講演情報
[22-O-L001-05]通所利用者における介護度改善に関連する要因の検討
*田村 祐樹1、中野 珠里1、石本 泰星2 (和歌山県 1. 介護老人保健施設みくるま、2. 在宅総合ケアセンター赤ひげクリニック)
【目的】
我が国では高齢化の進行に伴い,要介護認定者数および介護給付費は増加しており,介護保険料の負担増加は大きな社会課題となっている.そのため,要介護者における介護度の改善や悪化予防は,利用者の生活機能維持のみならず,介護保険制度の持続可能性の観点からも重要である.
通所リハビリは,要支援・要介護者に対して,心身機能,活動,参加の維持・改善を目的として提供されるサービスであり,介護度改善に寄与することが期待されている.しかし,臨床場面では通所リハビリを利用していても,介護度が改善する者と維持または悪化する者が存在する.そのため,通所リハビリ利用者において,どのような因子が介護度改善と関連するのかを明らかにすることは,介入方針の検討や予後予測に有用である.
介護度変化には,身体機能,認知機能,栄養状態,サービス利用状況など複数の要因が関与すると考えられる.しかしながら,通所リハビリ利用者を対象に,これらの因子と介護度改善との関連を検討した報告は十分ではない.したがって本研究の目的は,通所リハビリ利用者を対象に,介護度改善に関連する要因を明らかにすることである.
【方法】
対象は,当施設の通所リハビリ利用者のうち,介護保険更新時の介護度変化を確認できた74名とした.除外基準は,介護保険の更新が確認できなかった者,利用が終了した者,主要な評価項目に欠損を認めた者とした.対象者は,介護保険更新時の介護度変化に基づき,介護度が改善した者を改善群,介護度が維持または悪化した者を維持・悪化群に分類した.
評価項目は,年齢,性別,開始時介護度,BMI,握力,改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下,HDS-R),短期集中リハビリテーションの実施有無,通所リハビリの利用回数とした.握力は筋力の指標として測定し,HDS-Rは認知機能の評価として用いた.
統計解析では,まず改善群と維持・悪化群の基本特性および評価項目を比較するため,単変量解析を行った.連続変数についてはShapiro–Wilk検定により正規性を確認し,データ分布に応じて対応のないt検定またはMann–WhitneyのU検定を用いた.カテゴリ変数についてはカイ二乗検定を用いた.次に,介護度改善を目的変数としたロジスティック回帰分析を行った.説明変数にはBMI,握力,HDS-R,短期集中リハビリテーションの実施有無,利用回数を投入した.また,年齢,性別,開始時介護度により傾向スコアを作成し,共変量としてモデルに投入した.統計解析はEZRを使用し,統計学的有意水準は5%未満とした.
【結果】
対象者74名のうち,維持・悪化群は50名,改善群は24名であった.単変量解析の結果,BMI,開始時介護度に有意差を認めた.一方,年齢,HDS-R,握力,利用回数,短期集中リハビリテーションの有無,性別には有意差を認めなかった.ロジスティック回帰分析の結果,BMI,握力,HDS-Rが介護度改善と有意に関連した.BMIはオッズ比0.580(95%信頼区間:0.411–0.819),p<0.01であった.握力はオッズ比1.140(95%信頼区間:1.010–1.280),p=0.03であった.HDS-Rはオッズ比1.160(95%信頼区間:1.020–1.330),p=0.03であった.
【考察】
本研究では,通所リハビリ利用者における介護度改善に関連する要因を検討した.その結果,ロジスティック回帰分析において,BMI,握力,HDS-Rが介護度改善と有意に関連した.このことから,通所リハビリ利用者の介護度改善には,栄養状態を反映するBMI,筋力,認知機能が複合的に関与する可能性が示された.
