講演情報
[22-O-L002-02]転倒後の活動性低下に対する通所リハの一症例
*内川 誠、薦田 昭宏、西山 文恵、田中 健二 (高知県 介護老人保健施設シルバーマリン 通所リハビリテーション)
【はじめに】高齢者において転倒は,身体機能の低下や活動量の低下の契機となりやすい.また認知症を有している場合,注意機能の低下・判断能力の低下・生活リズムの乱れなどから,さらなる機能の低下が助長されやすい.そして主観的疲労感と客観的評価が一致しないことがあり,運動負荷量の設定に難渋する場合がある.今回,転倒契機に2か月で体重減少率が8%,活動量の低下および疲労感の増大を認めた認知症高齢女性に対し,主観的疲労感と客観的評価の乖離に着目して介入した症例を経験したため報告する.
【症例紹介】80歳代女性,要介護1,診断名はアルツハイマー型認知症.既往に多発脳動脈瘤術後がある.寝たきり度判定基準J1,認知症の老人判定基準Ⅰであった. 家族構成は夫との2人暮らし. R6.4月より週2回通所リハビリテーションを利用.利用開始時は独歩で施設内を移動し,週1回近所の喫茶店への外出や約2㎞の散歩が可能であった.施設内の移動面は独歩で付き添いなく移動可能.転倒なく経過していたが,R7.6月に外出先で転倒後,活動量が低下し,施設内でもつまずきが増加してきたため腋窩介助歩行を要するようになった.さらに食事摂取量低下し,転倒2か月後には体重減少率が8%を認めた.歩行や運動時に「しんどい」と訴え,散歩や外出頻度も減少した.なお,本発表にあたり対象者に趣旨を説明し同意を得たものである.
【理学療法評価】転倒前の身体組成としては身長158㎝,体重は50.2kg BMIが20.1である.移動は独歩にて10m歩行速度1.1m/sec,TUG10秒,SS-511秒,3分間連続歩行180m可能であった.身体的フレイルは1/5であった.精神心理的要因としては,MMSE12/30点であった.簡易栄養状態評価表(以下MNA-SF)は11点で軽度低栄養の状態であった.転倒2カ月後の身体組成としては,身長は同様,体重が45.3kg,BMI:18.1. MNA-SFは7点と低栄養状態であった.移動面は付き添い介助歩行にて10m歩行速度0.83m/sec,TUGが13秒, SS-515秒,3分間連続歩行110mであった.身体的フレイルは4/5であった.運動時の自覚的運動強度(以下ボルグスケール)は,16であったが,心拍数は運動前後75回/分から85回/分と軽度の変化にとどまり,主観的疲労感と循環応答との乖離を認めた. 以上より,転倒後の活動量低下に伴う低栄養・フレイルの進行と主観的疲労感が客観的評価に比して強く認められることにより,活動量がさらに低下し廃用が進行する危険性が主要な問題点であると考えた.
【介入】疲労感のみで活動量を制限せず,脈拍数およびカルボーネン法による目標心拍数を(運動強度30%・目標心拍数90~95回/分)参考に運動強度を設定した.エルゴメータや立ち座り運動などを中心に実施し,ボルグスケールを確認しながら運動時間・回数・種類を段階的に増加させた.また体重,食事摂取量およびMNA-SFにより栄養状態を継続的に評価し,ご自宅では介護専門支援員を介して,嗜好に合わせたものを提供してもらうように家族に依頼した.
【結果】6か月後,身体組成は体重が49.3kg,BMIが19.3,MNA-SFは11点であった.身体的フレイルでは,1/5まで回復した.移動面は近位監視にて10m歩行速度1.0m/sec,TUG10秒,SS-514秒,3分間連続歩行140m可能となり,ボルグスケールは13まで軽減した.転倒頻度は減少し,外出および散歩頻度は転倒前と同程度まで回復した.
【考察】本症例は認知症を背景に有し,転倒を契機として活動量が低下し,2か月で体重減少率8%,BMI18.1MNA-SF7点となるなど低栄養を伴うフレイルが進行した.転倒後の活動量低下はフレイルや身体機能低下を助長することが報告されており,本症例も同様の経過をたどったと考えられた.また,運動時の自覚的運動強度はボルグスケール16と高値を示した一方,運動前後の脈拍数は75回/分から85回/分と軽度の変化にとどまり,主観的評価と客観的評価との乖離を認めた.ボルグスケールは運動強度評価として広く用いられるが,高齢者では自覚的運動強度と生理学的反応が必ずしも一致しないことが報告されている.本症例においても,主観的訴えのみで活動を制限すると活動量低下から廃用を助長する可能性があると考えた.そこで,カルボーネン法を用いて目標心拍数を設定し,客観的指標を参考に運動を段階的に実施した.その結果,転倒後に低下した身体機能は転倒前と同程度まで回復し,転倒頻度の減少に加え,外出・散歩頻度も回復した.認知症高齢者に対する運動療法は身体機能やADLの維持・向上に有効とされており,本症例では身体機能や栄養状態を含めた客観的評価に基づいて運動療法を継続したことが,活動性の回復につながった可能性が示唆された.
