講演情報
[22-O-D005-05]老健入所中の認知症高齢者に対する環境調整マークの提示高さと視認性に関する予備的研究
*本間 共生1、柴 隆広1、谷口 敬道2、平野 大輔2、浦野 友彦3 (栃木県 1. 介護老人保健施設マロニエ苑、2. 国際医療福祉大学、3. 国際医療福祉大学医学部老年病科)
【はじめに】
認知症高齢者は、記憶障害や見当識障害、注意機能の低下などにより、周囲の環境から必要な情報を適切に得ることが困難になる場合がある。一方で、 施設生活においては、環境から得られる情報が生活行動を支える重要な手掛かりとなる。このため、認知症高齢者にとって分かりやすい環境を設定することは生活支援において重要である。
特にトイレや居室等は日常生活の中で利用頻度が高く、自ら場所を認識し移動することが求められるため、その場所を認識できることは生活の自立や安心感につながる。しかし、認知症高齢者では目的地の位置を認識できず、職員への依存や不安の増大につながる場面も少なくない。
施設内ではトイレの位置を示すためにトイレマークが設置されているが、その設置高さについて明確な根拠が示されていることは少なく、施設ごとに異なっているのが現状である。当施設においてもトイレマークは約180cmの高さに設置されているが、利用者がトイレ前まで来ているにもかかわらずマークに気付かない様子や、周囲を見回しながら探索している様子がみられることがあった。また、利用者によっては常に俯きがちな姿勢を呈している場合もあり、マークの設置高さによって認識のしやすさが異なる可能性が考えられた。
これらの経験から、現在、認知症高齢者におけるトイレマークの提示高さと視覚探索との関係について、アイトラッキングメガネを用いた研究を計画している。そこで本取り組みでは、その予備的検討として、認知症高齢者におけるマークの見つけやすさと設置位置との関係について簡易的な確認を行った。
【目的】
認知症高齢者において、マークの設置位置の違いが認識のしやすさに与える影響を確認し、認知症高齢者にとって分かりやすい環境設定を検討するための基礎資料を得ることを目的とした。
【方法】
当施設入所中の72~95歳の10名(男性2名、女性8名、MMSE16~26点)を対象に、高い位置(180cm)、目線の位置(110cm)、足元(20cm)の位置の3か所へ同一の円形マークを配置した。対象者には5m離れた位置からマークを探索してもらい、それぞれの位置に配置されたマークについて、3つの提示位置を比較した上で、最も見つけやすい位置について聴取した。また、探索時の視線の向きや探索行動、姿勢などを観察・記録した。
【結果】
見つけやすい位置としては、目線の位置(5名)が最も多く、次いで足元の位置(2名)、変わらない(2名)、高い位置(1名)であった。目線付近および足元に配置したマークは比較的認識されやすい傾向がみられた。一方、高い位置のマークについては気付きにくい様子や、探索の際に見落としているような場面がみられた。
【考察】
今回の取り組みでは、認知症高齢者にとってマークの設置位置が認識のしやすさに影響する可能性が示唆された。特に目線付近に配置されたマークは自然な視線の範囲に入りやすく、探索時の負担が少ないため認識されやすかった可能性が考えられる。一方、高い位置のマークは上方へ視線を移動させる必要があり、認知症高齢者にとっては認識しにくい位置となっている可能性がある。今回の結果からも、単にマークを設置するだけではなく、どの位置に設置するかという環境設定そのものが認識のしやすさに影響を与える可能性が示された。
当施設ではトイレマークが約180cmの高さに設置されているが、今回の結果からは利用者にとって必ずしも探索しやすい位置ではない可能性が考えられた。施設環境におけるサインは職員や健常者の視点で設置されることが多いが、認知症高齢者の視点から検討した場合には異なる結果となる可能性がある。利用者の視点に立った環境調整を行うことは、自力での移動や目的地の発見を支援し、不安の軽減や生活の質の向上につながる可能性がある。
また、円背などの身体的特徴を有する利用者では足元付近のマークが認識されやすいことも考えられるため、認知症高齢者にとって分かりやすい環境設定を検討する際には、認知機能のみならず姿勢や身体機能についても考慮する必要がある。特に高齢者では加齢に伴う姿勢変化が生じやすく、視線の向きにも影響を与えることが考えられる。そのため、一律の環境設定だけではなく、対象者の特性に応じた環境調整の必要性も示唆された。しかし、実際の施設環境においては安全面や動線への影響、物品による遮蔽なども考慮する必要がある。そのため、施設環境を踏まえた総合的な環境調整が重要であると考えられた。
しかし、本取り組みは客観的な視線データを取得したものではなく、探索時間や注視位置、探索経路などを定量的に評価することはできなかった。そのため、マークの設置高さと視覚探索との関係をより詳細に明らかにするために、今後はアイトラッキングメガネを用いて探索過程を客観的に評価し、認知症高齢者にとってより分かりやすい環境設定のあり方について検討していきたい。
