講演情報

[22-O-L010-04]当苑における看取り期リハビリテーションの現状と課題

*山本 美優 (大阪府 吹田徳洲苑)
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【はじめに】
 当苑は159床の病院併設型・超強化型介護老人保健施設(以下、老健)であり、高い在宅復帰機能を維持する一方で、地域における重要な看取りの場としての役割も併せ持っている。しかし、看取り期リハビリテーション(以下、看取り期リハ)においての教育課程や先行研究は少なく、個々が葛藤し日々模索している状況である。本研究は、看取り期リハにおける対象者の属性や実績と、リハ職員の意識調査を分析し、当苑における看取り期リハの現状を可視化することを目的とし、今後の介入における標準的な指針を得ることとした。
【対象・方法】
 令和7年度に逝去された利用者42名のうち、急変急死等のケースを除外したターミナルケア加算算定者27名を対象とした。当苑では、多職種による看取りカンファレンスにて方針を共有し、看取り期リハの内容を決定している。調査は、対象者のカルテ情報、および所属するリハ職員11名(PT7名、OT2名、ST2名)全員にアンケートを実施した。
調査項目:1. 対象者の情報:平均要介護度、平均入所期間、平均看取り期間、疾患 2. リハ内容:1)安楽・苦痛の緩和、2)経口摂取・コミュニケーション維持、3)離床・活動性・環境調整、4)呼吸・排痰コントロールの4分類に定義した。3. リハ職員意識調査:Googleフォームを用い、上記4分類の各項目、および看取り移行時の心境や多職種連携、家族ケアに関する詳細な自由記述を求めるアンケートを実施した。
【結果】
1. 対象者27名の情報は、平均要介護度3.7、平均入所期間151.1日、平均看取り期間16.5日であった。主疾患は老衰が18名(66.7%)肺炎・呼吸不全が4名(14.8%)、DICが2名(7.4%)、悪性腫瘍、心不全、多臓器不全が各1名(各3.7%)であった。
2. 4分類における主たるリハ内容は、安楽・苦痛の緩和が18名(66.7%)、経口摂取・コミュニケーション維持が6名(22.2%)、離床・活動性・環境調整が3名(11.1%)、呼吸・排痰コントロールは0名(0%)であった。なお、利用者本人と家族への精神的なケアは全例に行われている。
3. 意識調査:各項目におけるリハ職員の成果と葛藤は以下の通りであった。
1) 安楽・苦痛の緩和:タッチングやポジショニングによる緊張緩和の成果の一方、拘縮や浮腫、褥瘡の影響、クッションの数の不足、介入自体が苦痛とならないか等判断に難渋した。
2) 経口摂取・コミュニケーション維持:食事形態や姿勢の調整、各職種が役割を発揮して家族の持ち込み食への意向を尊重できた。一方で意思疎通困難の方の想いを十分に聴取できなかったことへの悔恨、早期から意思聴取ができる仕組みが必要と意見が挙がった。
3) 離床・活動性・環境調整:状態に応じた離床やベッドギャッジアップにより窓越しの景色を提供する環境調整ができたが、かえって負担になっていないかと葛藤がみられた。
4) 呼吸・排痰コントロール:多職種と連携した姿勢保持等による効果を認める一方、吸引や排痰は看護師中心であり、主体的介入が難しい現状が挙がった。また老健でのドレナージ実践の難しさ、排痰介助の技術差や利用者への負担、介入の妥協点を見失う不安から当項目と距離を置いている実態が示された。
5) 心境・家族ケア・多職種連携:復帰目標から方向性の変更に伴う葛藤や衰弱への戸惑いがある一方、家族の感謝に喜びを感じていた。工夫として、変化を伝える面会時介入や、看護師への状態報告、介護士へのポジショニング伝達を意識していた。葛藤として、つきっきりの家族を邪魔しない距離感、一般的に想起されるリハと看取り期リハの違いを丁寧に説明しないと不安にさせる懸念、穏やかに今後を受け入れるための声かけの難しさが挙がった。また、面会頻度が低い家族への関わりの難しさや、ラポール形成には時間を要すること、アプローチの限界への悩みが示された。
【考察】
 当苑の平均入所151.1日、平均看取り16.5日であり、全老健の実態調査報告(入所100~180日、看取り10~20日)と合致し、標準的動向を反映している。安楽・苦痛の緩和が最多であるのは看取り期におけるリハの全身的な介入として重要であり、中心的であるからと考えられる。一方、主たる介入として呼吸・排痰コントロールが0%であった背景には、吸引は看護師、体位変換は介護士が中心という役割分担があり、その中でリハ職員が効果的な体位変換を実践することの難しさが挙げられた。また老健では資源が限られ、十分な加温加湿ができない環境であり、効果的な実践が困難であることも考えられる。
 在宅復帰を目指す段階での週3回の個別リハ介入とは状況が変わり、臨機応変な対応が求められる。面会時に合わせて介入して状況よりわかりやすくお伝えする、限られた時間のなかで訪室しリハ目線での状態確認が看取り期リハでは必要不可欠となる。一方でつきっきりのご家族や関係性が築けていないご家族に対する関わりには配慮が必要である。ラポール形成には時間を要するため、機能回復を目指して取り組んだ時期からの継続的関わりが家族の受容を促すきっかけとなる。多職種から家族へ一貫した情報を共有することや、本人の意思を聴取することは入所初期からの人生会議や希望を丁寧に伺える仕組みを考えていくことが大切である。通常リハから看取りリハへの切り替えに伴う葛藤やもどかしさは個人で抱える必要はなく全体的な課題として今後も検討していく必要がある。
【おわりに】
 本調査により当苑の看取り期リハの実績、リハ職員それぞれの工夫、および心理的・環境的葛藤が可視化された。今後は、多職種と情報共有し連携をより一層深めるとともに、機能回復から看取りまで一貫し、身近に関われる職種として最期まで寄り添い介入していく。そして、入所の早い段階からご本人やご家族の思いを丁寧に掬い上げられる関わりを施設全体で取り組み、当苑における看取り期ケアのあり方を模索していきたい。