講演情報
[22-O-L002-07]老人保健施設におけるTUG活用の取り組み
*栗原 真一郎 (京都府 老人保健施設いわやの里)
【はじめに】近年、歩行評価のAI活用が注目されており、当施設においてもTime Up & Go test(以下、TUG)の測定を基盤とした歩行解析アプリを導入している。TUGは定量的な移動能力評価として今日に至るまで医療・介護現場で使用されているが、要介護高齢者を対象とした研究は未だ少ない。日本整形外科学会によると、運動器不安定症と診断されるTUGのカットオフ値は11秒と定められているが、要介護高齢者かつ施設環境という条件下においてこの数値の実用性は低かった。また介護業界において、Barthel Indexや長谷川式認知症スケールといった評価手法が介護職に浸透してきた一方で、歩行能力を可視化する手段がないため、リハビリ効果や転倒リスクを説明することの難しさを感じていた。そのため今回は歩行解析アプリを用いて測定したTUG結果と施設内における歩行自立度を参照し、実践的な基準値を引き出すとともに、当施設においてTUGの認知度を高めるために行なってきた取り組みを報告する。
【方法】当施設の長期入所、および通所リハビリにおいて、要介護認定を受けている利用者の中から、歩行を日常的な移動手段とする利用者92名を対象にTUGを測定。測定には歩行解析アプリ Senior Life.AIよりTUG解析(フロント)を使用。歩行自立群と歩行見守り群の2群間をそれぞれ歩行補助具別で対応のないt検定(Welchのt検定)を用いて比較を行い、歩行自立度を判別するためのカットオフ値をROC曲線より算出した。解析には統計ソフトR(ver.4.6.0)を使用し、有意水準は5%未満とした。解析により得られたカットオフ値は利用者のTUG結果と比較し、カンファレンスにて本人、家族、ケアマネジャー、施設職員(医師、看護師、介護職、相談員、リハビリ職)間で共有と検討を行った。
【結果】独歩・杖歩行自立群(n=44)と見守り歩行群(n=17)におけるTUGタイムは見守り歩行群が有意に高値(タイムが遅い)を示した(p<0.01)。歩行自立度を判別するためのTUGのカットオフ値をROC曲線(AUC=0.727)より算出したところ、16.13秒(感度:94.1%、特異度:54.5%)が得られた。一方で、歩行器歩行自立群(n=14)と見守り歩行群(n=17)においては、統計学的有意差には至らず、今回は自立群の平均値として算出された25.4±7.5を便宜上指標として定めた。これら解析結果を利用者のTUG結果と比較し、カンファレンスにて施設内歩行の自立度を判定する根拠として報告を行った。歩行能力を定量化することで、一部利用者から歩行に対する意欲的な発言が見られた。介護職からは、TUGを取り入れたことで利用者の機能変化だけでなく、転倒リスクの把握や、居室の環境設定にも活かされ、必要な生活リハビリを具体的にイメージしやすくなったという意見を受けている。また取り組みを続けていく中で、医師、看護師から利用者のTUG結果の変動や基準値との比較について意見を求められるようになった。
【考察】今回の取り組みにより、対象者が要介護高齢者かつ施設環境という条件下においてもTUGを測定する有用性が確認できた。TUG結果が基準値とどの程度差があるかを明示することで、歩行能力の可視化だけでなく、リハビリ目標を具体的な数値とともに設定することができ、リハビリ計画に対する利用者および多職種の理解を得やすくなった。統計学的有意差に至らなかった歩行器歩行の群に関しては、対象者の歩行自立度判定に他の評価指標を併用する必要性が改めて示唆されたが、施設内平均値を参照することでTUG結果をこれまで以上に活かせるようになった。TUGの測定に使用したSenior Life.AIをはじめとした歩行解析アプリは専門性を問わず、幅広く介護従事者が取り扱うことができ、対象者の歩行能力の一部を簡便に評価することができる。介護現場においてTUGを共通言語化し多職種協議ができれば、身体機能面の課題に対してより関心を持つことができ、利用者の自立支援をさらに強化できると考える。今回は施設内においてTUGの認知度を高めるまでの取り組みとなったが、TUG結果に準じた訓練メニューの提案や、転倒予防策の考案などを今後の展望として取り組んでいきたい。
【方法】当施設の長期入所、および通所リハビリにおいて、要介護認定を受けている利用者の中から、歩行を日常的な移動手段とする利用者92名を対象にTUGを測定。測定には歩行解析アプリ Senior Life.AIよりTUG解析(フロント)を使用。歩行自立群と歩行見守り群の2群間をそれぞれ歩行補助具別で対応のないt検定(Welchのt検定)を用いて比較を行い、歩行自立度を判別するためのカットオフ値をROC曲線より算出した。解析には統計ソフトR(ver.4.6.0)を使用し、有意水準は5%未満とした。解析により得られたカットオフ値は利用者のTUG結果と比較し、カンファレンスにて本人、家族、ケアマネジャー、施設職員(医師、看護師、介護職、相談員、リハビリ職)間で共有と検討を行った。
【結果】独歩・杖歩行自立群(n=44)と見守り歩行群(n=17)におけるTUGタイムは見守り歩行群が有意に高値(タイムが遅い)を示した(p<0.01)。歩行自立度を判別するためのTUGのカットオフ値をROC曲線(AUC=0.727)より算出したところ、16.13秒(感度:94.1%、特異度:54.5%)が得られた。一方で、歩行器歩行自立群(n=14)と見守り歩行群(n=17)においては、統計学的有意差には至らず、今回は自立群の平均値として算出された25.4±7.5を便宜上指標として定めた。これら解析結果を利用者のTUG結果と比較し、カンファレンスにて施設内歩行の自立度を判定する根拠として報告を行った。歩行能力を定量化することで、一部利用者から歩行に対する意欲的な発言が見られた。介護職からは、TUGを取り入れたことで利用者の機能変化だけでなく、転倒リスクの把握や、居室の環境設定にも活かされ、必要な生活リハビリを具体的にイメージしやすくなったという意見を受けている。また取り組みを続けていく中で、医師、看護師から利用者のTUG結果の変動や基準値との比較について意見を求められるようになった。
【考察】今回の取り組みにより、対象者が要介護高齢者かつ施設環境という条件下においてもTUGを測定する有用性が確認できた。TUG結果が基準値とどの程度差があるかを明示することで、歩行能力の可視化だけでなく、リハビリ目標を具体的な数値とともに設定することができ、リハビリ計画に対する利用者および多職種の理解を得やすくなった。統計学的有意差に至らなかった歩行器歩行の群に関しては、対象者の歩行自立度判定に他の評価指標を併用する必要性が改めて示唆されたが、施設内平均値を参照することでTUG結果をこれまで以上に活かせるようになった。TUGの測定に使用したSenior Life.AIをはじめとした歩行解析アプリは専門性を問わず、幅広く介護従事者が取り扱うことができ、対象者の歩行能力の一部を簡便に評価することができる。介護現場においてTUGを共通言語化し多職種協議ができれば、身体機能面の課題に対してより関心を持つことができ、利用者の自立支援をさらに強化できると考える。今回は施設内においてTUGの認知度を高めるまでの取り組みとなったが、TUG結果に準じた訓練メニューの提案や、転倒予防策の考案などを今後の展望として取り組んでいきたい。
