講演情報

[22-O-L003-06]訪問リハにおける出口戦略導入と回転率向上

*橋本 怜央、小松原 利英 (栃木県 介護老人保健施設八州苑)
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●はじめに
 訪問リハビリテーション(以下、訪リハ)は在宅生活を支える重要なサービスであり、全国的に利用が拡大傾向にある。介護給付費等実態統計においても受給者数は増加傾向であることが報告されている。一方で、介護老人保健施設(以下、老健)における訪リハの提供割合は全体の約23%にとどまり、多くの施設で未実施である[1]。その背景には、人的資源を老健本体に集中させた方が経営効率が高いという構造的要因があると考えられる。さらに、訪リハは制度設計上「利用者の卒業」を前提としたサービスであるにもかかわらず、実際には長期利用に陥りやすく、新規受け入れの制限や資源の固定化を招いている。当施設においても2024年度は訪リハ利用者が固定化し、新規導入が困難な状況であった。そこで2025年度より、サービス開始時点で出口を設定する「回転型運用」への転換を試み、その効果について検討した。

●取り組み
 2024年度は実人数で8例に訪リハを提供していたが、明確なゴール設定が無くその全員が1年以上の長期利用となっていた。2025年度になって、前年度までの事例が死亡や入院などでサービス終了となったのをきっかけに、3例に対してゴールを意識したサービス提供を開始した。具体的には、老健から在宅復帰する2例には「通所リハビリテーション」(以下、通リハ)への完全移行を前提とした在宅生活安定化」、入院後の1例には「通リハ再開までの短期介入」を目的として設定した。介入にあたっては、居宅ケアマネジャーと事前に目標および終了時期を共有し、訪リハでは生活環境に即した動作獲得、通リハでは身体機能向上という役割分担を明確化した。訪リハの評価は標準化指標に加え、自宅内動作、生活リズム、活動量、家族からの聞き取りを含めた生活場面での変化を重視した。

●結果
 2025年度はリハスタッフが増員されたこともあり、訪リハのサービス提供人数は増加した。加えて、短期目標を設定した3例はいずれも約3か月以内に目標を達成し、全例で訪リハを終了することができた。利用者の流動性が改善したことで新規受入が可能となり、外部事業所からの依頼増加にもつながった。最終的な実績は、実人数17名、延べ利用日数1,218日であった。2024年度(実人数8名、延べ利用日数843日)と比較し、総利用量は増加したが、1人あたり延べ利用日数は約105日から約72日へと減少し、利用期間の短縮および利用者の流動性向上が認められた。これらの結果から、訪リハの回転率が向上したことが示唆された。

●事例紹介
・事例①
 94歳女性、要介護4。出血性膀胱炎の診断で医療機関入院。入院中にCOVID-19発症され、入院期間に廃用が進行したため当施設入所。入所時は車椅子レベルで、トイレ動作の自立を目標とし介入を開始した。身体機能自体は向上したものの、移乗時における車椅子のブレーキのかけ忘れなどがみられた。在宅復帰にあたり、自宅での排泄動作のルーチン化が必要と考えられたため、通リハと訪リハ併用を提案した。通リハでは身体機能向上を、訪リハでは在宅での動作を中心に介入を行った。約3か月が経過し、自宅での排泄動作が完全に安定したため訪リハは終了し、通リハのみの利用となった。現在は身体機能も短距離であれば歩行可能なレベルとなり、通リハも終了となっている。
・事例②
 81歳男性、要介護5。脳梗塞および尿閉に伴う急性腎不全の診断で医療機関に入院。自宅退院困難のため尿道カテーテル管理の状態で当施設入所となった。尿道カテーテル留置は継続が必要だったものの、身体機能は著明に改善し自立歩行が可能となり自宅退所の方針となった。在宅復帰後は「近所の弟の家まで歩いて行きたい」との要望があったため、動線の確認や屋外での歩行練習が必要と判断し訪リハと通リハ併用での居宅サービスを提案した。通リハでは歩行持久性向上を目指した訓練を実施する一方で、訪リハでは屋外の歩行訓練を中心とした介入を行った。約3か月経過し目標が達成されたため訪リハは終了。通リハは現在も継続して利用している。
・事例③
 86歳女性、要介護4。血栓性脳塞栓既往があり通リハを利用していた。自宅で転倒し圧迫骨折を受傷、医療機関に入院となった。退院後は自宅内での日常生活動作が困難かつ易疲労状態であり通リハの利用が困難であったため、「通リハが利用可能となるまで」とゴール設定を行った上で訪リハの提供を開始した。外出に必要なための玄関周りでの動作の確認および、乗降動作の反復練習を実施し約3か月程度で動作が安定。疲労感も退院直後よりも軽減されたため訪リハから通リハへ完全移行した。現在も通リハの利用を継続し、身体機能は徐々に改善傾向である。

●考察
 訪リハは在宅療養支援として長期継続が必要な症例も存在する一方、目標設定が不十分な場合「終了しないサービス」となりやすく、人的資源の固定化を招く。当施設においても従来は利用者が固定化し、新規受入が困難であった。今回、介入開始時に出口を設定し、多職種間で共有することで短期間での目標達成およびサービス移行が可能となり、訪リハの流動性が向上した。実人数の増加には人員体制強化の影響も含まれるが、利用者1人あたりの延べ利用日数の減少は運用変更の影響を反映していると考えられる。これらの結果から、今回の取り組みが訪リハの回転率向上に寄与した可能性が示唆された。本取り組みは、訪リハの制度的特性である「卒業」を前提とした運用への適合に加え、限られた人的資源の再配分という観点からも有用であり、持続可能なサービス提供体制の構築にも寄与すると考えられる。今後は症例数を蓄積し、移行支援加算の算定を含めた運用を進めるとともに、経営的インパクトの定量的評価を行う必要がある。

【参考文献】
 1)厚生労働省:介護給付費等実態統計の概況,2024.