講演情報

[22-O-J003-01]複合低周波治療器の対象利用者について

*佐藤 くるみ (北海道 社会医療法人豊生会介護老人保健施設ひまわり)
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【はじめに】
当施設では複合低周波治療器NEURO TREAT(以下NT)を嚥下障害を有する利用者に対してリハビリの一環として実施している。これまでに3名の利用者へ導入し、嚥下機能の改善や維持を目的に介入した。その中で疾患や認知機能、高次脳機能障害の有無によって、治療への反応や継続性、効果の得られ方に違いが見られた。今回、異なる背景を有する3症例への介入を通じて、NTの対象者像や実施時の留意点、継続方法について検討した為報告する。
【症例】
①COVID-19を罹患した症例(令和7年発表済)
基本情報:80代女性、レビー小体型認知症。HDS-R:21点。高次脳機能障害:無し。FOIS:罹患前7→罹患後2。食事形態:胃瘻。水分:中間とろみ。訓練:NT、直接訓練、自主トレーニング
経過:入所4ヶ月後にCOVID-19に罹患し胃瘻造設。NTを実施しお楽しみ程度の経口摂取が可能となった。
②重度嚥下障害、重度失語症を呈した症例
基本情報:50代男性、右被殻出血。既往歴:左脳出血。HDS-R:未実施。高次脳機能障害:重度運動性失語、注意障害。簡単な会話にもムラがあり、Yes/Noの曖昧さを認める。日常会話はComボードを使用し、Yes/NoはOKサインや首振り、無反応での表出。FOIS:1、適宜吸引。食事形態:胃瘻。訓練:理解・表出訓練、口腔ケア、アイシング
経過:X日入所。X+46日に睡眠薬が開始され、流涎が増加。X+95日命令嚥下が可能な事が増え、Yes/Noが入所時よりもわかりやすくなった為NTを導入(週2回、15分)。Yes/Noの曖昧さから電気刺激の調整時は大きく変化はつけられず。また、注意障害の影響により15分間集中出来ない事もあった。NT開始後は流涎量が減少し、2週間後に唾液による大きな湿性咳嗽は軽減、3週間後には刺激中の唾液嚥下のしやすさの実感を得られた。
③重度嚥下障害、認知症を呈した症例
基本情報:70代男性、誤嚥性肺炎、認知症。HDS-R:8点。高次脳機能障害:無し。FOIS:3、適宜吸引。食事形態:ペースト食、全介助。水分:中間とろみ。BMI:13.8。訓練:NT、口腔運動、呼吸練習、直接訓練
経過:Y日入所。前院での嚥下機能検査にて多量な咽頭残留を認めY+1日NTを導入(週2回、15分)。3回目で即時効果が無いと感じ実施に拒否的となる。4回目以降は継続する必要性の説明は必須であり、電気刺激の変化に対する反応は乏しいが、実施中の自発的な唾液嚥下は増加。3週間後の直接訓練では食残の喀出量は減少し、4週間後には徐々に弱い電気刺激でも刺激を感じられるようになった。 
【結果】
3症例ともに嚥下障害の自覚があり、NTの実施に対して協力を得られた。しかし、認知機能や高次脳機能障害の有無によって、実施方法や継続性に違いがみられた。症例1は認知機能が比較的保たれており、自主トレーニングにも積極的に取り組む事が出来た。また、電気刺激による感覚や身体の変化を具体的に表出出来たため、刺激量の調整や治療の継続が円滑であった。症例2は重度運動性失語及び注意障害を認めた。Yes/Noの曖昧さから刺激量の調整に難渋し、注意障害の影響から15分間の実施が困難な場面もみられたが、継続するうちに効果の実感を得られた。症例3は認知症を呈しており、電気刺激の変化に対する反応が曖昧だった。また、即時効果を実感出来ない事から拒否的な様子もみられたが、毎回説明をする事で継続して実施出来た。導入後は食残の喀出量の減少が見られ、徐々に刺激量の変化を感じられるようになった。3症例を通じてNTの実施には嚥下障害の程度だけでなく、認知機能やコミュニケーション能力が大きく影響する事が示された。
【考察】
当法人でNTを導入して約1年半が経過したが、心疾患を有する利用者が多く、実施対象者は限定されていた。今回の3症例から、NTの継続や効果の実感には認知機能やコミュニケーション能力が影響する可能性が示唆された。症例1は認知機能が比較的保たれており、治療目的の理解や自主トレーニングが可能であった。更に、自身の感覚を言語化出来た事で電気刺激量の調整も容易であり、NTの効果的な活用が可能だったと考える。症例2は失語症により電気刺激の感じ方を十分に判断する事が難しく、注意障害による集中力低下も認めた。その為、表情や行動等の反応を慎重に観察しながら実施する必要があった。反応が乏しく慎重になり過ぎてしまい、刺激強度はより早期に調整出来た可能性がある。症例3は認知症の影響により日常での嚥下機能の変化が分からず治療効果を実感出来なかった為、継続意欲の維持が課題となった。電気刺激に対する反応も乏しく、刺激量設定の判断に難渋した。毎回介入目的を説明し、直接訓練を併用して変化を実感できる機会を設けた事で継続出来た可能性がある。その結果、弱い電気刺激の変化を感じられる程度に咽頭感覚が改善した可能性がある。
以上より、NTの導入・継続には嚥下機能だけでなく、認知機能やコミュニケーション能力、治療への理解や意欲を評価する事が重要であると考えられた。また、対象者の症状に応じて説明方法や電気刺激量の調整を行い、治療効果をFBできる機会を設ける事が継続的な介入に繋がる可能性が示唆された。特に老健では介入頻度に限界がある為、本人の理解や自主トレーニングへの参加が得られるかどうかが重要な要素になると考えられた。
【まとめ】
NTは嚥下障害を有する利用者に対して実施可能であるが、その効果を引き出すためには継続的な実施が重要である。3症例を通して、適応の検討には嚥下機能だけでなく認知機能やコミュニケーション能力、治療への理解や意欲の評価が重要であることが示唆された。また、対象者の特性に応じた説明や電気刺激量の調整などの工夫が継続的な介入に繋がると考えられた。