講演情報
[22-O-L001-03]退所時の設定やサービス利用の調整に難渋した事例
*三村 啓介 (茨城県 介護老人保健施設ナーシングホームかたくり)
<はじめに>
当施設は、入所80名に加え、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションを併設し、共同して利用者様の在宅支援に力を入れ運営を行っている。
今回、入所の利用者様で独居生活での自宅復帰を目指すこととなり、本人と支援者の間で思い描いている自宅生活に乖離があることで、退所時の設定や自宅環境の調整、サービス利用に至るまでに難渋した事例について報告する。
<事例情報>
(1) 年齢・性別:70代・男性 (2)要介護認定:要介護2
(3)既往歴:右膿胸、肺化膿症、高血圧、脊柱管狭窄症、不整脈、腰椎変形性側弯症
※脊柱管狭窄症(腰痛が強くなり、令和X年に手術を行う予定であった。)
(4)基本動作:支持物を使用し見守り、移動:車椅子自操可能
(5)ADL:車椅子にて概ね見守り(入浴は一部介助)、認知機能:良好
(6)家族構成:独居生活。妻は別老健に入所中。息子は他県、娘は県内の他市に在住。
(7)性格:タバコとお酒が好き。職人気質な部分あり。運動に対して意欲的。
<入所までの経緯>
もともと妻と2人暮らし。認知症の妻を介護しながら生活されていた。腰痛が強くなり転倒を繰り返していたが、自宅内はフリーハンドと伝い歩きで移動されていた。令和X年9月夜間自宅にて転倒。病院を受診し血胸を認めたものの入院せず帰宅。胸の痛みが続き、数日後に右膿胸、肺化膿症の診断を受け入院。妻は、ご本人様が入院されたことから別老健に入所。その後、治療により状態が安定され、リハビリの継続と脊柱管狭窄症の手術が出来るよう体力を付けたいと希望があり当老健入所される。
<経過>令和X年12月17日~令和X+1年7月29日
○入所初期(12月~2月)
本人の想い:「筋力と体力をつけて早く手術を行い、お家に帰りたい」筋力訓練や歩行訓練を中心に実施。約100mは歩行器歩行が自立で可能となる。歩行での生活は腰痛が強くなってしまうため、生活場面では車椅子を使用。2月に担当医が変更。手術は行わず内服薬を調整し、経過をみていくことになる。
○入所中期(3月~5月)
本人の想い:「手術が出来ないのであればもう家に帰りたい。」「在宅サービスを利用しなくても生活できる」「お酒が飲みたい」「庭の手入れがしたい」「車を運転したい」家族を含めて面談を実施し、手術は行わずに在宅復帰を目指すことになる。腰痛が軽減し4点杖歩行や段差昇降の訓練を開始。自主トレーニングを追加。家屋調査を行い、福祉用具や通所リハビリなど在宅サービスを提案するが受け入れ不良。優先度として、自宅で安全に生活することが重要であることを説明するが、理解が得られず。
○入所後期(6月)
本人の想い:「手すりや洗体椅子など福祉用具は必要ない」生活場面での移動が車椅子から歩行器に変更。15m程度は4点杖歩行が見守りで可能となる。通所リハビリにある機械を使用しての筋力訓練を開始。ご本人様のなかでも筋力が付いてきたことが実感でき、通所リハビリに対してプラスの発言が聞かれ始める。面談を再び実施。家族・支援者側としては在宅サービスを利用して欲しい気持ちがあり、家族の説得もあって、通所リハビリの利用を了承される。車の運転に関しては、家族同乗のもと最初は運転すること、庭の手入れに関しては、手の届く範囲で行い脚立は使用しないことで同意を得る。お酒に関しては、楽しみの1つで辞めることは難しいとの話しあり、深酒だけ注意して欲しいことを伝達。
○退所前(7月)
本人:「家にやっと帰れるな」「通所リハビリでの運動もいいもんだな」退所前訪問にて動作確認。自宅内は4点杖歩行を検討していたが、腰痛とふらつきがあり、シルバーカー歩行に変更。トイレと寝室に手すりの設置を提案したが、本人の希望により、設置しない方向となる。洗体椅子は、福祉用具業者からお試しで借りることができ、施設で実際に使用。その後、気持ちの変化があり購入希望が聞かれる。
<考察>
今回の事例では、在宅復帰を支援していく中で支援者側としては、可能な限り自宅環境を整え、在宅サービスを利用しながら安全に生活して欲しいという想いがある一方、利用者様としては、「在宅サービスは必要ない」「車を運転したい」「庭の手入れがしたい」など、利用者様の自己評価とリハビリでの評価において相違があることで、利用者様と支援者の間で思い描いている自宅生活に乖離が生まれ、退所時の設定や自宅環境の調整、サービス利用に至るまでに難渋した。日々のリハビリや家族を交えた面談など、話し合いの機会を重ねていくことで、本人・家族の想いに寄り添いながら、必要最低限の退所時の設定や在宅サービスの調整が行えた。また、当初は在宅サービスの利用に拒否的であったが、入所中から通所リハビリのスペースを使用しリハビリを実施したことや、施設で実際に福祉用具を使用することで、退所後の生活をイメージして頂き、その後の円滑なサービス利用に繋がったと考える。
