講演情報

[22-O-D001-04]認知症専門棟における個別ケアの実践と課題~LIFEデータの活用は可能か~

*篠原 貞子、川田 聡、崎谷 妙子、湯澤 友貴、尾田 智美、福田 貢三 (栃木県 介護老人保健施設見龍堂メディケアユニッツ)
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はじめに
当施設は認知症専門棟50床、一般棟50床の計100床に加え、通所・訪問リハビリテーション、ヘルパーステーションなどを併設しており、在宅復帰の支援にも力を入れている。今回、認知症専門棟における介護サービスの質向上と生活の安定化を目的として、協力可能な入所者10名を対象に、個々の症状や性格に応じたコミュニケーション介入を実施した。非薬物的な介入により認知症症状や情緒面にどのような変化がみられたかを評価し、今後のケアの検討材料とした。
研究方法
実施期間は令和8年3月15日から5月15日までの2か月間とした。対象者は認知症症状が明確に観察され、コミュニケーション介入による反応が期待される利用者を選定した。症状の評価には科学的介護推進体制加算においてLIFE提出データに含まれるDBD13「認知症状に伴うアセスメントシート(DBD13R)」を用い、生活歴、性格、症状の特徴を整理したうえで個別的なアプローチ方法を検討した。アプローチの基本方針は、①否定しない、②安心感を与える、③尊厳を尊重する、④生活歴や性格に合わせた声掛けを行う、の4点とした。症状の変化や情緒面の安定度を継続的に観察し、職員間で情報共有を行い対応の統一を図ることで、利用者が安心して過ごせる環境づくりにも努めた。また、ケア記録や職員の主観的評価も併用し、多角的に変化を捉えるようにした。具体的な介入として、同じ質問を繰り返す利用者には訂正や指摘を避け、穏やかに繰り返し説明することで不安の軽減を図った。物を溜め込む行動がみられる利用者には、無理に制止するのではなく「一緒に確認しましょう」と声をかけ、本人のペースを尊重しながら整理を支援した。根拠のない不満を訴える利用者には、まず気持ちを受け止める姿勢を重視し、笑顔を引き出しやすい性格傾向を踏まえてユーモアを交えた関わりを行った。また、介助を受け入れにくい利用者には、こだわりや自尊心を尊重しつつ、できる部分は自主的に行っていただき、必要な部分のみ見守りや援助を行うなど、尊厳を損なわない支援を心がけた。
結果・考察
個別的コミュニケーション介入の結果、DBD13Rの総合点として大きな改善はみられなかった。しかし、項目別には変化が確認された。項目5「他人に文句を言う」は1.89→1.56→1.44と一貫して減少し、不満の表出やイライラ感の軽減が示唆された。項目11「世話をしてもらうことを受け入れられない」も1.44→1.22→1.11と改善し、介助受容性の向上がみられた。一方、項目9「相手を責めるようなことを言う」は1.22→1.56→1.56と増加し、被害的思考や不安の揺らぎは短期間での改善が難しく、必要に応じて投薬の助けも検討されることが示唆された。また、中核症状の短期記憶障害や意欲低下、時間の見当識障害などの影響が大きいと考えられる項目では一定の増減は認められなかった。
これらの結果から、否定しない関わりや安心感を与える声掛け、本人のペースを尊重した介助などの介入は、情緒の安定により生活の質(QOL)の向上につながる可能性が示唆された。一方で、被害的思考に関連する行動は改善が乏しく、継続的な関わりと環境調整に加えて、必要に応じた投薬の相談も検討される。DBD13は定期的にLIFE提出データとして施行していたが、合計点での評価よりも、どの項目の点数が高いかがケアにおいて重要と確認できた。利用者毎の特徴に応じて、現場のケアで軽減可能か、投薬も含めた介入が必要か、客観的な判断指標に活用できる可能性が考えられた。また、職員間で対応が統一されていない場合、利用者の混乱や不安を助長する可能性があるため、情報共有と職員教育の重要性が再確認された。
まとめ
認知症症状の軽減と生活の質の向上を目指し、生活歴や嗜好を踏まえた声掛け、安心できる環境づくり、見当識を支援する関わりを継続して実施した。短期間での症状改善は認められなかったものの、LIFEで施行しているDBD13の項目別評価では情緒面の安定や介助受容性の向上につながる変化がみられ、今後はデータの活用による適切なケアや治療の検討、職員間の情報共有徹底を行い、入所中のQOLの向上から、より良い在宅復帰支援につなげていきたい。