講演情報

[22-O-L006-05]歩行アシストロボにより歩行能力の改善を認めた症例

*松本 朗人 (三重県 介護老人保健施設あのう)
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【はじめに】慢性心不全にて入院加療後の症例を入所リハビリテーションで担当した。歩行アシストロボを用いたプログラムを含むリハビリテーションを6か月間実施し、身体機能・日常生活動作(以下ADL)の改善に繋がった例について報告する。歩行アシストロボ・フィジボウォーク(GH-3000)(以下フィジボウォーク)はOGWellnessが提供している対象的で効率的な歩行の獲得を目指す事が出来るアプローチ方法の一つである。「倒立振子モデル」に基づき適切な運動を高頻度に反復し定着させる事を目標とする歩行訓練機器で、骨盤部に装着したアクチュエーターにより股関節の屈曲・伸展運動を補助、角度センサーにより歩幅や歩行周期を検知し、左右の歩行バランスやタイミングを補正する事が出来る。また、タブレット端末と連動し歩行の左右対称性、矢状面上での股関節可動範囲、歩行速度等を可視化する事が出来る。
【症例紹介】70代女性。要介護度4。夫の死後より一人暮らしで在宅生活を行っていた。令和7年9月に救急搬送。慢性心不全、両下肢うっ滞性静脈炎、大腿部皮膚潰瘍の診断を受ける。急性期治療後に転院され、回復期リハビリを受けるが自宅への退院が困難であり、令和7年11月に当施設の入所となった。
【経過】入所から3か月短期集中リハビリテーション(7回/週)実施。その後3か月の入所リハビリテーションを実施。リハビリプログラムとして下肢筋力訓練、立位バランス訓練、歩行訓練を実施した。ご利用者様のニーズとして在宅復帰したいという思いが強く、在宅復帰可能なADLを獲得する事を目標とした。入所時のADLは施設内車椅子自走、トイレ動作見守り実施、歩行訓練時のみ見守りにてシルバーカー歩行が可能な状態であった。介入初期のシルバーカー歩行では、全歩行周期を通して体幹前傾姿勢でシルバーカーに上肢を押し付ける歩行が見られた。振り出し時、中間位での遊脚振子を形成している左下肢に対し右下肢は股関節外旋位での振り出しを行う。その後股関節を内転し右股関節内転・外旋位での足底外側縁からの全足底接地を行う歩行パターンを呈していた。右の単脚立脚期が短縮しており、右下肢の支持性低下・可動範囲の左右不均等が予測された。そのためフィジボウォークを装着し、タブレット上で矢状面上での股関節の左右対称性を可視化した所、左下肢に対して右下肢は屈曲・伸展層で共に可動範囲が小さく左右不均等な歩行状態である事が分かった。フィジボウォークのモーター機能を使用し右下肢伸展方向の補助を行った所、フィジボウォーク装着中の矢状面上での左右不均等を解消する事が出来た。また、股関節周囲筋のMMTレベルは右/左・3/4であった。開眼での片脚立位(上肢片手支持あり)では右での立位時に股関節が内転し10秒以上バランスを保つ事が難しい状態であった。股関節周囲の筋力低下が支持性・立位安定性の低下に繋がっていると考えた。また、本症例は慢性心不全後遺症による心機能低下を呈していた。フィジボウォーク非装着時、50m室内歩行を実施すると実施後の心臓二重積は11084であり歩行後にはインターバルを挟む必要があった。これらを踏まえ、リハビリプログラムを立案した。介入初期~3ヶ月間、以下のプログラムを実施した。セラバンド・重錘を使用した下肢筋力訓練、右下肢の振り出し改善を目的としたステップ訓練、歩容改善、心機能改善を目的とした歩行訓練。歩行訓練ではフィジボウォークを使用する事で左右不均等を解消した状態で実施した。介入3ヶ月後、下肢MMTレベルは左右共に4程度(同一レベル内での左右差はあり)、同一歩行後の心臓二重積は7920であった。施設内での移動方法はシルバーカーでの自立となった。歩行中の体幹前傾姿勢が改善しており、上肢支持への依存度が減少したと考えられる。また、独歩での短距離歩行が可能となり上肢の振りが見られる様になった。身体機能が向上した事で施設内でのADL自立度が改善し、在宅復帰の目標が見え始めた。施設相談員、ご利用者様と共に居宅訪問を実施し情報収集を行った。玄関の上り框や居室の畳といった在宅状況に合わせてリハビリプログラムの再検討を行った。動・静的バランス訓練、階段昇降訓練、フィジボウォークを装着した四点杖歩行訓練、独歩訓練を開始した。四点杖での歩行開始後、左右対称となっていた歩行周期が崩れ、右下肢の股関節可動範囲が狭小化した。再びフィジボウォークのモーター出力を調整し左右対称性を確保しつつ訓練を実施した。
【結果】入所時の評価は以下。MMSE:21点、Barthel Index:80/100、Timed Up & Go Test右/左:24.2/25.1秒(シルバーカー)、50m歩行後の心臓二重積11084(シルバーカー)。現時点での評価は以下。MMSE:25点、Barthel Index:90/100、Timed Up & Go Test 17.0/18.6(シルバーカー)17.9/19.5(四点杖)同一歩行後の心臓二重積8806(四点杖)。6分間歩行テスト(四点杖):127m、Borgスケール11
【考察】今回、慢性心不全後遺症のご利用者様に対して機能訓練とフィジボウォークによる歩行訓練を併用する事で身体機能・ADLの改善に繋げる事が出来た。訓練中、フィジボウォーク装着時の二重積の上昇が非装着時と比べて低くなった。これはフィジボウォークのモーターによる股関節運動の補助と歩行周期の改善により運動効率が向上していたと考えられる。また、歩行周期を補正した状態での歩行訓練を反復する事で運動学習を行い、フィジボウォーク非装着時でも同様に歩行周期を改善する事が出来たと考えられる。現在の施設内では四点杖を使用して自立歩行を行っている。施設行事やリハビリに積極的に参加しながら生活を続けており、在宅復帰の予定を調整している。