講演情報

[22-O-L008-06]介護老人保健施設入所者に対すまちなかリハビリの実践―地域で他者とともに活動することの意義― 第一報

*捻金 秀子 (広島県 介護老人保健施設愛生苑)
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【はじめに】我々は、「リハビリテーションに取り組む介護老人保健施設(以下 老健)での活動が施設内に限られていては本来のリハビリテーションを実践する介護事業所として不十分」と考えたが、事業所外での活動に行政から制約を受けて踏み出せずにいた。このような状況下で2004年度厚生労働省研究事業「サテライトデイルームを活用した新しい認知症高齢者に関する調査研究(お出かけ)」を取り組む機会を得た。ここで言う「お出かけ」とは、認知症の状態にあっても歩行可能な老健入所者が「施設外に設けた活動場所(サテライトデイルーム)」へ出かけて行き、昼食づくりや、地域にある商店での買物、神社の清掃ボランティア活動など日常生活活動を行うとともに、それらを通じて地域住民との交流を図る取り組みであり、京都大学大学院の調査チームによる効果測定で「会話量」「無為行為」「食事量」の面で施設内活動に比べて身体面、精神面、介護負担軽減等への効果が報告されている。(第19回全老健大会・京都にて報告済)2015年以降、職員数の減少、新型コロナウイルス感染症蔓延等で取り組みを断念せざるを得なかったが、2025年10月より、この取り組みを再開した。機能訓練と並んで「生活機能の維持・向上の取り組み」は「リハビリ施設」を標榜する老健での主軸活動であると捉えており、この活動が老健における事業活動(加算評価対象)として位置付いた取り組みとなることを望み、現在進行中の状況を発表する。当法人では、介護保険法が謳う目的「尊厳が保持され、有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように」を遂行するため、「できることは自分でできるように支援する」「人と人が関係をもって互いに助け合って生きていけるように支援する」「社会とつながって生きていけるように支援する」へ具体的理念として置き換え、その実践の再構築に取り組んでいる。高齢者においては、集団の中で互いに支え合い活動し、社会とのつながりの維持が、生活の継続を支える重要な要素であると考えている。これまでの「お出かけ」の成果を踏まえ、地域活動および他者とともに活動することの意義に着目し老健入所者を対象に、小グループで地域に出かける活動を実施。当施設では、このような地域を活動の場とし、他者とともに実生活上の活動を行う取り組みを「まちなかリハビリ」(以下 まちなかリハ)と称し実施している。そこで本研究では「まちなかリハ」を実施し、その効果について検証した。【対象】対象は当施設入所中の高齢者10名(男性4名、女性6名、平均年齢84.3±6.8歳)とした。主治医より屋外活動への参加が許可され、研究への同意が得られた者を対象とし、安全な介入が困難と判断された者は除外した。対象者および代諾者に文書および口頭で説明し、書面による同意を取得した。本研究は当施設倫理審査委員会の承認を得て実施した。【方法】まちなかリハは2025年10月より開始し、現在も継続して実施している。本研究では、2025年10月から2026年5月までのデータを解析対象とした。看護師および作業療法士が週3~4回、1回40~60分実施した。評価は介入開始時および3か月ごとに実施し、本報では主要評価項目を抜粋して分析した。身体機能評価として、握力、片足立ち時間、10m歩行試験、2分間足踏み試験、Timed Up and Go test(TUG)。認知機能はMini-Mental State Examination(MMSE)、精神心理機能はGeriatric Depression Scale(GDS)。活動・参加では、地域活動への参加状況ならびに自発的行動や発言の変化を記録。対象者数が少数であったため、記述的に分析した。【結果】MMSEの改善、その後やや低下したものの、介入前と比較して維持された。GDSでは抑うつ傾向の改善を認めた。身体機能では、握力は概ね維持。座位体前屈、片足立ち、2分間足踏みは改善を認めた。活動・参加面では、地域活動への継続的な参加が可能であった。また、利用者同士の会話や自発的発言が増加し、「また行きたい」「次は○○に行きたい」といった発言、利用者間の助け合い行動、自発的な役割行動の拡大を認めた。近隣住民や子どもへの挨拶、地域住民との交流や社会的行動の増加を認めた。施設内では机に伏せて過ごすことが多かった利用者においても、活動中は覚醒水準の向上と活動参加が認められた。【考察】本実践では、小グループで地域を活動のとした実生活上の活動により活動を行うことで、利用者同士が互いに声を掛け合い、助け合う場面が増え、地域で他者とともに活動することは、身体機能への働きかけだけでなく、人との関係性や役割の再構築、活動・参加の促進につながる可能性が示唆された。また、地域住民との交流や社会との接点を持つことで、施設内だけでは得られない社会とのつながりを再構築し、主体性や自己効力感の向上につながった可能性がある。さらには地域で他者とともに活動することが心理面にも良好な影響を及ぼしたと考えられる。近年、老健では在宅復帰、在宅療養支援機能が重視されており、個別的な関わりを求められている。しかし、高齢者の生活を支えるためには、個別アプローチに加え、集団活動や地域とのつながりを活用した支援も重要であると考える。また、本実践のような地域活動を継続するためには、多職種が協働し、利用者の活動と参加を支える体制づくりが重要である。