講演情報
[22-O-L009-01]老健入所から通所リハビリテーションへ移行した症例
*佐藤 慎、小島 太郎、菅原 竜二、白石 楓貴 (千葉県 国際医療福祉大学成田老年医療福祉センター介護老人保健施設オルタンシア)
【目的】要介護1の高齢女性に対し、介護老人保健施設(以下、老健)入所中に短期集中リハビリテーションを実施し、退所後も通所リハビリテーションによる継続的な理学療法介入を行った。その結果、老健入所中には身体機能および歩行能力の改善を認め、退所後は体重、骨格筋指数(Skeletal Muscle Index:SMI)の改善と生活機能の維持が得られたため、その経過を報告し、継続的リハビリテーション介入の有効性について検討した。
【方法】対象は80歳代女性、要介護1である。既往歴は深部静脈血栓症、圧迫骨折、不安定狭心症ステント留置後、右大腿骨頚部骨折術後、骨粗鬆症、腎盂腎炎、白内障、糖尿病、子宮筋腫術後であった。発熱および体動困難により入院加療後、自宅退院となったが、独居で転倒を繰り返し自宅生活が困難となったため当施設へ入所した。入所時評価は体重40.3kg、BMI19.4kg/m2、SMI5.3kg/m2、握力は右15.5kg、左15.1kg、Timed Up and Go Test(TUG)は右回り24.81秒、左回り28.18秒、10m快適歩行速度0.37m/秒、6分間歩行距離55m(シルバーカー使用)、Barthel Index(BI)95点、Functional Independence Measure(FIM)120点、Mini-Mental State Examination(MMSE)26点であった。理学療法は、下肢筋力増強訓練、立位保持・重心移動・方向転換を中心としたバランス訓練、歩行速度および歩行耐久性向上を目的とした歩行訓練を実施した。退所後は通所リハビリテーションへ移行し、同様の運動療法を継続した。評価項目は体重、BMI、SMIを主要評価項目とし、身体機能指標として握力、TUG、10m歩行速度、6分間歩行距離、BI、FIMおよびMMSEを経時的に評価した。
【結果】入所1か月後にはTUGは右回り21.23秒、左回り23.41秒へ改善し、10m快適歩行速度は0.60m/秒、6分間歩行距離は55mから192mへ延長した。一方、体重は39.7kg、SMI4.8kg/m2と低下を認めた。入所2か月後にはTUGは右回り22.09秒、左回り22.50秒、10m快適歩行速度0.57m/秒、6分間歩行距離180mと改善した歩行能力を維持し、BIは95点から100点へ改善した。身体機能の改善を認めたことから、入所75日後に住宅型有料老人ホームへ退所した。退所後は通所リハビリテーションを開始した。通所開始時は体重41.1kg、SMI5.3kg/m2であった。その後、体重およびSMIは増加傾向を示し、5か月後には体重42.8kg、SMI6.1kg/m2まで改善した。最終評価である7か月後には体重45.4kg、BMI22.4kg/m2、SMI6.0kg/m2となった。歩行能力は一部変動を認めたものの6分間歩行距離147mを維持し、MMSEは28点を維持した。住宅型有料老人ホームでの生活継続が可能であり、生活機能は維持された。
【考察】本症例では、老健入所中の短期集中リハビリテーションにより歩行能力およびADLが改善し、住宅型有料老人ホームへの退所が可能となった。一方で、体重、SMIは入所中には改善せず、一時的な低下を認めた。しかし退所後に通所リハビリテーションへ円滑に移行し、継続的な理学療法介入を実施したことで、体重は40.3kgから45.4kg、SMIは5.3kg/m2から6.0kg/m2へ改善した。高齢者では急性疾患後の安静や活動量低下により骨格筋量は短期間でも減少しやすく、サルコペニアは身体機能低下や転倒、要介護度悪化の危険因子となることが知られている。本症例でも入所初期にはSMIが5.3kg/m2から4.8kg/m2へ低下しており、身体機能の改善に比べ骨格筋量の回復には時間を要したことが示唆された。一方で、6分間歩行距離や歩行速度は早期から改善しており、骨格筋量増加に先行して神経筋協調性や姿勢制御能力、歩行効率の改善が生じた可能性が考えられた。その後、歩行能力の向上により活動範囲が拡大し、住宅型有料老人ホームでの生活と通所リハビリテーションの継続によって定期的な運動機会が確保された。さらに日常生活活動量の増加や栄養状態の改善も相乗的に作用したことで、体重、SMIの改善につながったと考えられた。最終評価時においても6分間歩行距離147mを維持し、住宅型有料老人ホームでの生活継続が可能であったことから、骨格筋量の改善は身体機能および生活機能の維持にも寄与したものと考えられた。老健では在宅復帰支援が重要な役割であるが、退所後に活動量が低下すると身体機能や骨格筋量は再び低下しやすい。本症例は、老健で身体機能を改善した後、通所リハビリテーションへ切れ目なく移行したことで運動療法を継続でき、身体機能の改善を骨格筋量の改善へつなげることができた症例と考えられた。以上より、老健における短期集中リハビリテーションは身体機能改善に有効であり、その後の通所リハビリテーションによる継続介入はサルコペニア指標の改善と生活機能の維持に寄与する可能性が示唆された。老健には在宅復帰を達成するだけでなく、退所後まで見据えた切れ目のないリハビリテーションを提供する役割が求められ、サルコペニア指標を経時的に評価しながら継続支援を行うことの重要性が示された。
