利用者6名、デイケア利用者3名に参加してもらい、中には車椅子で参加した方や認知症の診断を受けた方、リハビリの拒否が続いていた方などがいた。花壇の田植えでは、独歩での移動が自立しているデイケア利用者3名に協力してもらった。バケツ・花壇ともに、稲作未経験の利用者もいた。6~9月には草取り・水やりを行った。主に職員が管理を行ったが、個別リハビリやデイケアのレクリエーションの一環として水やりを行うこともあった。10月に稲刈り・脱穀を行った。花壇の稲は、水の管理不足やカメムシ被害等により収穫には至らず、バケツ稲のみの稲刈りを行った。稲の数が少なかったため、入所利用者1名に協力してもらった。稲刈り前に栄養科から収穫祭として獲れた米を使っておにぎりを利用者に振舞うのはどうかと提案を受け、11月には収穫祭を行った。
【結果】
田植えを中心にバケツを使用した稲作には、車椅子や歩行器を使用する利用者にも参加してもらうことができた。加えて、帰宅願望が強く不穏状態となり、レクリエーションやリハビリの拒否が続いていた元農家の利用者も田植えには参加してくれるという結果も得られた。ほかにも、90歳を越えて初めて体験する作業を楽しんでくれた利用者や稲作未経験者に田植えのコツを教える認知症利用者もいた。
田植え後も、車椅子を使用している利用者も含む稲作経験者の利用者には、稲の状態を定期的に見てもらい、水や肥料の管理、草取りなどについて助言をもらった。また、それ以外の利用者からも「稲の成長はどうだ?」「稲刈りが楽しみだ。」といった声が多く聞かれ、個別リハビリの際には稲の観察を目的に屋外歩行を希望する利用者もいた。
一方で、特定の職員数名のみが主に草取り・水やりを行っており、管理不足による水不足や高温などの問題により根腐れを起こした稲もあった。ほかにも花壇稲はカメムシ被害の影響もあり、収穫できない状況になった。通常業務との両立は難しく、職員全体で関わる体制作りには課題があったが、一部では週末の水やりを担ってくれた職員や栄養科のように稲作から更に発展させた企画を提案してくれる職員もいた。
手作業で十分な精米を行うことも難しく、収穫量も僅かだったため、収穫祭のおにぎりは、新米の中にぽつぽつと玄米が混ざっている程度のものになってしまったが、利用者からは、「新米はやっぱりおいしい、香りが良い。」、「ここで獲れたお米なんですか!」と好評な反応が得られた。
【考察】
今回の活動を通して、移動に制限のある利用者にも屋外活動への参加機会を提供することができ、当初の目的だった余暇活動の拡大につながった。それに加えて、リハビリ等への参加拒否が続いた利用者の参加、認知症利用者による役割発揮、生活歴を活かした助言、自発的な屋外歩行の希望など、役割の獲得や活動意欲の増進といった質的変化も認められた。
その背景には、稲作という活動が、長期間にわたり成長過程の変化を共有できること、利用者の生活歴との関連性が高く、経験を活かしやすい活動であったこと、稲の成長過程の変化は新潟県民にとって馴染み深い季節の風物詩であることといった特徴を有していることが影響したと考えている。
一方で、草取り・水やりといった管理の仕組み化、多職種との協力、利用者が役割としての活動を行う機会の不足といった課題も残った。その課題を踏まえて今年度は、曜日毎に特定の利用者に水やり当番を依頼することで利用者主体での活動にできるよう企画を進めている。また、裏庭花壇での稲作を廃止し、中庭で実施するバケツ稲作へ集約することで、利用者が自発的に水やりや稲の観察を行えるよう、環境の調整も行っている。
【まとめ】
当施設において稲作活動は、利用者の生活歴や地域文化との結びつきが強く、役割発揮や活動意欲を促しやすい取り組みだった。また、長期的な成長過程を共有することで、利用者が季節の変化や今後への期待を感じながら生活する契機にもなり得ると考える。これらのことから、今回の稲作活動は生活期リハビリテーションとしての側面も持つ余暇活動になったと言える。