認知症高齢者は、記憶障害や見当識障害、注意機能の低下などにより、周囲の環境から必要な情報を適切に得ることが困難になる場合がある。一方で、 施設生活においては、環境から得られる情報が生活行動を支える重要な手掛かりとなる。このため、認知症高齢者にとって分かりやすい環境を設定することは生活支援において重要である。
特にトイレや居室等は日常生活の中で利用頻度が高く、自ら場所を認識し移動することが求められるため、その場所を認識できることは生活の自立や安心感につながる。しかし、認知症高齢者では目的地の位置を認識できず、職員への依存や不安の増大につながる場面も少なくない。
施設内ではトイレの位置を示すためにトイレマークが設置されているが、その設置高さについて明確な根拠が示されていることは少なく、施設ごとに異なっているのが現状である。当施設においてもトイレマークは約180cmの高さに設置されているが、利用者がトイレ前まで来ているにもかかわらずマークに気付かない様子や、周囲を見回しながら探索している様子がみられることがあった。また、利用者によっては常に俯きがちな姿勢を呈している場合もあり、マークの設置高さによって認識のしやすさが異なる可能性が考えられた。
これらの経験から、現在、認知症高齢者におけるトイレマークの提示高さと視覚探索との関係について、アイトラッキングメガネを用いた研究を計画している。そこで本取り組みでは、その予備的検討として、認知症高齢者におけるマークの見つけやすさと設置位置との関係について簡易的な確認を行った。
【目的】
認知症高齢者において、マークの設置位置の違いが認識のしやすさに与える影響を確認し、認知症高齢者にとって分かりやすい環境設定を検討するための基礎資料を得ることを目的とした。
【方法】
当施設入所中の72~95歳の10名(男性2名、女性8名、MMSE16~26点)を対象に、高い位置(180cm)、目線の位置(110cm)、足元(20cm)の位置の3か所へ同一の円形マークを配置した。対象者には5m離れた位置からマークを探索してもらい、それぞれの位置に配置されたマークについて、3つの提示位置を比較した上で、最も見つけやすい位置について聴取した。また、探索時の視線の向きや探索行動、姿勢などを観察・記録した。
【結果】
見つけやすい位置としては、目線の位置(5名)が最も多く、次いで足元の位置(2名)、変わらない(2名)、高い位置(1名)であった。目線付近および足元に配置したマークは比較的認識されやすい傾向がみられた。一方、高い位置のマークについては気付きにくい様子や、探索の際に見落としているような場面がみられた。
【考察】
今回の取り組みでは、認知症高齢者にとってマークの設置位置が認識のしやすさに影響する可能性が示唆された。特に目線付近に配置されたマークは自然な視線の範囲に入りやすく、探索時の負担が少ないため認識されやすかった可能性が考えられる。一方、高い位置のマークは上方へ視線を移動させる必要があり、認知症高齢者にとっては認識しにくい位置となっている可能性がある。今回の結果からも、単にマークを設置するだけではなく、どの位置に設置するかという環境設定そのものが認識のしやすさに影響を与える可能性が示された。
当施設ではトイレマークが約180cmの高さに設置されているが、今回の結果からは利用者にとって必ずしも探索しやすい位置ではない可能性が考えられた。施設環境におけるサインは職員や健常者の視点で設置されることが多いが、認知症高齢者の視点から検討した場合には異なる結果となる可能性がある。利用者の視点に立った環境調整を行うことは、自力での移動や目的地の発見を支援し、不安の軽減や生活の質の向上につながる可能性がある。
また、円背などの身体的特徴を有する利用者では足元付近のマークが認識されやすいことも考えられるため、認知症高齢者にとって分かりやすい環境設定を検討する際には、認知機能のみならず姿勢や身体機能についても考慮する必要がある。特に高齢者では加齢に伴う姿勢変化が生じやすく、視線の向きにも影響を与えることが考えられる。そのため、一律の環境設定だけではなく、対象者の特性に応じた環境調整の必要性も示唆された。しかし、実際の施設環境においては安全面や動線への影響、物品による遮蔽なども考慮する必要がある。そのため、施設環境を踏まえた総合的な環境調整が重要であると考えられた。
しかし、本取り組みは客観的な視線データを取得したものではなく、探索時間や注視位置、探索経路などを定量的に評価することはできなかった。そのため、マークの設置高さと視覚探索との関係をより詳細に明らかにするために、今後はアイトラッキングメガネを用いて探索過程を客観的に評価し、認知症高齢者にとってより分かりやすい環境設定のあり方について検討していきたい。
