講演情報

[22-O-D002-07]認知症ケアの深化!仕組化と見える化からわかったこと

*布澤 良太 (大阪府 パナソニック健康保険組合 松下介護老人保健施設はーとぴあ)
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【背景・目的】
 当施設では、開設当初より認知症フロアを設置し、センター方式を活用した個別ケアを実践してきた。しかし、行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:以下BPSD)やケア内容を客観的に評価する機会は限られており、情報共有の仕組み、ケアの効果検証は十分に整備されていなかった。また、認知症高齢者は施設入所に伴うリロケーションダメージなどによりBPSDが出現しやすく、当施設においても入所直後にBPSDを認める利用者が少なくない状況であった。
 そこで、認知症チームケア推進研修で学んだBPSD25Qおよび認知症チームケア推進加算ワークシート(以下、ワークシート)を導入し、BPSDの分析、ケアの仕組化や見える化、効果検証を図るとともに、多職種による認知症チームケア体制を構築した。本取り組みは、介護老人保健施設における認知症チームケア推進の実践報告として、BPSD25Qおよびワークシートの導入効果を病型別に検証し、その有用性と課題について検討した。
【方法】
 導入にあたり認知症フロア職員3名が認知症チームケア推進研修を受講し、BPSD25Qおよびワークシートの活用方法を習得した後、フロア職員へ研修を実施した。認知症ケアのアセスメントからケア実践までの流れは、①入所後1週間センター方式D-3シートを用いて24時間アセスメントを実施②入所1週間後に多職種でBPSD25Qおよびワークシートを評価しカンファレンスを実施③検討したケアを4週間実践④1か月後に再評価⑤必要時に再カンファレンスを実施とした。
 評価対象は2025年4月から2026年3月までに当施設認知症フロアへ入所した31名とした。1か月以内に入院または退所した者は除外した。対象者の内訳は女性21名、男性10名、平均年齢86.5歳、平均要介護度2.6であった。認知症病型はアルツハイマー型認知症7名、脳血管性認知症4名、レビー小体型認知症2名、嗜銀顆粒性認知症2名、病型不詳16名であった。
 評価指標はBPSD25Qの重症度および介護負担度とし、入所1週間後と1か月後の変化を後方視的に比較した。また、ワークシートから抽出された介入内容を分類し実践内容を分析した。統計解析にはt検定を用い、有意水準は5%未満とした。
【結果】
 全対象者31名では、重症度は13.3点から10.5点、負担度は9.1点から7.7点へ低下したが、有意差は認めなかった(重症度:p=0.30、負担度:p=0.54)。
 病型別では、アルツハイマー型認知症において重症度13.1点から9.1点、負担度10.1点から9.5点へ改善し、重症度(p=0.004)、負担度(p=0.004)ともに有意な改善を認めた。脳血管性認知症では重症度17.2点から11.5点(p=0.07)、負担度12.0点から9.5点(p=0.15)、病型不明群では重症度13.1点から8.4点(p=0.19)、負担度8.4点から6.0点(p=0.34)と改善傾向を認めたが有意差は認めなかった。レビー小体型認知症では重症度17.0点から35.0点、負担度10.5点から27.0点へ増加し、嗜銀顆粒性認知症では大きな変化は認めなかった。
 また、入所1週間後および1か月後にBPSD25Qとワークシートを評価する仕組みを構築することができた。ワークシートから抽出された介入内容を分類したところ、排泄・食事・水分摂取・歩行などの基本ケアへの介入、生活歴や趣味を活かした個別ケア、座席調整や職員の関わり方の統一、身体面・心理面・環境面など、多角的なアプローチが認知症ケアに有効であるという結果となった。
【考察】
本取り組みにより、BPSD25Qおよびワークシートを活用した評価から介入、再評価までのプロセスを仕組化し、認知症ケアや効果を見える化したことで、利用者の状態や望む暮らしの実現に向けたケア内容を客観的に評価、共有することで認知症ケアの統一化と継続性の向上につながったと考えられる。
 有意差は認められなかったものの、全体を通して重症度・負担度共に改善したことから、評価・アセスメントを適切に行うことで利用者一人ひとりに合わせたケアが可能となりBPSDの改善に寄与したと考えられる。
 特に、アルツハイマー型認知症では有意な改善が認められたことから、BPSDの要因分析を行い、生活歴や価値観、趣味嗜好を踏まえた個別ケアをチームで実践することの有効性が示唆された。また、過活動型BPSDに対しては役割活動や趣味活動の提供、環境調整などが有効であり、低活動型BPSDに対しては離床支援、歩行促進、生活リハビリ、水分摂取支援などの基本ケアが自発性向上に寄与した可能性が考えられた。
 本取り組みでは病型別に効果を検証したことで、認知症の病態特性に応じたケアの必要性も明らかとなった。一方、レビー小体型認知症では幻視や妄想などの中核症状の進行や変動によりBPSDが増悪しており、基本ケアや個別ケア、環境調整では十分な改善が得られず、病型及び病態特性を踏まえた医学的管理や専門的介入の必要性が示唆された。
【結論】
BPSD25Qおよびワークシートを活用した認知症チームケアは、BPSD評価の仕組化とケアの見える化に有用であり、特にアルツハイマー型認知症においてBPSD軽減への効果が示唆された。また、評価から介入、再評価までの仕組みを構築できたことは、介護老人保健施設における認知症ケアの質向上に寄与すると考えられる。
 今後は症例数を蓄積し病型・病態別分析をさらに深めるとともに、個別ケアの深化や家族を含めた包括的・継続的な認知症チームケア体制の構築を進めていきたい。