BMIは栄養状態や身体予備能を評価する簡便な指標である.一般的に低BMIは低栄養や筋量低下を反映し,ADL低下や予後不良と関連すると考えられる.一方で,本研究では改善群においてBMIが低い傾向を示した.この結果については,開始時介護度が改善群で高かったことから,介護度改善の余地が大きかった可能性が考えられる.すなわち,低BMIそのものが介護度改善を促進したというよりも,開始時点で介護度が高く,改善可能性を有する利用者が改善群に多く含まれていた可能性がある.また,握力は介護度改善と有意に関連した.
握力は全身筋力や身体機能を反映する指標であり,通所リハビリにおける運動療法の効果やADL改善と関連する可能性がある.本研究において握力が有意な関連を示したことは,介護度改善を目指すうえで,筋力評価および筋力向上を目的とした介入の重要性を示唆する結果と考えられる.BMIと握力の関連を考慮すると,BMIが低値であっても筋力が維持されていれば,リハビリテーションによる改善効果が得られやすく,介護度の改善に寄与した可能性がある.
さらに,HDS-Rも介護度改善と有意に関連した.認知機能は,運動療法への理解,日常生活での行動変容,セルフマネジメント,サービス利用の継続性に影響する可能性がある.そのため,認知機能が比較的保たれている利用者では,リハビリテーション内容の理解や生活場面への汎化が得られやすく,介護度改善につながった可能性がある.
一方,単変量解析ではHDS-Rや握力に有意差を認めなかったが,ロジスティック回帰分析では有意な関連を認めた.これは,年齢,性別,開始時介護度などの背景因子を調整したことで,BMI,握力,HDS-Rの介護度改善に対する関連が示された可能性がある.ただし,本研究は単施設研究であり,対象者数も74名と限られている.また,介護度改善には疾患背景,入院歴,家族支援,生活環境,リハビリ内容,栄養介入の有無など多くの要因が関与する可能性がある.そのため,本研究結果は探索的な知見として解釈する必要がある.
以上より,通所リハビリ利用者における介護度改善には,BMI,握力,HDS-Rが関連する可能性が示された.介護度改善を目指すためには,身体機能に対する介入のみならず,栄養状態や認知機能を含めた多面的な評価と支援が重要であると考えられる.
我が国では高齢化の進行に伴い,要介護認定者数および介護給付費は増加しており,介護保険料の負担増加は大きな社会課題となっている.そのため,要介護者における介護度の改善や悪化予防は,利用者の生活機能維持のみならず,介護保険制度の持続可能性の観点からも重要である.
通所リハビリは,要支援・要介護者に対して,心身機能,活動,参加の維持・改善を目的として提供されるサービスであり,介護度改善に寄与することが期待されている.しかし,臨床場面では通所リハビリを利用していても,介護度が改善する者と維持または悪化する者が存在する.そのため,通所リハビリ利用者において,どのような因子が介護度改善と関連するのかを明らかにすることは,介入方針の検討や予後予測に有用である.
介護度変化には,身体機能,認知機能,栄養状態,サービス利用状況など複数の要因が関与すると考えられる.しかしながら,通所リハビリ利用者を対象に,これらの因子と介護度改善との関連を検討した報告は十分ではない.したがって本研究の目的は,通所リハビリ利用者を対象に,介護度改善に関連する要因を明らかにすることである.
【方法】
対象は,当施設の通所リハビリ利用者のうち,介護保険更新時の介護度変化を確認できた74名とした.除外基準は,介護保険の更新が確認できなかった者,利用が終了した者,主要な評価項目に欠損を認めた者とした.対象者は,介護保険更新時の介護度変化に基づき,介護度が改善した者を改善群,介護度が維持または悪化した者を維持・悪化群に分類した.
評価項目は,年齢,性別,開始時介護度,BMI,握力,改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下,HDS-R),短期集中リハビリテーションの実施有無,通所リハビリの利用回数とした.握力は筋力の指標として測定し,HDS-Rは認知機能の評価として用いた.