【方法】対象は80歳代女性、要介護1である。既往歴は深部静脈血栓症、圧迫骨折、不安定狭心症ステント留置後、右大腿骨頚部骨折術後、骨粗鬆症、腎盂腎炎、白内障、糖尿病、子宮筋腫術後であった。発熱および体動困難により入院加療後、自宅退院となったが、独居で転倒を繰り返し自宅生活が困難となったため当施設へ入所した。入所時評価は体重40.3kg、BMI19.4kg/m2、SMI5.3kg/m2、握力は右15.5kg、左15.1kg、Timed Up and Go Test(TUG)は右回り24.81秒、左回り28.18秒、10m快適歩行速度0.37m/秒、6分間歩行距離55m(シルバーカー使用)、Barthel Index(BI)95点、Functional Independence Measure(FIM)120点、Mini-Mental State Examination(MMSE)26点であった。理学療法は、下肢筋力増強訓練、立位保持・重心移動・方向転換を中心としたバランス訓練、歩行速度および歩行耐久性向上を目的とした歩行訓練を実施した。退所後は通所リハビリテーションへ移行し、同様の運動療法を継続した。評価項目は体重、BMI、SMIを主要評価項目とし、身体機能指標として握力、TUG、10m歩行速度、6分間歩行距離、BI、FIMおよびMMSEを経時的に評価した。
【結果】入所1か月後にはTUGは右回り21.23秒、左回り23.41秒へ改善し、10m快適歩行速度は0.60m/秒、6分間歩行距離は55mから192mへ延長した。一方、体重は39.7kg、SMI4.8kg/m2と低下を認めた。入所2か月後にはTUGは右回り22.09秒、左回り22.50秒、10m快適歩行速度0.57m/秒、6分間歩行距離180mと改善した歩行能力を維持し、BIは95点から100点へ改善した。身体機能の改善を認めたことから、入所75日後に住宅型有料老人ホームへ退所した。退所後は通所リハビリテーションを開始した。通所開始時は体重41.1kg、SMI5.3kg/m2であった。その後、体重およびSMIは増加傾向を示し、5か月後には体重42.8kg、SMI6.1kg/m2まで改善した。最終評価である7か月後には体重45.4kg、BMI22.4kg/m2、SMI6.0kg/m2となった。歩行能力は一部変動を認めたものの6分間歩行距離147mを維持し、MMSEは28点を維持した。住宅型有料老人ホームでの生活継続が可能であり、生活機能は維持された。
【考察】本症例では、老健入所中の短期集中リハビリテーションにより歩行能力およびADLが改善し、住宅型有料老人ホームへの退所が可能となった。一方で、体重、SMIは入所中には改善せず、一時的な低下を認めた。しかし退所後に通所リハビリテーションへ円滑に移行し、継続的な理学療法介入を実施したことで、体重は40.3kgから45.4kg、SMIは5.3kg/m2から6.0kg/m2へ改善した。高齢者では急性疾患後の安静や活動量低下により骨格筋量は短期間でも減少しやすく、サルコペニアは身体機能低下や転倒、要介護度悪化の危険因子となることが知られている。本症例でも入所初期にはSMIが5.3kg/m2から4.8kg/m2へ低下しており、身体機能の改善に比べ骨格筋量の回復には時間を要したことが示唆された。一方で、6分間歩行距離や歩行速度は早期から改善しており、骨格筋量増加に先行して神経筋協調性や姿勢制御能力、歩行効率の改善が生じた可能性が考えられた。その後、歩行能力の向上により活動範囲が拡大し、住宅型有料老人ホームでの生活と通所リハビリテーションの継続によって定期的な運動機会が確保された。さらに日常生活活動量の増加や栄養状態の改善も相乗的に作用したことで、体重、SMIの改善につながったと考えられた。最終評価時においても6分間歩行距離147mを維持し、住宅型有料老人ホームでの生活継続が可能であったことから、骨格筋量の改善は身体機能および生活機能の維持にも寄与したものと考えられた。老健では在宅復帰支援が重要な役割であるが、退所後に活動量が低下すると身体機能や骨格筋量は再び低下しやすい。本症例は、老健で身体機能を改善した後、通所リハビリテーションへ切れ目なく移行したことで運動療法を継続でき、身体機能の改善を骨格筋量の改善へつなげることができた症例と考えられた。以上より、老健における短期集中リハビリテーションは身体機能改善に有効であり、その後の通所リハビリテーションによる継続介入はサルコペニア指標の改善と生活機能の維持に寄与する可能性が示唆された。老健には在宅復帰を達成するだけでなく、退所後まで見据えた切れ目のないリハビリテーションを提供する役割が求められ、サルコペニア指標を経時的に評価しながら継続支援を行うことの重要性が示された。
