講演情報
[23-P-JH-03]在宅復帰に向けた排泄支援への取り組みコンチネンスアドバイザーと多職種によるアプローチ
*城 恵美香、藤吉 徹大、野田 洋子 (福岡県 大牟田ライフケア院)
【はじめに】老人保健施設の役割は、包括的ケアサービス、リハビリテーション、地域に根ざす在宅生活支援、そして在宅復帰がある。当施設の従来型療養棟の在宅復帰率の平均は令和6年30.4%令和7年38.4%であった。在宅復帰を目指す家族面談などを通じて重要なポイントとなるのは、排泄援助である。家族の負担が大きいと考える家族も多く、排泄に対する支援に重きを置く必要を感じている。今回、左片麻痺、高次脳機能障害、頻尿により家族の介護負担が大きいと不安を感じられるが、在宅復帰を強く希望される利用者に焦点を当てた。排尿パターンの確立、介護負担の軽減を目指し、多職種共同による在宅復帰を目指した。更に、大牟田市では、平成23年度より「コンチネンスケア推進事業」に取り組み、排泄ケアアドバイザーによる相談・指導、排泄ケア相談員の育成研修を実施している。当施設では、排泄ケア相談員2名を有し、利用者一人ひとりにあった最善の排泄ケアが提供できるよう研鑽を重ねている。そこで今回、コンチネンスアドバイザーへ相談・訪問を依頼。利用者の身体・生活情報等の共有、頻尿への身体アセスメント等から問題解決への課題が明らかになり、排尿パターンの確立に繋がった1事例を報告する。【研究期間】2026年1月から3月【研究目的】排尿パターンを確立し、在宅復帰を目指す。【症例】S氏 85歳 男性 介護度3 日常生活自立度B2 認知度ⅡB HDS-R21点 車椅子使用(自走可)立ち上がり介助令和7年10月22日入所 右内頚動脈閉塞に伴う脳梗塞 高次脳機能障害 左片麻痺 神経因性膀胱(R8.1.21泌尿器科受診)【倫理的配慮】本研究(実践)を行うにあたり、ご本人(ご家族)に口頭にて確認をし、本研究実践以外では使用しないこと、それにより不利益を被ることはないことを説明し、回答をもって同意を得たこととした。【方法】一日の排尿回数・尿量測定(3日間)エコー(市より借用)使用にて残尿測定排泄ケア専門看護師(コンチネスアドバイザー)による評価排尿時間表作成排尿時間表によりスタッフ間での情報共有、評価利用者へ視覚からの理解促し(排尿時間表・コンチネンスアドバイザーからの説明用紙)家族への排泄動作指導(PT)【結果】尿量測定を1月9日から3日間実施。起床6時から18時までの12時間中6回~10回、夜間のパットでは排尿320~400g。排尿間隔が短い時は、排尿10~75ml、または排尿無く、排尿間隔が1.5~2時間空いた時は100㎖~125mlの排尿があり、1日の尿量は705ml~740ml飲水量約800mlであった。エコー使用した残尿測定を1月6日~8日、2月23日~25日に実施した。結果、約100ml前後の残尿が確認され介入前後の差はみられなかった。1月30日コンチネスアドバイザーが訪問され、利用者情報の共有し、また聴診により腸の過活動が確認、直腸診にて軟便により尿意を感じやすくなると評価された。腸の過活動に対し下剤調整のアドバイスがあり、調整し排便コントロールを行った。問診も含め利用者へ現在の排尿状態が及ぼす影響や改善するための具体的な方法を文字で説明され、尿量・残尿結果から排泄時間を1.5~2時間とすることを確認した。実行にあたり、高次脳機能障害による注意障害・記憶障害を伴うため、排泄時間に排尿が出来るよう視覚からのアプローチとして、排尿時間表・コンチネンスアドバイザーからの説明用紙・時計での時間確認を毎日繰り返し行った。在宅復帰に向けたカンファレンスでは、コンチネスアドバイザー訪問時の評価を説明、今後の取り組みとして家族への排泄動作介助の指導の提案を行い、PTより療養棟及び自宅で実施した。【考察】高齢者の1回排尿量は、100~150ml、1日の尿量は700~1200ml程度が一般的とされ、成人に比べ1回量は減少するが、1日の排尿回数は増加する傾向にある。本事例においても1日尿量は平均であるが、起床から就寝時間までの間の排尿回数の増加、1回排尿量の減少が見られる。1日の大半を排泄に関する時間で費やすことが多く、片麻痺・車イス使用ということから、移乗時の介助にリスクもあり、頻回の排泄介助は介護負担も大きく、在宅復帰に向けては、排泄時間、排泄パターンの確率が必須であった。尿量・残尿測定、排泄時間の確認等、データーで可視化することで現状の把握ができた。さらに排尿パターンの確立を促すために、コンチネスアドバイザーからのアセスメント評価等エビデンスを提示することで本人、家族が結果に納得できたと考え、スタッフへの周知もできたと考える。また利用者の健康管理を主とする看護師にとっても改めて、身体状況のアセスメントの重要性を認識でき、施設看護師の役割の重要性を再認識した。膀胱訓練では排尿時間表を用いスタッフが確認しやすい場所に配置し、膀胱訓練の為と目的を伝え、次のトイレ時間を具体的に教えるなど視覚からのアプローチを反復し、理解しやすい環境を作る事で、排尿回数の減少・1回排尿量増加へとつながり、排尿パターンが確立したと考える。家族への排泄動作指導では施設内、自宅での排泄動作指導を行い「これだったら自分たちでもできそうです」と感想を言われ、自宅での安全な排泄介助の習得と介護負担へのハードル低下につながったと考える。【まとめ】今回の排泄支援を通して、それぞれの職種の専門性を発揮した取り組みができた。市の事業でもあるコンチネンスアドバイザーとの連携は本事例・当施設において有意義であり今後も施設利用者が施設利用時だけでなく、在宅でも継続し相談できる環境をととのえていきたい。また、在宅に戻ってからの生活を円滑に進めるには家族とのコミュニケーション、カンファレンスも重要になってくる。多職種連携により、個別性のある排泄自立支援の実施、在宅復帰支援に向けて取り組んでいきたい。