【症例紹介】80歳代女性,要介護1,診断名はアルツハイマー型認知症.既往に多発脳動脈瘤術後がある.寝たきり度判定基準J1,認知症の老人判定基準Ⅰであった. 家族構成は夫との2人暮らし. R6.4月より週2回通所リハビリテーションを利用.利用開始時は独歩で施設内を移動し,週1回近所の喫茶店への外出や約2㎞の散歩が可能であった.施設内の移動面は独歩で付き添いなく移動可能.転倒なく経過していたが,R7.6月に外出先で転倒後,活動量が低下し,施設内でもつまずきが増加してきたため腋窩介助歩行を要するようになった.さらに食事摂取量低下し,転倒2か月後には体重減少率が8%を認めた.歩行や運動時に「しんどい」と訴え,散歩や外出頻度も減少した.なお,本発表にあたり対象者に趣旨を説明し同意を得たものである.
【理学療法評価】転倒前の身体組成としては身長158㎝,体重は50.2kg BMIが20.1である.移動は独歩にて10m歩行速度1.1m/sec,TUG10秒,SS-511秒,3分間連続歩行180m可能であった.身体的フレイルは1/5であった.精神心理的要因としては,MMSE12/30点であった.簡易栄養状態評価表(以下MNA-SF)は11点で軽度低栄養の状態であった.転倒2カ月後の身体組成としては,身長は同様,体重が45.3kg,BMI:18.1. MNA-SFは7点と低栄養状態であった.移動面は付き添い介助歩行にて10m歩行速度0.83m/sec,TUGが13秒, SS-515秒,3分間連続歩行110mであった.身体的フレイルは4/5であった.運動時の自覚的運動強度(以下ボルグスケール)は,16であったが,心拍数は運動前後75回/分から85回/分と軽度の変化にとどまり,主観的疲労感と循環応答との乖離を認めた. 以上より,転倒後の活動量低下に伴う低栄養・フレイルの進行と主観的疲労感が客観的評価に比して強く認められることにより,活動量がさらに低下し廃用が進行する危険性が主要な問題点であると考えた.
【介入】疲労感のみで活動量を制限せず,脈拍数およびカルボーネン法による目標心拍数を(運動強度30%・目標心拍数90~95回/分)参考に運動強度を設定した.エルゴメータや立ち座り運動などを中心に実施し,ボルグスケールを確認しながら運動時間・回数・種類を段階的に増加させた.また体重,食事摂取量およびMNA-SFにより栄養状態を継続的に評価し,ご自宅では介護専門支援員を介して,嗜好に合わせたものを提供してもらうように家族に依頼した.
【結果】6か月後,身体組成は体重が49.3kg,BMIが19.3,MNA-SFは11点であった.身体的フレイルでは,1/5まで回復した.移動面は近位監視にて10m歩行速度1.0m/sec,TUG10秒,SS-514秒,3分間連続歩行140m可能となり,ボルグスケールは13まで軽減した.転倒頻度は減少し,外出および散歩頻度は転倒前と同程度まで回復した.
【考察】本症例は認知症を背景に有し,転倒を契機として活動量が低下し,2か月で体重減少率8%,BMI18.1MNA-SF7点となるなど低栄養を伴うフレイルが進行した.転倒後の活動量低下はフレイルや身体機能低下を助長することが報告されており,本症例も同様の経過をたどったと考えられた.また,運動時の自覚的運動強度はボルグスケール16と高値を示した一方,運動前後の脈拍数は75回/分から85回/分と軽度の変化にとどまり,主観的評価と客観的評価との乖離を認めた.ボルグスケールは運動強度評価として広く用いられるが,高齢者では自覚的運動強度と生理学的反応が必ずしも一致しないことが報告されている.本症例においても,主観的訴えのみで活動を制限すると活動量低下から廃用を助長する可能性があると考えた.そこで,カルボーネン法を用いて目標心拍数を設定し,客観的指標を参考に運動を段階的に実施した.その結果,転倒後に低下した身体機能は転倒前と同程度まで回復し,転倒頻度の減少に加え,外出・散歩頻度も回復した.認知症高齢者に対する運動療法は身体機能やADLの維持・向上に有効とされており,本症例では身体機能や栄養状態を含めた客観的評価に基づいて運動療法を継続したことが,活動性の回復につながった可能性が示唆された.