当施設は、入所80名に加え、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションを併設し、共同して利用者様の在宅支援に力を入れ運営を行っている。
今回、入所の利用者様で独居生活での自宅復帰を目指すこととなり、本人と支援者の間で思い描いている自宅生活に乖離があることで、退所時の設定や自宅環境の調整、サービス利用に至るまでに難渋した事例について報告する。
<事例情報>
(1) 年齢・性別:70代・男性 (2)要介護認定:要介護2
(3)既往歴:右膿胸、肺化膿症、高血圧、脊柱管狭窄症、不整脈、腰椎変形性側弯症
※脊柱管狭窄症(腰痛が強くなり、令和X年に手術を行う予定であった。)
(4)基本動作:支持物を使用し見守り、移動:車椅子自操可能
(5)ADL:車椅子にて概ね見守り(入浴は一部介助)、認知機能:良好
(6)家族構成:独居生活。妻は別老健に入所中。息子は他県、娘は県内の他市に在住。
(7)性格:タバコとお酒が好き。職人気質な部分あり。運動に対して意欲的。
<入所までの経緯>
もともと妻と2人暮らし。認知症の妻を介護しながら生活されていた。腰痛が強くなり転倒を繰り返していたが、自宅内はフリーハンドと伝い歩きで移動されていた。令和X年9月夜間自宅にて転倒。病院を受診し血胸を認めたものの入院せず帰宅。胸の痛みが続き、数日後に右膿胸、肺化膿症の診断を受け入院。妻は、ご本人様が入院されたことから別老健に入所。その後、治療により状態が安定され、リハビリの継続と脊柱管狭窄症の手術が出来るよう体力を付けたいと希望があり当老健入所される。
<経過>令和X年12月17日~令和X+1年7月29日
○入所初期(12月~2月)
本人の想い:「筋力と体力をつけて早く手術を行い、お家に帰りたい」筋力訓練や歩行訓練を中心に実施。約100mは歩行器歩行が自立で可能となる。歩行での生活は腰痛が強くなってしまうため、生活場面では車椅子を使用。2月に担当医が変更。手術は行わず内服薬を調整し、経過をみていくことになる。
○入所中期(3月~5月)
本人の想い:「手術が出来ないのであればもう家に帰りたい。」「在宅サービスを利用しなくても生活できる」「お酒が飲みたい」「庭の手入れがしたい」「車を運転したい」家族を含めて面談を実施し、手術は行わずに在宅復帰を目指すことになる。腰痛が軽減し4点杖歩行や段差昇降の訓練を開始。自主トレーニングを追加。家屋調査を行い、福祉用具や通所リハビリなど在宅サービスを提案するが受け入れ不良。優先度として、自宅で安全に生活することが重要であることを説明するが、理解が得られず。
○入所後期(6月)
本人の想い:「手すりや洗体椅子など福祉用具は必要ない」生活場面での移動が車椅子から歩行器に変更。15m程度は4点杖歩行が見守りで可能となる。通所リハビリにある機械を使用しての筋力訓練を開始。ご本人様のなかでも筋力が付いてきたことが実感でき、通所リハビリに対してプラスの発言が聞かれ始める。面談を再び実施。家族・支援者側としては在宅サービスを利用して欲しい気持ちがあり、家族の説得もあって、通所リハビリの利用を了承される。車の運転に関しては、家族同乗のもと最初は運転すること、庭の手入れに関しては、手の届く範囲で行い脚立は使用しないことで同意を得る。お酒に関しては、楽しみの1つで辞めることは難しいとの話しあり、深酒だけ注意して欲しいことを伝達。
○退所前(7月)
本人:「家にやっと帰れるな」「通所リハビリでの運動もいいもんだな」退所前訪問にて動作確認。自宅内は4点杖歩行を検討していたが、腰痛とふらつきがあり、シルバーカー歩行に変更。トイレと寝室に手すりの設置を提案したが、本人の希望により、設置しない方向となる。洗体椅子は、福祉用具業者からお試しで借りることができ、施設で実際に使用。その後、気持ちの変化があり購入希望が聞かれる。
<考察>
今回の事例では、在宅復帰を支援していく中で支援者側としては、可能な限り自宅環境を整え、在宅サービスを利用しながら安全に生活して欲しいという想いがある一方、利用者様としては、「在宅サービスは必要ない」「車を運転したい」「庭の手入れがしたい」など、利用者様の自己評価とリハビリでの評価において相違があることで、利用者様と支援者の間で思い描いている自宅生活に乖離が生まれ、退所時の設定や自宅環境の調整、サービス利用に至るまでに難渋した。日々のリハビリや家族を交えた面談など、話し合いの機会を重ねていくことで、本人・家族の想いに寄り添いながら、必要最低限の退所時の設定や在宅サービスの調整が行えた。また、当初は在宅サービスの利用に拒否的であったが、入所中から通所リハビリのスペースを使用しリハビリを実施したことや、施設で実際に福祉用具を使用することで、退所後の生活をイメージして頂き、その後の円滑なサービス利用に繋がったと考える。