統計解析では,まず改善群と維持・悪化群の基本特性および評価項目を比較するため,単変量解析を行った.連続変数についてはShapiro–Wilk検定により正規性を確認し,データ分布に応じて対応のないt検定またはMann–WhitneyのU検定を用いた.カテゴリ変数についてはカイ二乗検定を用いた.次に,介護度改善を目的変数としたロジスティック回帰分析を行った.説明変数にはBMI,握力,HDS-R,短期集中リハビリテーションの実施有無,利用回数を投入した.また,年齢,性別,開始時介護度により傾向スコアを作成し,共変量としてモデルに投入した.統計解析はEZRを使用し,統計学的有意水準は5%未満とした.
【結果】
対象者74名のうち,維持・悪化群は50名,改善群は24名であった.単変量解析の結果,BMI,開始時介護度に有意差を認めた.一方,年齢,HDS-R,握力,利用回数,短期集中リハビリテーションの有無,性別には有意差を認めなかった.ロジスティック回帰分析の結果,BMI,握力,HDS-Rが介護度改善と有意に関連した.BMIはオッズ比0.580(95%信頼区間:0.411–0.819),p<0.01であった.握力はオッズ比1.140(95%信頼区間:1.010–1.280),p=0.03であった.HDS-Rはオッズ比1.160(95%信頼区間:1.020–1.330),p=0.03であった.
【考察】
本研究では,通所リハビリ利用者における介護度改善に関連する要因を検討した.その結果,ロジスティック回帰分析において,BMI,握力,HDS-Rが介護度改善と有意に関連した.このことから,通所リハビリ利用者の介護度改善には,栄養状態を反映するBMI,筋力,認知機能が複合的に関与する可能性が示された.
BMIは栄養状態や身体予備能を評価する簡便な指標である.一般的に低BMIは低栄養や筋量低下を反映し,ADL低下や予後不良と関連すると考えられる.一方で,本研究では改善群においてBMIが低い傾向を示した.この結果については,開始時介護度が改善群で高かったことから,介護度改善の余地が大きかった可能性が考えられる.すなわち,低BMIそのものが介護度改善を促進したというよりも,開始時点で介護度が高く,改善可能性を有する利用者が改善群に多く含まれていた可能性がある.また,握力は介護度改善と有意に関連した.
握力は全身筋力や身体機能を反映する指標であり,通所リハビリにおける運動療法の効果やADL改善と関連する可能性がある.本研究において握力が有意な関連を示したことは,介護度改善を目指すうえで,筋力評価および筋力向上を目的とした介入の重要性を示唆する結果と考えられる.BMIと握力の関連を考慮すると,BMIが低値であっても筋力が維持されていれば,リハビリテーションによる改善効果が得られやすく,介護度の改善に寄与した可能性がある.
さらに,HDS-Rも介護度改善と有意に関連した.認知機能は,運動療法への理解,日常生活での行動変容,セルフマネジメント,サービス利用の継続性に影響する可能性がある.そのため,認知機能が比較的保たれている利用者では,リハビリテーション内容の理解や生活場面への汎化が得られやすく,介護度改善につながった可能性がある.
一方,単変量解析ではHDS-Rや握力に有意差を認めなかったが,ロジスティック回帰分析では有意な関連を認めた.これは,年齢,性別,開始時介護度などの背景因子を調整したことで,BMI,握力,HDS-Rの介護度改善に対する関連が示された可能性がある.ただし,本研究は単施設研究であり,対象者数も74名と限られている.また,介護度改善には疾患背景,入院歴,家族支援,生活環境,リハビリ内容,栄養介入の有無など多くの要因が関与する可能性がある.そのため,本研究結果は探索的な知見として解釈する必要がある.
以上より,通所リハビリ利用者における介護度改善には,BMI,握力,HDS-Rが関連する可能性が示された.介護度改善を目指すためには,身体機能に対する介入のみならず,栄養状態や認知機能を含めた多面的な評価と支援が重要であると考えられる.
